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<正常な核論議の第一歩となるか?>
有事「核の傘」どう機能、防衛省が米に概要提示要請へ
防衛省は、北朝鮮などの核の脅威に備えるため、日本が核攻撃を受けたり、核攻撃の脅威にさらされたりした場合、米軍がどのような場面で核兵器使用を判断し、日本側にどう伝達するのか、具体的な概要を示すよう米政府に求める方針を固めた。
複数の防衛省幹部が明らかにした。米国のいわゆる「核の傘」の信頼性を確保するのが目的だ。防衛省は将来、米国の核兵器部隊の運用についても、日本有事における自衛隊と米軍の共同作戦計画に反映させたい意向だ。
防衛省・自衛隊と米軍は現在、日米共同作戦計画の策定を進めており、防衛省はこの作業の中などで、米側が「核の傘」をどう機能させるのか、具体的な説明を求める考えだ。
核兵器の部隊運用は米政府内でも最高機密にあたるため、日米間では、核兵器搭載の原子力潜水艦を始めとする米軍の核兵器部隊の運用などに関する具体的な話し合いはしていなかった。しかし、北朝鮮が核実験を行ったことから、防衛省は日本への核攻撃という事態の想定に迫られ、米軍の核部隊運用の概要を把握する必要があると判断した。
防衛省幹部は「日米共同作戦計画をきちんとするためには、最後は、核をどうするのか、本当に使うのか、いつ使うのか、について、日本側が米側から聞く必要がある」としている。
核兵器に関して、北大西洋条約機構(NATO)では、米国や欧州各国の国防相らによる「核計画グループ(NPG)」を設置し、核兵器部隊の具体的な運用方針を共有している。
(2007年3月20日14時33分 読売新聞)
自分の中で,今日一番のトップニュースはこれでしたね。
回答の内容によっては,「核の傘」が有効でない場合があり得るのではないかという認識が国民の間に広がり,これと北の核武装を容認するかのような六者協議の流れとがあいまって,健全な核論議ができるきっかけになるかもしれません。
そもそも,アメリカの「核の傘」について,これを完全に信用するということが,どれだけ自国にとって危険かということは海外の政治家においてはこれを深く認識しているところです。
フランスのシャルル・ド=ゴール大統領(当時)は,1963年1月14日のエリゼ宮での記者会見にてフランスが核武装した理由を以下のように述べています。
「もちろんアメリカの核勢力は,世界平和の保障になっている。 しかしこれがヨーロッパの危機にさいして必然的に,かつ即時に使用されるという保障はない 。それゆえフランスは自らに適応した核勢力をもつ決意をしたのである。」 (嬉野満洲雄編著 『ドゴールの言葉 その演説・声名・談話から』(財団法人 日本国際問題研究所)p74)
また,ド=ゴールは,1964年4月16日,ラジオ・テレビ放送において,次のようにも述べています。
「フランスが破滅と侵略にさらされたとき,同盟国たるアメリカが,われわれのために死を賭して侵略を排除するという保証はなにもないではないか。」 (前掲書p79)
特にド=ゴールの次の言葉は,ヨーロッパを日本に,ソ連を北朝鮮・Chinaに置きかえてみると身にしみて,今の日本のおかれている状況がいかに深刻かを認識することができる明文であると思います。
「われわれの同盟者であり,友人であるアメリカは,長期にわたって核武装を独占していた。その当時アメリカは,ヨーロッパが攻撃されれば-ヨーロッパのみ攻撃される可能性があったから-直接かつ即刻ヨーロッパの防衛のために核戦力を展開する決意を公表していた。大西洋同盟によってアメリカの最高司令部はアメリカ・欧州に戦略爆撃部隊を保持-まだ運搬手段は航空機に限られていた-しているから,ヨーロッパは完全に攻撃から守られる,これによってフランスおよび西欧は侵されることなしと,アメリカは説得することができた。(中略)しかし ソ連が核武装し,しかも強力なロケットを開発した結果として,アメリカ自身の生存が問題となってきたから事態は明らかに変化した。アメリカ自身の直接防衛が死活の問題であり,それが必要な場合もヨーロッパの防衛は,いまやアメリカにとっては二の次となったのである。環境,情勢がこのように変わってきた以上,われわれとしては,我々自身の核戦力を保持することを決意するほかないのである。 」 (前掲書p117)
一方”大西洋同盟”といわれる不文の,しかしながら強固な同盟をアメリカと結んでいる英国では,自分が英国の政治に興味を持つきっかけを作ってくれた,英国保守党のフランシス・ピム議員がこう述べています(この文章はブログでは何度も引用していますが,繰り返しになることをいとわず再掲します)。
