よんきゅ部屋

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Feb 24, 2007
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この曲は、ベートーヴェン以前の作曲家のみならず、彼のそれまでの曲からも、音楽の表現の幅を格段に広げた。序奏のないスタート、交響曲においてそれまでにない演奏時間の長さ、半音でぶつかった和音を使った叩きつけるようなリズム、ヘミオラ(3拍子の流れの中に2拍子が入ること)の多用などなど...。「言いたいことをどう表現するかは...自由だぁ~!!」とでも言っているかのようだが、それが破綻したものではないところはさすがベートーヴェン。この曲で一皮むけた感じである。

ベートーヴェンは、ヨーロッパを絶対王政から解放して自由をもたらすという理念に共感しており、それを体現するであろうと思っていたナポレオンにこの曲を献呈しようと思ったが、ナポレオンが皇帝になると宣言したことに憤慨し、出版に当たって「英雄交響曲-ある偉大な十物の思い出を記念して」ということになったのだというのが、最も広く語られているエピソードである。これに対しては作曲の動機がそもそも本当にナポレオンなのかといった疑問を差し挟む向きもある(さすがに私はそこまで深く勉強していないのでよくわからないのだが)。

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第1楽章:
冒頭、いきなり序奏なしの和音2発でスタート。そこからいきなりチェロで第1主題が登場する。その後フォルティシモで第1主題が繰り返される前にはヘミオラが頻出、初めて聴いたときにはここで拍子がわからなくなった。第2種台に向かっての推移部分では、最初木管でのんびりしたように始まるのだが、やはり激しい調子になる。私もフォルティシモを見てしまうとかなり弾いてしまう。力が入らないようにはこころがけるようになったが...難しい。

第2主題部分においても、ヘミオラがたくさんあり、しかも最初とアクセントの位置が違うというとても難しいことをやっている。演奏していても錯覚を起こしそうになるのだが、あくまで弾く側はだまされてはいけないのだから厄介だ。「聴き手の意識でで弾くな」という指揮者の指摘はまさにその通りである。

展開部にはいると、ストバイとセコバイが旋律と伴奏を短いサイクルで交換する場所があるのだが、ここなどは「ストバイとセコバイは別のパートとして独立性を持つべき」という考え方があてはまりそうだ。その後しばらくして、不協和音でどんどんテンションを高め、頂点で隣の音をぶつけまくっている和音があるところは、すごい音楽だと思う。

再現部手前にある短調の部分では最初と違って息の長いクレッシェンド、その後また息の長いディミヌエンド、そして唯一のピアニシッシシモ(ppp)があっていきなりフォルテになって再現部へ突入。使われている調の変化やダイナミクスの扱い方は本当に自由(やりたい放題?)だなと思う。また最後のしばらく前に頂点となる和音があるのだが、ここはトレモロなのに大好きな場所だ。この楽章だけで20分近くかかるのだが、退屈な長さを感じないというのはさすがだなと思う。


第2楽章:
スコアの最初にわざわざ「葬送行進曲」という断り書きがある、そのままの音楽である。葬送行進曲といえば、ワーグナーの「ジークフリート」やマーラーの交響曲第5番第1楽章などがあるが、これらと比べて、ベートーヴェンのそれはとにかく「端正で重厚な感じ(低弦の「ズーン」という感じがきっちり出るととてもカッコイイ)」いうだと思う。別の言い方をすれば人間的な感情があまりストレートに現れない、もっといえば「冷たい」要素を持っているような気がする。

冒頭の低弦は、葬送の行進で実際に使われる太鼓のリズムを模したものであると言われる。また、付点を使ったリズムがあることで行進曲の感じが根底に流れるようになっており、ため息を示すような音の使い方も特徴である。最初の主題の中で一瞬光が差すように出てくる変ホ長調の部分が弾いていてゾクゾクするところだ。しばらくすると曲はハ長調に変化する。そこでのクライマックスである輝かしい響きはすばらしい。しかし、これも直後にあっけなく暗くなってしまう。

