よんきゅ部屋

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Sep 20, 2006
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先ほど書いた話とのつながりでショスタコーヴィチにしてみた。この曲は彼の最大の傑作に位置づけられるもので、他の曲に比べて演奏会で取り上げられる機会も圧倒的に多いのではないかと思う。

この曲は、1937年に作曲されたのだが、その前年に彼の作曲家生命を脅かす事件が起こる。彼の作曲したオペラが社会主義リアリズムに反する作品であるとソ連当局から公式の場で徹底的に批判されたのだ。このことは作曲家として失格であるという烙印を押されたに等しく、彼は粛清によって命を落とす危険性にさらされることになってしまう。

彼は社会主義的リアリズムの要請に応じ(とは言っても、自分の気持ちとの折り合いをつけて)、簡潔で明快なこの曲を完成させた。そして、この曲は発表後高い評価を受け、彼は再びソ連当局の信頼を回復することになったのである。と、ここまで見てくると、生臭いイメージを持たれるかもしれないが、実際には全曲を通してわかりやすく、聴きやすい曲だと思う。また、この曲では重苦しさや勇ましさが感じられるような場所のインパクトの方が強く感じられがちだ、透明感や凛とした雰囲気のある場所も多く、むしろそのコントラストがこの曲の味わい深さを作り出していると思う。

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第1楽章
 強い緊張感をもって低弦からいきなり始まる冒頭の動機が静まると、第1ヴァイオリンが中心となって旋律を歌う部分が続く。本当に寒い(温度が低いという意味で)音楽で、この部分は不安や疑念を表していると言われている。しばらく進むと今度は大きな凸凹のある旋律が第1ヴァイオリンとヴィオラによって2回出てくるが、特にヴィオラが演奏するときには通常オーケストラ作品では使用されないような高い音が使われており、それが絶妙な効果を生み出している(ヴァイオリンだと楽に出せる音域を敢えて本来音の低いヴィオラで出すことによって苦しそうな音になる)。

その後、転がり落ちていくようにスピードがどんどん速くなり、最高に加速したところで突然行進曲(小太鼓のリズムとラッパによるファンファーレ)が登場し、その末尾からシロフォン(木琴)を加えながらクライマックスに突入していく。ここでは圧倒的なユニゾンが印象的だ。その部分が終わると、フルートが明るい旋律をさわやかに歌う(この旋律は前でヴィオラに出てきたものとほぼ同じものというのがスゴイ)が、すぐに暗い世界に引き戻されてしまう。そして最後はソロ・ヴァイオリンやチェレスタが登場し、静かに終わる。冒頭部分で示された不安や疑念は結局解決されないまま、次に続いていくことに...。

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第2楽章


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第3楽章
この楽章は、全曲の中で最も詩情豊かで美しいが、悩みや悲しみに満ちているようにも感じられる(単純な和音から少し音をずらすことで独特の歪みを生じさせることでこういった表現をしている)。冒頭の弦楽器は通常よりも多くのパートに分けられ、それによって、より繊細な響きが追求されている(少ない人数のパートが数多く重ねられるので、細い糸を細かく編んだような繊細さが生まれる)が、各パートの動きはきわめて単純であるために、透明感を失わない絶妙なバランスになっている(こういうところ、彼は天才だと思う)。この弦楽合奏が終わると、ハープに導かれてフルートが寂しげに歌い、しばらくしてヴァイオリンのトレモロを背景として木管楽器が順に歌っていく。このあたりは美しく凛とした静寂の世界になっている。その後、冒頭部分の旋律が木管楽器によって歌われ、曲は力を増してクライマックスへと到達していく。この部分ではチェロによる締め付けられるような音(オーケストラ作品では通常使わない高い音がまたまた登場)や、その後クライマックスが終わって静まった直後の弦楽合奏が静かに無の状態からもう一度始まる部分などが印象的。最後は、ヴァイオリンの高音からコントラバスの低音まで下がる進行に導かれてハープとチェレスタが中間部の木管の旋律を回想し、消えていくようにこの楽章は閉じられる。チャッチャカ系のイメージとは対極にある感じだ。

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第4楽章
この曲を全曲聴いたことがないという人でも、たぶん「どっかで聴いたことあるぞ」というであろう楽章。

この楽章は、管楽器の強い音とティンパニの行進曲風のリズムの上にトランペットとトロンボーンが主題を示すことで開始される。曲は直後にスピードを増し、冒頭主題が拡大されたり変形されたりしながら、息をもつかせないような緊張感を保って進み(冒頭からしばらく続くこの部分は重い機関車が猛スピードで走り続けているような感じ)、クライマックスを超えたところで突然一発のドラを合図にティンパニの刻むリズムが重みをどんどん増しながらスピードを落としていき(この時の指揮者の顔はたいていものすごい表情をしている)、静かな部分へと入っていく。この部分では漂うような伴奏の上にホルンによる落ち着いた旋律や、ヴァイオリンによる起伏の激しい旋律などが歌われ、ハープを伴った弦楽器による透明感のある音で締めくくられる。すると今度はゆっくりとしたテンポで静かに冒頭主題が始められ、それが長い時間をかけて高揚して、最後は圧倒的なラストを迎える。

ところで、この楽章は解釈をめぐってこれまでにさまざまな議論が闘わされてきた。以前は、圧倒的なラストが苦難に打ち勝った勝利(第1楽章で提示された不安や疑念の解決)を示しているのだと言われてきたが、それは人々の心から自然にわき上がるような歓喜の歌ではなく、強制された歓喜であるといわれている。確かに、ラストの部分で旋律を担当するもの以外のほとんどの楽器が同じ高さの音で同じリズムを執拗に繰り返すが、ここを演奏していると、出口が見えないまま同じことを繰り返しているかのように続けられるこの部分にはそういった要素があるようにも感じられる。何しろ、普通なら伴奏の音型なのに、丁寧にピアノの高音までこれでもかと重ねてあるというところに恐ろしさを感じてしまう。やはりスゴイ音楽である。





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Last updated  Sep 20, 2006 09:42:27 PM
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