「もしも 私たちが,あらゆる状況下で,いかなる時にも,アメリカがヨーロッパの救済のために出動してくれると考えるならば,それはあまりにも愚かというものだ。なぜアメリカがやってこなくてはならないのか? とりわけ,もし私たちが自分のために何の努力もしようとしないのなら,私たちはアメリカの介入を期待するどんな権利を持っているのか?無論,経済的に見ても軍事的に見ても,ヨーロッパへのあらゆる脅威は,とりもなおさずアメリカへの脅威となろう。だが, 私は,アメリカが,介入をあまりにも大きな負担と感じ,介入によってより大きな脅威にさらされると判断する状況を思い描くことができる 。 」
かかる認識は現在の英国政府にも承継されていることは, 以前取り上げたブレア首相のステートメント にも見て取ることができます。
Finally, there is one other argument: that we shelter under the nuclear deterrent of America.
Our co-operation with America is rightly very close. But close as it is, the independent nature of the British deterrent is again an additional insurance against circumstances where we are threatened but America is not. These circumstances are also highly unlikely but I am unwilling to say they are non-existent.
(訳)
最後にもう一つ議論がある。それは我々が頼っているアメリカの核の傘についてである。
我が国とアメリカとの同盟関係は緊密なものであることはいうまでもない。それはたしかに緊密ではあるけれども,しかし 我々独自の核抑止力は,我が国が脅威に曝されているもののアメリカは曝されていないという状況における付加的な保障として必要なのである。 そういう(英国が脅威に曝され,アメリカが曝されていないという)状況は現実には生じそうもないが,しかし私としてはそんな状況が生じることはあり得ない,などと言う気はない。
こういう「あり得べき状況」の想定が,今回の防衛省の問いかけに対するアメリカ当局の返答によっては一般化する可能性もあるわけです。もしそうなれば,日本の(一般の)安全保障論議に一石を投じる画期的な出来事となる可能性もあります。もっとも,我が国に対して敵愾心を燃やす隣国が核ミサイルを向けている状況に,更に新たに核武装をする国が現れたという状況においてようやっとそういう認識になるというのは,いささか遅きにすぎたというべきかも知れませんが。
この件は是非読売に追跡取材していただきたいですね。とともに,自分も防衛省のHPを注視しておきます。
<これが普通の国の認識>
皆さんこの旗をご存知でしょうか。これはイングランドの国旗です。ワールドカップで一躍有名になりましたから,ご存知の方も多いと思います。
英国の正式名称は,「グレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国」ですが,その名のとおり,英国はイングランド,ウェールズ,スコットランド及び北アイルランドという4つの国家が連合した「連合国家」です。
連合国家ですから,各々の国が国旗を持っているわけですが,これはそのうちイングランドの国旗であるというわけです。セント・ジョージの旗という呼ばれ方もするようです。
さて,つい最近までこの国旗をむやみやたらに掲揚することに対して,およそ50万円の罰金が課せられるという法律があったようですが,最近これが廃止されることになったようです(ちなみに,ロシアでもむやみやたらに国旗を掲揚することを禁じる法律があり,確かロシアの場合は懲役刑も刑罰として認められていたように記憶しています)。
ここで扱いたいのは,この法律の廃止が決まった時のサッカーのサポート団体のコメント。
曰く「ユニオン・ジャックだろうと、聖ジョージの旗だろうと、その種類にかかわらず、 旗を掲げるのは愛国精神の表れであり、ごく自然な行為 」
なお,上記記事のソースは こちら 。
核武装でも一般の認識っていまいち世界的な標準から外れているんですが,国旗に対する認識も世界的常識から大きく外れてますよね。
核の認識と同時に国旗に対する認識も世界標準になることを願いつつ・・・