玉子焼きができるまで


 ここでは、当店自慢のダシ巻き玉子が完成するまでの作業行程をご紹介します。

1.玉 子 を 割 る



卵割り

 当店では、玉子焼き用に平日80~100kg、土日祝日は200~400kgの県内産新鮮玉子を使います。仕入れ用1ケースにLLサイズ130個(10kg)入ってますので、最高で一日130個×40ケース=5,200個(400kg)使用することになります。そのため玉子焼き仕込み(焼く手前まで)専門の従業員が、ひたすら割っております。

 ちなみに1ケースは1鍋で、鍋に乗せてある「玉子黄身割り」に殻を割った玉子を落とすと、木片に取り付けた十数の釘に黄身が刺さり、白身・黄身が混ざって鍋に落ちていく仕組みになっています。殻の破片が鍋に入らぬよう、細心の注意を払ってますが、入った場合は、丁寧に手で取り除きます。大量に発生する殻は粉砕し、オヤジが畑にばらまいて、肥料にしています(^^)




2.玉 子 を 合 わ す



玉子合わし01

 割った玉子は、次にダシや調味料等と合わし、焼く手前の状態にします。ダシはもちろん、調味料の配合・分量に至るまで、息子のワシでさえ店長になるまで教えてもらえなかったほど、オヤジがこだわりを持って、研究開発したものです。従業員でさえダシの成分はごく一部の者しか知りません^^;。

 ダシ、醤油、みりん、調味料等を割った玉子の鍋に入れ、ミキサーで混ぜます。混ぜる時間も大切です。この時間を誤ると、焼きにくくなりますし、なにより味が落ちます。砂糖も入ってますが、少なめです。おむすびやご飯と一緒に食べるおかず用の出し巻き玉子ですので・・・これも当店の玉子焼きの大きな特徴になっています。




玉子合わし02

 仕上げに鰹節とオヤジの畑で採れたてのネギを入れ、完成です。あとはこの鍋を冷蔵庫で数時間~1日寝かせ、味が染み渡ってから、焼きに掛かります。




3.玉 子 を 焼 く



焼き01

 さて、いよいよ焼きに入ります。コンロは、発火面積の広い鋳型のものを使います。フライパンはテフロン加工の玉子焼き専用特注サイズです。玉子を合わした鍋は段差を付けて左側に設置し、通常は2つのコンロで焼きます。間に合わなくなると、第二調理室で3つ、最繁忙時には4つ(第一調理室と合わせると2人で5~6つ)のコンロでフル稼働です^^;。ちなみに上の画像では分かりにくいかもしれませんが、コンロ3つで焼いてます。

 まずはじめに丁寧に油を敷き、フライパンを温めます。つづいて合わした玉子をおたま2杯流し込みます。これを大型のフライ返しで巻きながら、「芯」を作ります。




焼き02

 左・中央・右の火の通り方に細心の注意を払いながら、フライパンの位置を入れ替えたり、こまめに油を足したり、ひっくり返したり、玉子を足したり・・・3つ、特に4つのコンロで焼くときは、ひたすら手を動かします。息をつく暇もありません^^;。




焼き03

 おたま2杯分で焼き、巻いた芯ができあがると、再び油を敷き、次の2杯を足して仕上げにかかります。1本が完成するまでおよそ4~5分かかります。




焼き04

 ここで玉子をひっくり返すコツを教えましょう。画像にある大型のフライ返しは、玉子の芯に2~3cm引っ掛けるようにして、すばやく返します。このとき、すでに巻いてある芯と、これから巻かれる部分の境目(芯の一番手前の尻)を、左手の人差し指と中指で軽く押さえながらひっくり返すときれいに巻けます。

 その際、「指は熱くないのか?」とよく聞かれますが、すばやく返すとやけどはしません・・・っていうか、指の皮が厚くなってるみたいです。駆け出しの頃は、トロいからよくやけどをしてました^^;。


焼き05

 ついに1本目が焼き上がりました。といっても、最後に底をある程度丈夫に焼いておかないと剥がれてしまうので、巻き終えても5秒ほどコンロ上で熱します。

 仕上げのコツ・・・要所中の要所です。当店の玉子焼きは、ふわふわとした弾力が「売り」ですので、極力焦げ目を付けないように焼き上げられます。なかでも特に、表面の綺麗さは「命」です。そのためには、最後から2番目~最後の返しには、格別スムーズな動きが要求されます。ほんの1~2秒のロスで、肝心の玉子焼きが台無しになります。ですから綺麗に仕上がったときの喜びはなんとも言えません(^^)




焼き06

 焼き上がった玉子は、蒸蓋(土佐では“むろぶた”又は“もろぶた”と呼ばれます)に並べて行きます。玉子焼きの入った蒸蓋同士を積み重ねて、冷めないように保温します。

 この蒸蓋は、そもそも家屋の落成等で、近所の人たちにモチを振舞うときにモチを入れるものとして使われてきましたが、最近ではモチを振舞う習慣が廃れてきました。今では当店になくてはならない商売道具として大変珍重しています。

 ちなみに当店の蒸蓋は、私の祖父(故人)自ら作成したもので、かなりの年代物です。モチどころか、玉子焼きの味が染み渡っているので、煮込めばいいダシがでるかも(笑)

 みなさまも当店にお越しの際は、ぜひ玉子焼きがやけるまでをご覧になって、なるべく熱々のうちにお召し上がり下さいませ。なお、焼きたて(5~10分以内)の場合は、ほんの少し濃口醤油をたらすと、より一層美味しくお召し上がりになれます(^^)





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