萬華鏡-まんげきょう-

万作の会 狂言の世界(第11回)

万作の会 狂言の世界
於:有楽町朝日ホール

平成18年2月22日(水)午後7時00分開演



番組表(敬称略)

解説 野村萬斎

■和泉流狂言「茶子味梅(ちゃこさんばい)」

唐人 野村万作  女 高野和憲  所の者 野村万之介
後見 深田博治

■和泉流狂言「小傘(こがらかさ)」

僧 野村萬斎  田舎者 深田博治  新発意 月崎晴夫  
参詣人 高野和憲 竹山悠樹  尼 石田幸雄
後見 野村良乍




【解説】
去年もこちらのホールの解説は野村萬斎さんでしたが、今年もでした。
ここのホールは舞台と客席がとても近い・・・ので嬉しい(〃 ̄▽ ̄〃) →臨場感がある、とでも言っておきましょう・・え?(爆)

「こんばんわ、野村萬斎でございます」と黒紋付袴姿での登場。
立地的にも都合の良い有楽町朝日ホール。
今回は朝日新聞社主催ですが、自分で(万作の会として)主宰する場合は、開始時間に頭を悩ませるのだそうです。

地方で6時半とかだと早すぎて間に合わなくなるというし、7時にすると帰りの電車が間に合わないと・・と仰って苦笑いをされていましたヽ( ´ー`)ノ

やはりアンケートに要望として書かれることがあって、ご覧になられているのですね。
私も地元の公演でさえ、会社からの帰りだと6時半は辛かったりするからなぁ・・

有楽町ホールの公演も恒例で今年は11回目を数えるそうで、毎回2曲ずつ演っていますが、和泉流の曲256をこなすとしたら何年かかるのか・・・なんて、気が遠くなっちゃいますね・・ってか、何世代かにお任せしないと無理ですね(笑)

今回の演目は「茶子味梅」と「小傘」

萬斎さん
「茶子味梅は、「唐音(とういん)」を用いた狂言で、この「茶子味梅」のほかに「唐人相撲(または唐相撲)」と「唐人子宝」というものがありますが、この唐人子宝はワタクシでさえ、1度しか拝見したことはございません(笑)」

唐人相撲は、茂山家と合同で上演されたものがDVDとなって販売されていますが、とても面白い1枚です。
3曲とも、あまり多く上演される曲ではないらしく、貴重な舞台だったのかな♪

この茶子味梅という曲は、シテが唐人(唐土の人)です。話す言葉は「デタラメの唐土語(笑)
唐音というのは、いかに唐土語に聞こえるように話すか、ということですね。

萬斎さん「ワタクシは昔、イギリスに留学していたことがありまして、演劇の勉強の課題で、フランス語とギリシャ語(だったかな?曖昧・・)で喋ってみろ、と言われましてね」
当然、フランス語で話すわけではなく、フランス語に似せて(聞こえるように)話すわけですが、

萬斎さん「例えば アザブジュバ~~ン とかね」

(≧∀≦)ノ場内爆笑の渦

突拍子もなく飛び出した「アザブジュバ~ン」にかなりカウンター食らっちゃった私です(笑)

会場が大いに盛り上がったのを観て
「東京でないと分りにくいネタかもしれませんけれどね・笑」
意外にも大うけで、ひょっとしたらご満悦??!

海外の人が、日本語を表現するとなぜか
「あちょぉおおおおおおおおーーーーーーーーーー!!」とか
「きゃーーーーーーーーーーーーー!!」
とかで

逆にカルチャーショックを受けました( ̄▽ ̄:) と萬斎さん(笑)

こう、なんというかアジアというと"カンフー"とか"SAMURAI"というイメージがあるのでしょうね。

萬斎さん「話が脱線しまくってますが・・・(苦笑)」

いいんですよ、どんどん脱線してください(〃 ̄▽ ̄〃)ずっと聞いてるから←オオバカ

萬斎さん「唐音といえども、ワタクシどもの家では決してデタラメに話しているのではなくて、台本にはきちんと漢字に当てはめて書かれているんですが、京都の方の家では「チャーシューメーン」とか、いきなり ジャッキィーーーー・チェーーーーーン! とか言ってびっくりしましたけれど」

