末広かり(すえひろがり)
果報者(シテ)太郎冠者 すっぱ
いわゆる太郎冠者の「取り違えもの」のお話です。
果報者(以下、分かりやすく表現するために、主人と書きます)が天下泰平のめでたい時代だから、多くの客を集めて宴を開こうとします。そのお土産として、「末広がり=扇のこと」を用意したいからといって、太郎冠者を呼び寄せます。
果報者(主人)「都に末広がりを買いに行って来い。」
太郎冠者「かしこまってござる」ε=ε=ε=ε=ε=┏( ̄ー ̄)┛
さて、都まで着いたものの、太郎冠者は「末広がりとは何か?」という一番肝心なことを主人に聞き忘れてしまいました。←( ̄▽ ̄:) おいっ
困って、都を歩きながら「末広がりはありませんか~」と言い回っていると、すっぱ(詐欺師)が現れ、「よし、あの田舎者を一つ騙してやろう」と話しかけます。
すっぱ「私がお探しの末広がり売りですよ、こんなところで会うなんて、あんた幸せ者だよ」
そして、売りつけようと出してきたのは、どこにでもある「傘」
最初は太郎冠者も、「これは末広がりではない、いらない」と言うのですが、すっぱは傘をさして広げてみれば、「ほれ、この通り末広がりになっただろ」と言ったり、「(扇に描かれている)戯れ絵(ざれえ)」とは「(傘の持ち手で戯(たわむれ)る)戯れ柄(ざれえ)だ」などと、言葉巧みに騙します。
※戯れ絵・・・画題に唐子の遊戯等を扱った絵
まんまと納得し、その傘を買うことになった太郎冠者は、意気揚々と家へ戻ろうとするのですが、すっぱは太郎冠者を呼びとめ、
「ご主人が御機嫌を損ねることもあろう。そういう時は一発で御機嫌が治る囃子物を教えてやろう」と言うんですね。
人がいいんだか、悪いんだか?怒られるのが目に見えているから不憫に思ったのか?(笑)
そして案の定、主人には怒られ屋敷の外に追い出されます。
やっと「そういえば、この唐傘はお台所にいくらでもあったなぁ・・」と騙されたことに気づく←遅い!
♪傘をさすなる春日山 これも神の誓いとて、
人が傘をさすなら、我も傘をさそうよ(以下略)♪
(傘をさすよな春日山 神のまにまに傘をさすなら 我も傘をさそうよ、そうだそうだ、もっともだ)
さて、とにかく損ねたご主人の御機嫌を元に戻さねば・・ということで、すっぱに教わった意味不明な囃子物によって、主人(果報者)もすっかり御機嫌となり、めでたしめでたし・・・と言ったお話です。
とにかく、囃子物に謡い、踊る、最後の果報者と太郎冠者の息が見どころです。