北海道のアウトドア!

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あたりまえの男

---今日は私の哲学を「読みきり短編」でどうぞ。---

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文と絵/松尾多聞/2007・02・02

彼は小さい時から何かに守られているという自覚があった。

それが何かは解らなかったが、いつも確信していた。だから、どんな困難に出遭おうと屈することは無かったし、それをバネとして乗り越えてきた。

幼き日の経験からも彼は、自分を 「普通とは少し違う。」 ことを知っていたし、それは彼自身にとっては揺ぎ無いものであった。

*** *** *** ***

彼が何万回も生まれ出(いで)、一番記憶に確かなのは、今から21万年前のことだ。

その時の彼の部族は全くの野生であり、野を駆け狩をして主な食料を入手していた。そして彼らには素晴らしいご馳走があった。

それは「モーバブの実」である。生活と余暇と、未だつたなき部族の文化を支えるものだった。

モーバブの木は 被子植物 の仲間で60メートルを超える大木となる。その実の皮は堅固で果肉は甘美であり深きこくが、素晴らしい食感を人間に与えてくれるものだった。

人々はこの果実に憧れた。それにはもう一つの理由があった。それはこの大木に寄生して生きる動物「ナオババ」の存在が大きい。

「ナオババ」は牛ほどもある空飛ぶ哺乳動物で、とても獰猛な怪物だった。人々はこの動物と戦い、木に登り果実を入手しなければならなかった。

それを成し得た者は当然のように「戦士」と呼ばれ、部族の羨望を得ることとなる。

戦士は全てのことに優先権を与えられ、傲慢に生きることを許された。

青年となった「彼」もまた戦士であり部族の中心的存在になっていた。

しかし、彼はあることに気がつき、とても悩むようになった。

既成概念であるそのことは部族ではあたりまえの常識でもあった。

つまり、力の無い者達は村の外に放り出され獲物を分けてもらうことが出来ない。そしてたくさんの差別を受けながら病気となり死んでいった。

そして、何故か彼の部族だけが他の部族に比べて寿命が短く、その惑星の時間に換算すると、30才足らずで人生を終える。

また、「ナオババ」との戦いで戦士が不足した時期には「モーハブの木」を何ヶ月もかけて切り倒しては実を入手する部族の人々。

聡明で思慮深い彼は、たくさんの思考と経験で部族の不幸が何に起因しているか突き止めることとなる。

最近の狩猟が不調で部族を飢餓に陥れているのは「モーハブ」を切り倒すことにより植物の生態系が崩れたことで動物が寄りつかなくなったこと。

部族の寿命が短いのは「ナオババ」との戦いで感染症が蔓延すること。そして何より彼の経験から甘美な「モーハブ」に微量の毒素が含まれていて、長い間に呼吸器系へ致命的な病気を患うこと。そしてわずかな麻薬効果があること。

部族内の差別により、食料が均等に配分されないため人口も減り、戦士も不足して来たこと。それにより、部族が弱体化していること。

その理論的な説明をしても受け入れられることは無いと彼は知っていたが、彼の聡明な正義感は彼を立ち上がらせた。

*** *** *** ***

彼はとてつもない迫害にあった。戦士や長老たちに狂っていると烙印を押され、家族は追放され、さまざまな暴力を受けることを余儀なくされた。

部族の不幸は部族の生活形態にあったからこそ、それを否定した彼には苦悩の人生が待ち構えていた。

追放されてもなお、彼は無理にでも村に入り込み、彼の真実を伝え続けた。もう、体は痩せ細り、家族も失い、怪我だらけの体。しかし、彼は満足だった。

「私は、このために生まれてきたのだ!」

とても崇高な決意は確信にかわり、彼にとって村人たちは「病気」にしか見えなくなっていた。

そして弱った彼は戦士たちに捕まり殺害されることとなる。しかし彼は想像できないほど安らかであり、そして彼は7万年後に同じ土地に生まれる事を決めることが出来た。

その後、彼の理念は一部の部落民の心を射止め、少しづつ人々に認められたが、それは不本意にも彼の名のもと、宗教化して堕落の一途を辿り、数々の シャーマン を生み出す結果となる。

しかし、わずかではあるが生態系の破壊と食物の分配は改善されて部族は繁栄することとなった。

*** *** *** ***

7万年後に彼は約束の地に再び生を受ける。そこは海辺の村に変わっていた。

そこでも彼は利害による傲慢な部族争いの真髄を指摘して普遍的な愛情を解いたが、やはり権力者に捕まり命を落とした。

そして更にその7万年後には、新しい社会が構築され人々がたくさん住む複雑な環境があった。

幼稚な法律は整備されていたが、法は人により栄えるもの。その人々の心の成熟は未だ洗練されてはおらず不法が許される時代であった。

人々は健康に見えても、心が病んでいて「モーバブ」の民族と変わらぬ配分と毒と傲慢が支配していた。より斬新な考え方や、より優れているものを迫害し、蹴落とす構造は21万年前と何も変わっていなかった。

彼の普遍愛はますます高みに上がっていて、より複雑な苦悩と戦う力をまとっていた。

いま彼は知っている。

彼は何かに守られて自分の力を発揮しているのではないことを。
それは人間が自ら所有する本来の力と忍耐を 「あたりまえ」 に行動しているだけだと。彼はいみじくも彼のリアリティーに生きていたことを知った。

彼は狂人あつかいされながら、迫害に身をさらし、今なお自分の信じる理念をまっとうしようとしている。健康に見える病人たちのために。。。

2007・02・02多聞



*** *** *** ***

もっとたくさん書きたいけどもだ、容量がないからこれで終わります。

金曜の夜。やはり寒い札幌です。

以前から考えていた事。 馬鹿げていますが、思い出してしまった事。 今日は時間をかけて書いてみました。いかがでしたか?

今夜はね私のこんな考え方と決意を詩にした作品。
「人ハ未ダ知ラズ」 でお別れしますね。←クリックしてね。

僕はね、どんなことがあっても正義を貫く知性が人間には内在されていることを信じて疑うことはないよ。

ではまた!素敵な週末を!多聞でした。バイバイ


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「人ハ未ダ知ラズ」



人ハ雨ノミヲ見テ

雨ト云ウ

人ハ雨ヲ知ラズ


人ハ苦悩スルヲ見テ

カワイソウト云ウ

人ハ苦悩ヲ知ラズ


人ハ我ノミヲ愛シ

愛ト云ウ

人ハ愛ヲ知ラズ


我ハ雨ト成リテ注ギタシ


苦悩ヲ求メン人トナリ


タダ今生ニ愛ヲ知リタシ






松尾多聞




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