京都の方の家って・・・茂山さんのお家でしょう、萬斎さん(笑)
逆に親しみを込めて話されている様子が、両家の親睦の深さが伺えて嬉しかったですね~。

唐人相撲は、中国に滞在していた日本人が帰国するときに、中国の皇帝が今一度相撲を観てみたいといい、唐人が次々に日本人に相撲を挑み負け続ける、というお話です(簡単に説明しすぎかな・・汗)

この唐人相撲をすると、萬斎さんはどうしても「日本人」を演じることが多くなってしまうらしいのですが、花は「負けっぷりのいい唐人たち」にこそあり、おいしい役は唐人にある、というようなことを仰ってましたね。
↑たまには唐人を演じたい萬斎さん?

この茶子味梅では、シテは普通の狂言袴とは違う、裾が絞られた袴を着用し、日本人との違いを出すために髭をつけたりしています、とのこと。

この茶子味梅は能を模写した、いわゆる"能がかり"な狂言のひとつだそうで、囃子が入り、シテがゆったりと舞う楽舞も見所です。

萬斎さん
「普及公演ではあまり囃子を聴いてもらうところはないのですが、今回は素囃子が入ります。今回は"早舞"ですが、決して早いテンポというわけではありません。・・・(略)囃子には四拍子、太鼓、小鼓、大鼓、の打楽器と旋律を奏でる笛があります。笛は旋律楽器ですが、ご覧頂くと打楽器的な指遣いをしていることがお分かりかと思います。どうぞ、こちらの素囃子もお楽しみください」

次は「小傘」についてです。

博奕打が弟子(新発意役)の言うことも聞かずに、投資しつづけたので、結局は「ぱらりさん」=すっからかん となってしまった二人が僧と新発意(見習僧)に化け、人を騙し金品をせしめようとする話です。

にわか僧ですから、当然お経一つ読めません。
これを当時の流行歌をお経風にしてしまおうと考え

昨日通る小傘が 今日も通り候 あれ見さいたよ これ見さいたよ

と、歌います。

萬斎さん「この小唄の意味は、傘を差してここを通る女性は明日も通るかな~・・・と思って唄っている、狂言にしてはちょっと艶っぽい唄です。」
「いわゆる ムラムラしている様子 でしょうかねぇ」

ム・・・ムラムラ(≧∀≦)クックック・・・←笑いこらえる

会場でも大きく反応して笑っていらしたお客さんがいて、萬斎さんも
「なんだかすごく反応していらっしゃいますけれど・苦笑」と、そちらの方面をご覧になってましたが(笑)


おおよそ、解説の内容はこんな感じ、だったかな?
いつもは気合を入れてすぐに文章に書き起こして置くのですが、今回はなかなか出来ず時間だけ経過・・・精細を欠く出来で、ちょっと内容が違うかもしれませんが、ご許されませ(苦笑)←いつも謝ってるけれど


【おまけの駄文】
この日の解説をされた萬斎さんは、登場された時から饒舌で、滑らかな口調で次から次へと楽しい解説を繰り広げられました。
茂山家の話題となると少し嬉しそうな萬斎さんが常に印象的です。
相変わらず腕をパっと上げると、し・・・白っ

美白はこの日も健在でした(羨ましいー)

ゲストさま(茜さん)も他の公演でご覧になったと仰ってましたが黒紋付の袖口から少し鮮やかなグリーンの長襦袢?がチラっと見えたのが印象的でした。
なんだか、さり気ないお洒落、という感じがたまらなく素敵だなぁと思いました、はい。
・:*:・( ̄∀ ̄ )。・:*:・ポワァァァン・・・

やはりこの日のヒットは「アザブジュバ~ン」でしょう(笑)
もはや、日常の「ま」同盟の方々の合言葉・ご挨拶は「アザブジュバ~ン」となったとか、いないとか(笑)(大嘘)

龍笛


和泉流狂言「茶子味梅(ちゃこさんばい)」

【あらすじ】はコチラ→ 茶子味梅

【感想】
日本人妻が夫の繰り返し言う
「日本人無心我唐妻恋(にっぽんじんむしんがとうさいれん)」
という意味が分らず、物知りに聞きに行きますが、その真意を知り身悶えながら怒る妻。
「ええぃ、腹立ちや」