葬送行進曲に戻るのだが、そこからヘ短調の世界へと押し上げられる。先日の日記でも書いたとおり、ここが全曲中で私が一番好きな部分だ。このようなフーガは交響曲第7番第2楽章にも出てくるが、ベートーヴェンはすごいなと思う。特にやはりホルンの変ホ長調の部分からハ短調、ト短調へとつながっていく流れがたまらないなと。それからいきなり低弦がラ♭で出てきた後の部分は何かが根底から音を立てて崩れていくような感じ。上の話で言えば、絶対王政の世界なのだろうか。それともう1箇所好きな部分は、最後の方に一瞬だけ出てくる変ニ長調の部分で、ここだけが救われるような気分である。でも、結局のところ最後は暗く終わる。

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第3楽章:
この楽章は一転して軽快な音楽のスケルツォである。さりげなく弦楽器でスタートして、ぼんやりしたところから木管楽器の旋律が浮き上がってくる。音が短いので目立ちにくいがいろいろと音の選び方には工夫が凝らされている。中間部はホルンの三重奏で始まる。これは本当に狩りの合図のようだ。この時代のホルンで出せる音をいろいろ考えた結果として出てきたものだと思うが、とにかくカッコイイ。主題が戻った後には、4分の3拍子が同じスピードで2分の2拍子になるというちょっとしたビックリ部分を忍ばせてある。

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第4楽章:
この楽章は変奏曲の形を取っているものの、他の形式の要素もいろいろ入っていて、いかにもわかりやすい変奏曲にはなっていない。冒頭からいきなりなだれ込むようにスタートしてフェルマータで切れた後に主題が始まる。ここで何度か繰り返される主題は最初小編成で、それがだんだん大きくなっていき、また音符の単位も細かくなっている。知らず知らずのうちに高揚するように持って行くというところが素晴らしい。

続く第1変奏ではまたもやフーガが登場。ベートーヴェンのこういった部分はパート譜を眺めているだけではわからないことがたくさんある。



第3変奏はト短調、いわゆる「トルコ行進曲」(といってもハンガリー音楽の一形態のようだ)の形を取っている。ここでセコバイはずっとキザミ、なかなか刻んでいて気持ちのいいところである。

第4変奏はハ長調からスタートして、転調を繰り返していく、どちらかといえば経過的なものである。

第5変奏はまたまたフーガ、ストバイの16分音符は本当に難しい。セコバイはまたややこしいリズムで支えて行く。変ホ長調が確立されるところから後、ホルンのファンファーレがカッコイイ。そして音楽はずっとなだれ込むように展開して解決しないままフェルマータ。

静まったあと木管楽器によって第6変奏がスタート。この楽章では、このゆっくりとした変奏部分が一番好きである。何となく、ここまでの疲れを癒すかのような雰囲気。3連符のリズムが何とも言えないいい味を出している。そしてその流れに乗って現れるホルンがやはり素晴らしい。この後だんだん静まっていくのだが、そこでの転調も素晴らしい。変イ長調で安らぎを与えられたと思ったら変ホ短調→変ハ長調→嬰ヘ短調→ト短調へとだんだんせき立てられるようになったあと沈んでいく。劇的な表現のためにいろいろと実験しているかのような感じだ。

コーダはいきなり急速。ホルンとファゴットによるファンファーレ風の音楽。ヴァイオリンは超スピード+変な場所のsfのキザミで大変だが、これはやはり最後を飾るにふさわしい形だと思う。50分以上ある曲だが退屈さを感じさせない曲である。


私は、大学オケに入ってしばらくするまで、演奏した以外にあまりたくさんの曲を知っているわけではなかった。この曲の第2楽章ですら、最初はわからなかったものだ。しかし、やはり一度演奏してみてこの曲の素晴らしさを実感した。

この曲を以前演奏した時に行った大学というのが、当時私が(というかオケの人も)はまっていたラーメンチェーンの店が目の前にあって、練習に行くのが楽しみだったのを覚えている。普通、エキストラはあっさりと帰ってしまうものだが、私は駅に向かわずに違う方向へと向かったのだ。もちろん団員の人は「???」だったが...。「こってり」帰ることが重要だったのだ。この曲にはそのラーメン店の思い出が裏にくっついている。





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Last updated  Feb 24, 2007 03:00:58 PM
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