よんきゅ部屋

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Apr 14, 2008
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この曲は、ベートーヴェンが最後に書いた弦楽四重奏曲であり、まとまった作品としてはほぼ最後に属する。初演されたのは本人の死後の翌年である。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の中でいわゆる「後期」として位置づけられるのは第12番から後で、作品番号で言っても、かなり固まっている。後期の弦楽四重奏曲はとても複雑で、しかも演奏時間が長いものが多いのだが、この最後の作品だけは中でもかなり趣が違う。背負ってきた重たい荷物を下ろした感じがするのだが、一方で「なんでこうなるのか?」と思う場所もあったりして、なかなか興味深い曲だと思う。

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第1楽章:
何となく「ん?」とでも言っているかのような不思議な和音でスタートするが、すぐに主張であるヘ長調が示される。とてものんびりした感じのシンプルな主題。交響曲第8番の雰囲気が少しあるかなとも思う。3連符が随所で軽やかな雰囲気を出していて、曲はよどみなく進んでいく。ベートーヴェンに特有の重みを持ったsfなどはあまり多くない感じだし、事件が起きまくっているドラマという感じもあまりない。しかし、展開の仕方はやはりベートーヴェン、見事である。以前の作品ならば音を上げて次の和音に行くはずが、下げて行くというフェイントなどもあり、そう考えればこのジャンルで最後まで実験をしていたのかもしれないなとも思う。最後はあっけないほど静かに終わる。

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第2楽章:
スケルツォ楽章。配置は「第九」と同じ。いきなり主題にヘミオラを使い、開始直後にいきなり全然違う調で「ガー、ブーブーブー、ガーガーガー」などと驚かす。ベートーヴェンさん、何か文句でも忍ばせているのかなとも思う瞬間。同じようなリズムを同じ調の中で執拗に繰り返すトリオは、「第九」の第2楽章を思わせる。ゼクエンツ(同じことの繰り返し)でテンションを高めるというのはやはり弦楽四重奏曲でも効果的だ。最後はやっぱり「?」と思えるように、最初に驚かせた音型を平和な雰囲気で出した後、唐突にふわっと終わってしまう。

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第3楽章:


曲は途中、嬰ハ短調に転調し、スピードをさらに落として心の奥深くを見据えるような音楽へ。この区間はとても短いが不安定な和音が連続する。そして、また変ニ長調の世界へ。ヴァイオリンの音が高くなり、心の高鳴りを示すかのよう。その後、リズムは途切れ途切れにしゃべるように細かくなっていく。まるでこの世にお別れを言っているかのようだ。楽譜を見ると、たくさん書かれた休符がとても印象的。

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第4楽章:
この楽章の楽譜には冒頭に謎の音が書いてある。フレーズが3つ書いてあって、「そうでなければいけないのか?」「そうでなければならない!」というドイツ語が付けられている。冒頭の荘厳な感じの場所に割り当てられているのが、最初の「?」。たしかに、そういう音だなと思う。この部分はちょっと第3楽章の雰囲気を引きずっているかなという感じ。

その後快活なアレグロに突入することになるのだが、その部分の最初が「!」のフレーズ。非常にわかりやすいのだが、ではなぜそんなことをベートーヴェンは書いたのかという点についてはよくわからない。第3楽章まで書いた後で気が進まなくなったが、お金のために書かなければならなかったからだ、とも言われている。それはともかくとして、この後は基本的には明るく元気な音楽の流れ、イ長調のさわやかな部分がとても印象的。しかし、真ん中あたりに不思議な和音によるキザミがあったりと仕掛けもたくさんある。最後はピチカートを合図にだんだん盛り上がって終わる。最後の作品ながら、あっけなく終わってしまうところが面白い。「ほな、また」などといって帰って行く感じだ。

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この曲で大好きなのは何と言っても第3楽章。聴いているだけで泣けてくる。最近、ときどき集まっているカルテットで「ベートーヴェンの弦楽四重奏曲で1stVnを弾きたい楽章は?どれでもいいよ」と言われて、思わずこの楽章を選んだ。アレグロを敢えて選ばず、レントでいくというのが何とも言えないところだが、快活な楽章に挟まれてぜひやってみたい曲だ。泣けてくるとは言ったものの、実際に演奏する段階ではそうはいかないかな。別の意味で泣いたりして...。いやいやそうならないようにしたいところだ。





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Last updated  Apr 14, 2008 10:19:14 PM
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