青藍(せいらん)な日々

青藍(せいらん)な日々

シングルハンド・セーリング和訳


 ハーネスを使わないときにはいつでもすぐに使えるように保管するべきである。好みによってはほかの物にまぎれないようにフックにひっかけてもよい。ハーネスを使わないときには留め金はかけたままにしておいたほうがいい。こうすると、使う時に裏返しにならないからだ。クルーが乗り組んでいるヨットでは各員が自分のハーネスを持つべきである。暗闇でもさぐりあて、いつでも使えるように自分が置いた場所を覚えているようにするためである。ハーネスをさがすために灯りをつけてはならない。暗視がさまたげられるので。じっさいには長くても1分以内にハーネスをつけられるようにすべきである。このようにすばやく行うこと自体が役に立つことが多い。夜中に縮帆したり、セールを交換しようと寝床から起き出す男は1分間もあれば、これからなにをしようとするのか、どのようにするのかについて考えることができるのである。

ハーネスを試すこと
 単独航海を始める前に、晴れた日の穏やかな水面で、仲間が同乗しているときにテストしてみるべきである。これは帆走のいろいろな状況で試してみるべきであり、また船速が異なる場合にも行っておこう。単独航海をもくろむ人は、ヨットのいろいろな場所から落水する仮想実験をして、デッキにもどるのがいかにやさしいか、あるいはむつかしいかを得心しておくべきである。チェインプレートの場所から短いロープを海にたらすのも役立つときもある。はしごをスターンに下ろしておくことや船首から船腹にかけて浅い弓なり状のロープをたらしておくのもいいかもしれない。どの船も乗り手の体力や運動能力に違いが有り、ちょっとした工夫が、 将来的に緊急事態に陥ったとき、生と死を分ける違いになるかもしれない。船尾からいつもロープを流している単独航海者もあるが、これはハーネスの代用にはならない。5ないし6ノットの水圧は非常に大きいのでそれにさからってロープづたいに船に戻ることは不可能である。デッキにしっかりと結ばれた紐を介したハーネスだけがスピードのあるヨットの上によじのぼるわずかなチャンスを与えるのである。
 落水の危険は少なくない。おそらく2人かそれ以上乗船しているヨットでは、その危険がより大きいであろう。それなりに経験をつんだシングルハンダーは落水の危険性をよく知っており、自分で気をつけるのである。自分以外にクルーが乗り込んでいるヨットでは、人はもし落水してもすぐに拾ってもらえるだろう(単なる仮定でしかないのだが)と信じているので注意不足になるようだ。ヨットから落水した人がもし回収してもらえたら、それは非常に幸運なことである。夜中にたとえワッチがすぐに気づいたとしても、海に落ちた人間は数分で、いや数秒で視界から消えてしまうだろう。強い追っ手の貿易風が吹いている中で、ツインステースルがセットされ、ランニング帆走している状態では進路変更してヨットが上り帆走に移るまでに数マイルは進んでいるであろう。晴れたおだやかな日でさえ、ずっと真横に近づくまで海に落ちた人間をみつけることはむつかしい。まして夜間や荒天の海では、発見される可能性はほとんどない。自分一人が落水した場合には絶望的である。

  訓練
  ヨットから海へ落ちて生還した人間はセーフティハーネスの価値を身にしみて知るだろう、それは海でクルーを失ったピーターハワードのように。災難は前ぶれもなく突然ふりかかるものである。


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