萬華鏡-まんげきょう-

狂言ござる乃座32nd(国立能楽堂)

狂言ござる乃座 32nd

平成16年9月2日(木)午後7時開演


国立能楽堂周辺フォトはこちらから


「しびり」


■番組表■
太郎冠者:野村裕基
  主  :野村万作
後  見:深田博治

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【感 想】


この「しびり」のシテ(主役)太郎冠者は子供が演じることが多いといいます。
野村裕基君の「しびり」は今回が初演。
長い独壇場で言う台詞劇としては、伊呂波より高度でしょう。
狂言で大切な台詞の抑揚もきちんとつけられており、連日父師萬斎さんの厳しいお稽古の成果でしょう。
痺れを起こしたと嘘をついたが、振る舞いの場に連れて行ってもらいたいがために、自分の足に「治れ」と言い聞かせ、痺れが治ってケロっと立ち上がってしまうところが可笑しい。
今後の小さな狂言師 野村裕基君の将来が楽しみです。



「箕被(みかづき)」


■番組表■
  夫  :野村萬斎
  妻  :石田幸雄
後  見:高野和憲

「素囃子」
中之舞
大鼓:柿原弘和
小鼓:鵜澤洋太郎
太鼓:桜井均
笛 :松田弘之

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【感 想】


ほのぼのとして夫婦愛について考えさせられる。
現代にも通じる話なのではないかと思う。

「趣味に没頭し、家庭を顧みず、妻に怒られる、呆れられる」

単調で派手な笑いはないが、素囃子「中之舞」が見物。
「深き契りは頼もしや 深き契りは頼もしや(以下略)有し契りにかへりあふ 縁こそ嬉しかりけれ」
と謡いながら、扇を持ち舞う夫(野村萬斎師)は声も素晴らしく、美しかった。

現代に通じる風景。
そう、夫婦とは・・と考えさせられた。
夫婦になると多くを語らないこともあるのではないか。
言わずとも(気持ちは)知れたことと。

ここでの妻は夫の歌に対する理解を持っていて、歌の心得も持っている。
しかし家庭を守るという信念のもとに、夫に歌の会を止める様に願い出るのだが、夫は「単に歌の良さも知らずに反対している妻」だと思っている。
しかし、最後にあまりに素晴らしい返歌をする妻に、自分の趣味(連歌)についても、きちんと理解したうえで、歌の会を止めるように言っていることが判り、和解となる。
「雨降って地固まる」ではないが、
「夫婦とは互いの理解が肝要」だと教えてくれているような気がした。
たまにはお互いの趣味に耳を傾け、語り合う。
例は趣味だが、そういったことの積み重ねで、いつまでも仲良く夫と妻は向かい合っていけるのかもしれない。



「煎物(せんじもの)」


■番組表■
煎物売:野村萬斎
当 人:深田博治
太郎冠者:野村万作
立 衆:野村万之介 高野和憲 月崎晴夫 竹山悠樹
後 見:野村良乍

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【感 想】


とにかく賑やかで、「煎物売りの息災延命を約する声が響き渡り、祝意の気分に終始する」とプログラムにあるように、楽しい曲。

稽古に専念している衆の空気、場の雰囲気おかまいなしに、煎物を売る様子、一人一人に椀を差し出し拒まれつつも、明るく売り続ける様子は何故か滑稽で可愛らしくも思える。
煎物を作っては、衆に差し出すも全て断られるので、仕方なく自分で飲んでみる。
「まずい~~」と顔をしかめつつも
「おいしいのに」という部分も楽しい。

また、めげずに煎物を調合してみせるが失敗したのか脇正面の客席側にホイっと中身を捨てて見せたりもする。
これもまた、トボけた様子の萬斎師が面白おかしい( ̄∀ ̄)

野村萬斎師の謡声もいつものことながら、素晴らしい。
当人の真似をして一生懸命に踊ってみせるところも、能楽堂全体が楽しい笑いで包まれた。

是非ともテレビなどで放映してほしい、もしくはDVDで販売してほしいと思った曲。
初心者のあめみこが、この煎物でますます狂言にハマッタ!
そう言っても過言じゃないかもしれない。
(まだまだ難解な曲を楽しめるまでは時間がかかりそうだけど)




★おまけ★狂言ござる乃座 32nd プログラムより
ココから下のコメントは期間限定での掲載です。その後削除しますのでご了承くださいませ(・▽・)
■野村萬斎師コメント


相変わらず、狂言公演で全国各地を飛び回る日々が続いています。
また五月から七月初旬にかけては、東京・福岡・ギリシャで開催された「オイディプス王」に主演し、無事全日程を終了しました。ギリシャでは、野外舞台のヘロディス・アティコス劇場で、四千人の観客の前で演じましたが、体験としてあまりに巨大で、自分の中では未だに整理がつきません。
狂言師として挑んだ世界の舞台が、自分にとってどんな意味を持ちえたのか。答えはまだ出ませんが、いずれ何らかの形で実を結ぶことが出来るよう、今は古典に立ち返る日々です。
(以下略)



■麻実れいさん(オイディプス王で共演)からのメッセージ


「親愛なる若き王 野村萬斎様」
萬斎さんに初めてお会いしたのは「オイディプス王」初演のポスタースチール撮影の時だったと記憶しています。
(中略)
初めての本読みで、オイディプス役にぶつかっていくあなたの姿勢は忘れられません。グングンと伸びていく若竹の様な勢いに、私たちは吹き飛ばされそうでした。
(中略)
気品と知性が漂い、古典芸能の厳しさの中で育んだ狂言師としての今がありました。
そして2年後の再演は東京発ギリシャ行き。
改訂された台本と、目の前に広がる何の助けもない舞台空間。
そこには最終公演地、ギリシャ古代劇場 ヘロディス・アティコスがありました。
そこから始まった萬斎さんの戦いは凄かったですね。
この戦いはギリシャの最終日まで続いてきました。
その頑強な精神と肉体に、皆、何度惚れたことでしょう。
そこに佇むあなたは若武者の様でした。
若きテーバイ王、オイディプスは立派で素敵で。
私イオカステは、全力を出し切り観衆の前に立つ、カーテンコールでの王の姿にうっとりいたしました。
ヘロディス・アティコスでの最終日、熱い喝采に包まれて無事公演が終わりました。劇場を去りがたくボーッとしていると、萬斎さんもいらっしゃいましたね。
何とも言えない充実感で二人で佇んでいたあの時間は私の宝物です。
(以下略)

【あめみこの一言】
誰からも愛でられる方なんですね、萬斎さんは(〃 ̄▽ ̄〃)
オイディプス王の記憶新しい状態での萬斎さん、観客だったと思います。
今は古典に立ち返る日々、と仰っていますが、激務の日々に体調を崩されないでよい公演を行っていってくださるよう願って止みません。

ござる乃座(あめみこ日記)はこちら

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