よんきゅ部屋

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Jul 16, 2010
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この曲はヤナーチェクの代表作であり、晩年の作品である。最近、この曲がクローズアップされるようになったのは、ご存じの通り村上春樹の『1Q84』に登場してからだ。本の発売直後はCDショップでもずいぶんたくさん並べられているのを見た。今も、やはりそのことが店の棚にあるPOPに書かれていたりする。

しかし、それを見てCDを買ってみたという人にとっては、最初不思議な感覚を持つのではないかと思う。いきなりきこえてくるのは金管楽器とティンパニーだけで、旋律も流れるような感じではない。でも、その楽器の組み合わせだからこその面白い音色と力強さが「何となくいいかも」と感じさせる。しばらくすると、あまりなじみのない節回しが続いていくので、最初はよくわからない感じがするのかもしれないが、何度も聴いていくと結構面白い場所がたくさんあることがわかってくる。最初からとっつきやすい感じではないという点では、何となくオトナ向けの味なのかもしれない。

シンフォニエッタとは「小さな交響曲」という意味なのだが、実はこの曲、交響曲の様式とはまったく異なる。楽章は5つあり、それぞれ「ファンファーレ」「城」「王妃の修道院」「街頭」「市役所」という面白い名前がつけられている。また、各楽章に様式があるわけではなく、基本的にはいくつかの素材が何度も形を変えながら繰り返されていき、いつの間にかそれが大きな流れになっているという感じだ。「交響曲」を名乗るのには「ん?」という感じがしないでもないが、1926年という作曲年代を考えれば、そういう曲があってもおかしくないようには思う。

シンフォニエッタは、演奏するには非常に難しい点が多い。特に、時折使われる無茶な音域は大変だ。低すぎて本来出ない音があったり、ヴァイオリンやフルート・ピッコロは高すぎる音(指板から外れるような場所)で急速なパッセージをやらされたりというのがある。8分の13拍子でシンコペーションをやるとか、もうどうやって数えるんだという感じだ。

この曲について考えていたときに、ふと思ったのは、何となく大きくとらえてみると、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」と共通点があるような気がした。楽章の結びつき方は違うが、第1楽章から第5楽章までのキャラクターの並べ方とか、土地のにおいや人がいるという感覚などが、そうであるように思えるのだ。そういった曲は、その土地独特のものをたくさん含んでいるだけに、一度聴いただけではわかりにくいところがあっても、だからこそずっとわからないわけではないと感じられるのかもしれない。

私が持っているCDはチャールズ・マッケラス指揮/ウィーンフィルの演奏である。他のCDを持っていないので比較はできないのだが、非常に音作りが丁寧であり、また独特な語り口になっている雰囲気をよく出しているように思う。マッケラスはオーストラリアにずっといたが、留学先はプラハ。その頃にヤナーチェクの音楽に理解を深め、レパートリーに早くから加えていったのだそうだ。さらに、チェコ語を習得するところまで徹底している。ヤナーチェクの音楽には「発話旋律」という手法が使われている(実際に話している声を音高で表す)が、これを理解するのには原語に遡る必要があるのだと考えたのだろうと思う。

私はチェコ語はちゃんとわからない(昔旅行で行くときに参考書やCDをちゃんと買って勉強はしたが)ので、発話旋律がどのようなイメージや意味を持っているかまでは理解できないのだが、いずれ理解できるようになってみたいものだと思う。

今朝の新聞を読んでいたら、マッケラスが亡くなったとの記事を見つけた。今夜はゆっくりとマッケラスを偲んで、ヤナーチェクのCDを聴いてみようと思う。





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Last updated  Jul 16, 2010 07:33:13 PM
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