激しく足を踏み鳴らし頭を振り振り怒りまくるのかと思いきや、控えめでした。これは、やはり他人の目前ということで、しとやかに納めたのでしょうか(笑)

教え手@万之介さんは多少間違った唐語訳を日本人の妻に伝達しますが、騙したりからかったりしたわけではなく、「旦那の機嫌をとって酒でも振る舞いなさい」と言ったのは単なる誤った解釈(笑)
とかく男性の気持ちが分かる教え手なだけに、あまり煩く騒いでは唐人の夫もますます故郷の妻を懐かしむことになる、という助言は「隣の良いおじさん」(笑)といったイメージでしょうか。

酒を勧められ上機嫌になった夫は楽舞を舞いますが、能がかりで、万作さんの美しい舞に目を奪われます。
舞いおわると、故国に残してきた妻を思い出し、能の「シオリ」という型で悲しみを表現します。

妻に逢いたくても逢えぬ、二度と祖国に戻ることなく、異国で朽ち果てるやもしれぬ我が身を思い、その悲しみの深さは言葉に表すより伝わってくるようでした。

じぃぃーん(T_T)

その後、そんな夫を見てついに妻はブチ切れ(笑)
夫もそんな妻をやり込めようと試みますが、たちまち杖は奪われ最後は追われて出ていきます。

口喧しく「わわしい女」とされる妻ですが、本当に夫のことを愛しているのでしょうね。

「喧嘩をするほど仲が良い」かな?


唐音はたまに語尾が 「~~ッピーー」とか「○×□~ぷーっ」とか意味不明 ですが、これがまた万作さん、可愛らしいです(笑)


恋い焦がれる気持ちを表すという点で、少し普段見ているような「笑いがメイン」の趣ではなく、しっとりとした味わいと舞の見せ場があります。
それでも最後には怒った妻に追い込まれて終わると言ったコミカルな部分もあり、今まで私が観た狂言と少し違った趣の茶子味梅は印象に残るものでした。

それにしても、あの夫婦の末尾はどうなったのでしょう??

扇(オレンジ)


和泉流狂言「小傘(こがらかさ)」

【あらすじ】はコチラ→ 小傘


【感想】
この狂言を拝見したのは二度目です。
一度目には抱かなかった感想が出てくるものですね。
にわか僧(萬斎さん)は、博打で負けて「ぱらりさん=すっからかん」になり、誰かを騙して日銭を稼ごうとしています。
手下というと聞こえが悪いですが部下の立場にあるのが新発意=見習僧(月崎さん)。
博打で失敗する前も、上司である、にわか僧に何度か忠告したのでしょうね。

それでこの結果です(笑)
もしかしたら

「こんな上司はいやだ(-″-)」と思っているかもしれません。(オー人事)

基本的に独壇場にも思える行動を取っている、にわか僧の萬斎さんも、実は新発意を頼りにしている、という構図が見えます。

お堂を建立した田舎者が「一人だけ来てくれれば新発意はいらない」と言いますが、にわか僧は「いや、それは困る」とばかりに同行するよう伝えます。

心細かったのでしょうか(笑)


「昨日も通る小傘が今日も通り候 これみ咲いたよ あれみ咲いたよ」
「な~もぉだ~」
「な~もぉだ~」


このリピートは癖になります(笑)

見所はたくさんあり、尼さんが大事な小袖を持っていかれて怒りを表わす場面が可愛いです。

腰を曲げ、「大事なコショデ(小袖)を盗られてくやしぃ~」

舌ったらずな話し方がよりキュート(笑)
最後に残った尼は腰を振り振り退場します。


前半の「茶子味梅」では頭を捻りながら足を激しく打ち鳴らすという若い女性の怒りまくる型

後半は「小傘」で老婆(尼)が腰を曲げながら
キィィィ(≧血≦)…と怒る型

ヒトの進化(退化?) をここで観ました(笑)


今回は観ているうちに、主従の関係と双方が思い抱いている台詞では細かく語られない感情、現代にも垣間見られるような夫婦の姿と愛情など、あらゆる想像力を掻き立ててくれる見応えたっぷりの2曲でした。




トップページへ戻る




© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: