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ベートーヴェンの交響曲といえば、奇数番号の方がよく聴かれると思う。それはやはり展開にドラマチックな要素があるからなのか、はたまた偶数番号の方が落ち着いた感じがするからなのか、よくはわからない。私も最初は奇数番号ばかりを聴いていたような気がするが、最近では偶数番号もお気に入りになってきた。
この第4番は、「運命」や「田園」が作曲される前の傑作が集中している時期に当たる。例えば、「熱情」ソナタであり、弦楽四重奏曲の「ラズモフスキー」だったり、ピアノ協奏曲第4番だったり、というところが作品番号でもくっついているのだが、実は「英雄」からそれほど離れていないというところも興味深い。
この曲にはもともとシューマンが言ったとかいう言葉の影響で女性的なイメージが持たれてきたようだが、それは違うような気がする。確かにそういうかわいい要素が「英雄」に比べればあるのだろうが、テンポの心地よさとリズムのキレなどは、第7番にむしろ近いのではないかと思える。ただ、踊っている人がもう少し若くて、少々品がありそうな感じがするぐらいかなと。
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第1楽章:
「英雄」では序奏なしでいきなり曲が始まるが、一転、この曲は長い序奏がついている。最初は変ロ長調と言いながら短調の要素たっぷり、ちょっと「レオノーレ」序曲の荘厳な冒頭のような(それほどのものではないかもしれないが)雰囲気があったりする。序奏の間は「?」という問いかけの要素があり、答えが出ない状態の中、いきなり急なクレッシェンドの後、ティンパニの音と共に爆発し、そこからアレグロの明るく快活な主部へ。内声部のキザミがやはりベートーヴェンだなという感じ。シンコペーションのリズムでおどけてみたり、突然一発だけフォルテを入れて脅かしてみたり、2拍子の流れの中に3拍子を入れて調子を狂わせてみたり、いたずら心いっぱいのベートーヴェンがそこにはいるのだろうなと思う。そういう意味でもこの曲はとても魅力的だ。
ちなみに、途中で「第九」の第3楽章によく似た和音進行がある(ロ長調から変ロ長調に戻るところ)。ここで実験したのかなと思ったりして。
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第2楽章:
付点のリズムにきれいな旋律が乗っかるゆっくりとした3拍子。ゆっくりとした変ホ長調を基調としているのは交響曲ではこの曲だけ。そこには同じ変ホ長調でも「英雄」や「皇帝」とは違う世界があるように思う。この楽章は基本的に変奏でできていて、展開部に相当するものがないのが特徴であるが、ここには形式で聴かせようというのとはまた別のカジュアルなベートーヴェンというのが顔を見せているのかもしれない。この楽章の最後にも静かに終わらせると思わせてビックリさせようという仕掛けがある。
ちなみに、ここにも「第九」の第3楽章によく似た和音進行がある(変ホ短調から変ト長調に行くところ。ただしここは主調である変ホ長調に戻っていく)。またクラリネットの高い音域を使っているところもよく似ている。ここでもやっぱり実験したのかなと思ったりして。何の根拠もないのだが、こういうマニアックな想像も面白いかなと思う。
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第3楽章:
いきなりヘミオラのかたまりという面白い楽章。演奏していると譜面に完全に騙される。主題がいきなり出て遠い関係の変ニ長調へ行くというのは第1番の第3楽章にもあったパターン、いろいろと手を替え品を替えやっているんですなという感じ。中間部は少しテンポを落として落ち着いた感じでスタートするが、弦楽器の波が飲み込むように登場してみたり、その波にアクセントがついていたりと、またここでもベートーヴェンは遊んでいる感じである。
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第4楽章:
とにかくスピード感が勝負という楽章。演奏する際には運動神経をフル稼働させなければならない。16分音符でのキザミがとにかく難しい音で入ってくるし、拍子と違う音進行のパターンが混ざっているので大変。しかし、それがきっとベートーヴェンの意図なのだろうということで、従わなければならない。きっとちゃんとできたらきれいなんだろうなと思う。この楽章にも途中で感動的な解決に行くはずの和音進行から「何じゃこの和音は?」という不協和音が突然入れられていて、やはりいたずら心いっぱいである。ここは何か最高のひとことを言おうとした寸前に「ン~ッ、ゲホゲホ!!」と咳き込んでいる感じで笑える。さらに曲が進んでいくと、そこからさらに転調までして遊び始める。この間もキザミは恐ろしく難しい。そして最後にまた仕掛けが。フェルマータを使ってゆっくりした雰囲気を作ってそれで終わるのかと思ったら、土壇場でたたみ込むように終わってしまう。
しかし、ここまでやっても曲としての統一感が保たれているというのがベートーヴェンのすごいところだ。どうやったら、そういう曲が作れるのかと思ってしまう。
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この曲はベートーヴェンの交響曲の中で唯一フルートが1本しかなかったり(他の木管楽器は2本ずつ)、楽章の展開部がコンパクトだったり、あるいはなかったりという、特徴的な部分がある。ある意味、期待通りではないのだが、そこがまた面白い。なかなかアマチュアオケで演奏する機会には恵まれないのだが、今回はその機会に恵まれた。せっかくの機会だから楽しく味わいたいと思う。
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