しろねこの足跡

しろねこの足跡

運命


おじょうさんはこの転校によって、大きく運命がかわろうとしていました。
おじょうさんが、もう桜も散った都会の学校に転校したのは5月のはじめでした。
北国からやってきたおじょうさんは、元来の色白とあまりの緊張に蒼褪めていました。

都会の子供たちは、露骨に好奇心をむき出しにしてくるようなことはありませんでした。
でも、その分妙に大人ぶった言動がよけいに嫌味におじょうさんには思えました。

「そんなに色白くて、健康なの?」
「なんで制服をきていないの?」
「あやちゃんよりかわいくない」
「また、あそこの団地の子?」

四方八方からひそひそと聞こえてくる声は、おじょうさんをますます萎縮させました。

おじょうさんの転校した学校は、公立なのに制服がありました。その理由は、通ってくる子供たちの貧富の差があまりにもありすぎるので学校側が配慮したとのもっぱらの噂でした。
当然おじょうさんは豊かな方にははいりません。急な転校で用意できなかった制服のせいで、ますます心もとなくなるおじょうさんでした。


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