源博雅・・・賜姓皇族(しせいこうぞく)の一人です。918年に醍醐天皇の第一皇子・克明(よしあきら)親王と藤原時平の娘との間に生まれた人物です。皇位継承権の優先順位が曖昧になると、これが原因で争いが起こるので、母親の身分が低い王子(王女)に「源」という姓を与え臣下に格下げされた人。それを賜姓皇族というのですね。
あの源氏物語に出てくる「光る君」もそうですね。
博雅くんは15歳ですでに従四位下の位を与えられます。苦労もせんと~生意気ですね~(笑)
でも、まさに上流貴族ですからね。
この源博雅くんにも古の書物によりエピソードがあります。
今昔物語集より、天皇の秘宝であるところの「玄象(げんじょう)」という琵琶が、誰ぞの手によって盗まれてしまい、それが羅城門で音を奏でていることを知った博雅は一人でその琵琶を取り戻しに行きます。
この音色は人ではなく「鬼が奏でている」と思ったようですが、無事にその玄象を取り戻し帰ったと・・・。
普通、一人で真っ暗な羅城門。(小舎の一人はいたかもしれませんが)行く気になんてなれませんよね。
それも、鬼が出るかもしれないという夜に。並大抵の神経では行けないです( ̄▽ ̄:)
それでも玄象という琵琶(管弦)への愛があればこそでしょうね。それに、その羅城門の上で玄象を盗んだ鬼が本当にいたとしたならば・・・素直にこれを博雅に返して寄こす、これは何か不思議な力が彼にあったのかもしれません。夢枕先生の小説中にも、このエピソードについてはよく語られているんですね。
映画でも龍笛を見事に奏でる殿上人として描かれていますが、史実上の源博雅も管弦の名手だったようです。
こちらも古今著聞集での逸話。
ある時、博雅邸に盗人が入り、家の中は全て盗み出されて、もぬけの空。残っていたのは楽器の篳篥(ひちりき)だけ。仕方なく、それを吹き鳴らしていると、その楽の音を聞いた盗人があまりにも感動して「心を入れ替えました」と言って、盗んだものを全て返しに来たというお話が残っているようです。
それほどまでに、彼の奏でる楽の音は、人の心を癒す天才的な才能の持ち主だったんですね。
晴明の使う「呪(しゅ)」とは違う、博雅も呪(しゅ)の使い手・・・とも言えるのでしょう。
実際に晴明と博雅が親友だった・・・という記録は当然ありません。夢枕獏先生の創作によるものですが、時代的にぴったりと合うこの二人。内裏で顔を合わせ、お互いの存在も知っていたかも?いろいろと想像が膨らむ気がします。
これらの逸話を上手く絡み合わせ、物語を作り出していく夢枕先生・岡野先生マジックはすごい(〃 ̄▽ ̄〃)