北海道のアウトドア!

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あのとき僕はウソをついた

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僕の は今は著作家だけれど、元教員をしていて、僕はいつも転校を繰り返していたんだ。

僕が小学生になるとき、入学した学校は全校生徒が18人の寒村にあった。石狩平野の真ん中の、それはそれは寂しく貧困な土地だった。

入学したピカピカの一年生は僕と文子ちゃん。その年は二人だけだった。

皆が家族ぐるみの付き合いで助け合いながらの生活。お医者は無く、怪我人や病人がある時は部落で一番の博学である父の元へ運ばれてくる。

今は、車で15分ほどで海を見る場所まで行ける道程だったけど、部落の人々は海など見たこともない。そんな生きることが精一杯の土地だった。

冬には道が無くなり、交通が遮断されて、人々は冬眠状態に入る。

しかし、学校を開校しないわけにはいかず、父は朝早くから除雪ばかりをしていた。そして子供たちは遠い自宅から スクール馬橇(ばそり) で通学して来た。

雪だるまのようになりながら、でも笑顔いっぱいで凍ったお弁当を持って通学して来た。


ある日のこと。僕が札幌の祖母から送られてきた荷物を開くと、そこには僕の大好きな「チューインガム」が忍ばせてあった。

僕は嬉しくって、みんなに見せたくなり、学校の昼休みに食べて見せたことを思い出す。包装を校庭に投げ捨てた瞬間だった。みんながその小さい紙を拾った。

七歳の僕はびっくりして聞いたんだ。「その紙をどうするの?」すると三年生の山田さんが言った。

「家に帰ってさ、この裏の白い紙にお絵かきするの。ありがとう。」って。

札幌で育った僕は衝撃を受けた。
幼くともその貧困に涙したことを思い出す。給食など無かった。だから昼飯を食べることが出来ない子供もいた。

父は、そんな子供たちのために、いつも何かを与えていたように思う。だから我が家はいつも貧乏だった。山菜ばかり食べていた。タンポポを採取する仕事は僕の役目。立派な食事になったことを思い出す。

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四月の末に「エゾヤマザクラ」が校庭に咲いた。僕らはそこで食事を皆で分け合いながら食べた。こんな楽しい花見は無かった。嬉しくって春が来て、みんなが笑顔でいた。

文子ちゃんは、僕にね、自分で採って来てくれた アイヌネギ の卵とじを食べさせてくれた。美味しくって。文子ちゃんが大好きで。抱きついてしまったことを思い出す。

そして一年生の夏。事件は起きた!

そう、ライオンズクラブが何も無い校庭に一脚のブランコを寄贈してくれたんだ。子供たちはもう大変!朝の6時から学校に駆けつけてブランコの取り合いになった。

僕は学校の横で暮らしていたんだけれど、皆の情熱に舌を巻いてしまった。楽しかった!ブランコって最高だと思った。でも一年生の僕らは遊ぶことが出来なくって、みんなが帰ってから、文子ちゃんと二人でブランコして遊んでいたんだ。

でも、別れの時はきたんだ。

僕ら家族がまた「札幌」へ戻ることになったのは僕が二年生になる少し前だった。

僕はたった独りになる文子ちゃんにお別れは出来なかった。悲しくって辛くって。文子ちゃんのこと考えると、このまま一緒にいたいと思った。

でも、札幌へ帰らなければならない。文子ちゃんが僕に聞いたんだ。

「この部落から札幌へ帰っちゃうんだね。。。」

僕はウソをついた。生まれて初めて七歳の僕は彼女へウソをついた。

「雪が溶けて、また桜がさいたらね。一緒にお弁当を食べようね。」って。

僕は幼いながら、この土地の貧困と困難を知っていたし、文子ちゃんが独りになってしまうことも知っていた。僕はその夜に、おかあちゃんには内緒でずっと泣いていた。

そして、札幌の小学校に転校した僕は文子ちゃんと文通していたのだけれど、いつか途絶えてしまった。

僕は男らしく彼女を守ってあげたい小学生だったけれど、ウソをついて別れてしまった。僕はあの時、僕の一番大切な人にウソをついたんだ。

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「天までとどけ」は文子ちゃんの思い出。← クリックしてくださいね。今日は涙が流れてしまいました。詩はこんな気持ちを顕せる素晴らしいものです。日本の伝統!琴の旋律が貴方を北海道へいざないます。

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「天までとどけ」



怖い人が来たら守ってあげる

ブランコの取り合いで泣いた

あなたに慰めをいっていたね


揺れた体は天まで届け

青い空まで登っていけ


胸を張ったら遠くが見えた

もっと大きく揺らせるんだ



さくらが咲いたらその下で

一緒にお弁当を食べようね

僕が転校するまでに咲くよ


揺れた約束天まで届け

空まで登って花よ咲け


小指を出したら涙が見えた

針を千本持ってないといった






松尾多聞


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文子ちゃん。元気かなぁ?今は立派なおかあちゃんになったかなぁ?
僕はそんな思い出をずっと抱いて生きています。あのころ。あの時。僕がついたウソはどうだったんだろう?いまでもそんなこと考えているんだ。今日はとっても切ないな。


【付録】

この物語の家族を描いた詩もあります。「凍 笛 が 鳴 る 道」是非ごらんください。

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