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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2011年09月01日
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(……カメラ二つ、盗聴器三つ)

一瞬ざわりと長い銀髪が広がったのは、今度こそ気のせいではあるまい。

「なっ……」

厳重な結界を施していたはずの部屋でいきなり心話が聞こえ、驚いた大将が急に喉を押さえた。そしてその手を離し、目を白黒させる。

(私を部屋に入れるからと、周到に準備をなさいましたね。けっこうなことだ……しかし、証拠など残しはしない。話したいことがあれば心話でなさい。足りない分はフォローしてさしあげます)
(こ、この部屋にはESP検知器も仕掛けてある。お前がサイキックを使えば証拠が残るぞ)

手の動きもキネシスによって制御され、微動だにできない大将がせいいっぱい目を剥き出す。銀髪の男は凍った湖の色を超えようとしている瞳で、ふっとかすかに微笑んだ。
オーディンの心に秘めた事情を知るアルディアスには、先ほどの侮辱はとても赦せないものだ。

(検知器の針を振れさせなければいいことです。カメラも角度をずらして遠景に調整しましたから、表情を見せようとしても無駄ですよ)


ふと手が自由になり、大将は喉を押さえた。必死に呼吸しようとしても、気道を酸素が通ってゆかない。
ひゅううっと喉が鳴った。

「大将、大丈夫でありますか。私は医師の資格を持っておりますので、失礼いたします。ニールス、オーディン」

かたかたと震えて必死に息をしようとする肥った身体に、アルディアスはさも心配げに駆け寄った。
呆然としているオーディンの脇をニールスがつつく。
蜂蜜色の髪の青年は勿論僚友の事情など知る由もないが、今までの会話からその聡い頭脳で敬愛する上司が何か意趣返しをしようとしていることを理解していた。まして自らも蹴り飛ばしたいと願ったばかりの相手だ。協力するに否やはない。

(ニールス、もうちょっと左だ。オーディンはそこでいい。そう。それでカメラからは完全に隠れる)
(な…、なにを、す……)
(なに、少しばかり御身の前の酸素濃度を下げただけですよ。私自身のことだけならばともかく……今まで傷つけた者の辛さ苦しさを、少しは体感なさるといい)

床に膝をついた大将を抱きかかえるように見せながら、アルディアスの大きな手が、優雅なしぐさで男の喉にかかった。その動きにはまったく力みがなく、ただ脈をとっているようにも見えるが、的確に急所を押さえている。
脂汗を浮かべひゅうひゅうと喉を鳴らしながら、男は恐怖と苦しさのあまり目に涙を溜めだした。


(今まで何人の同じ願いを、あなたは無視してきたんです?)
「お苦しいですか。それはいけない。僭越ながらヒーリングをさせていただきましょう」

(も……、も、しな…)

大将の顔色が赤を通り越して紫色になってくる。目を細めそれをぎりぎりまで見届けてから、アルディアスは酸素濃度を元に戻した。
かつての少年と同じように前かがみで必死に呼吸する背中をさするように見せかけて、部屋の全員に公開した心話を続ける。



冷徹にきらめく瞳は紅い色を帯びていて、肩越しに振り向いた男は息を飲んだ。

「な……」
(心話で)
(な、なんで部下ごときのために、そこまで)

(彼らは私の大切な部下であると同時に、大事な友人です。目の前で友人を侮辱されて黙っていられるほど、私は暢気ではない)
(そんな、馬鹿な……)
(馬鹿だと思うなら、思わなくなるまで地獄を見ておいでなさい。いつでもエスコートしてさしあげましょう)

今度は急に上げられた酸素濃度に、男の神経系が悲鳴をあげて痙攣が始まった。この状態で全身に六メートル水深程度の圧をかけると、不可逆的に神経がやられてしまうことを医師資格を持つアルディアスは知っている。

(わ、わか、わかった)

ちかちかする目を震える手で押さえ、哀れっぽい声を出した男を執務机の椅子に座らせると、濃度を戻してアルディアスはわざとらしく敬礼した。

「発作は治まられたようですね。良うございました。それでは失礼いたします。くれぐれもご無理を致しませぬように」

部屋に居る者だけに通じる脅しの言葉に、大将が怯えた目でしきりにうなずく。
嫣然とそれに微笑みかけ、アルディアスは部下をいざなうと長身を翻した。

「准将、あんた……。こんなことしてただじゃ済まねえんじゃないか? あいつ、執念深いぞ」

ドアから廊下に出て歩き出し、角を曲がったところでオーディンが言う。今まで言葉を発することもできなかった彼に、アルディアスは柔らかく微笑んだ。

「大丈夫、証拠は何一つ残していないよ。私を査問にかけることはできない」
「でもよ、あいつの恨みは残るだろう。腐っても大将だ、会議やなんかでいびられるんじゃねえか?」
「その時は、またちょっとばかり彼の口元の空気でもいじって気づかせてあげることにするよ」

彼は私を本気で怒らせたからね、と呟く微笑が深く怖い。
オーディンは上司がみだりにその力を使う人ではないことを熟知していたから、どれほど彼が怒っているかがよくわかった。
尋常ならざるサイキックを誇るどころか、通常範囲の人間であり続けるように、むしろ心を砕いているような人なのだ。
その彼をして、将官会議での能力発動も厭わないと言わせるほどの怒りはいかほどだろう。

十五年越しの恩返しだよ。
しかしそう言って、銀髪の上司は少年の頃と変わらない笑顔を見せたのだった。

「それにしてもあの顔色は、紫なんとかを彷彿とさせるよな……」
「へ?」

ニールスが表情も変えずに首を捻っている。

「ほら、何ていったっけな。種無し紫なんとか。手に乗るくらいの楕円形の実がなるやつさ」
「あああれか……薄い紫から、熟すと赤っぽい紫になるやつだろ。さっくり甘くて、けっこう旨いよな。なんだっけ」

オーディンも腕を組んだ。横でアルディアスが口に拳を当て、くすくすと笑う。

「確かに、さっきの大将殿の顔色に似ているねえ」
「……アレ美味しいのに、当分食べられないですよ。むさい顔が浮かんじゃう。もったいない」

真面目くさった顔でしれっと言うので、オーディンは涙が滲むほど盛大に噴きだしてしまった。
























【銀の月のものがたり】 道案内

【第二部 陽の雫】 目次


最後に笑わせてくれるニールスさんがすてき♪


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 ☆ゲリラ開催☆ 8/29~9/4 はじまりの闇 一斉ヒーリング





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最終更新日  2011年09月01日 08時36分00秒
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