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「とる」 かわさきひろし 岸田衿子 「ジオジオの冠」 のひとです。まあ、女優の 岸田今日子さん のおねえさんで、 谷川俊太郎 と 田村隆一 の 「奥さん(?)」 だったことのある人というのもあります。
はっけよい すもうとる
こんにちは ぼうしとる
てんどんの でまえとる
せーたーの ごみをとる
(以下略)
わたしが一番きれいだったときもう、ずっと以前のことですが、この詩を初めて読んだ時に気づきました。 「櫂」 の詩人に限らず、20代で読んだ人たちって 「親」 の世代の人なのです。 茨木のり子 も、ぼくの母親と、ほぼ、同世代の人です。
街々はがらがらと崩れていって
とんでもないところから
青空なんかが見えたりした
(中略)
わたしが一番きれいだったとき
わたしの国は戦争で負けた
そんな馬鹿なことってあるものか
ブラウスの腕をまくり
卑屈な町をのし歩いた
(以下略)( 「わたしが一番きれいだったとき」 )
笑う能力 茨木のり子 ちょっとエラそうで、申し訳ないのですが、そんなにお上手(?)な詩だとは思いません。でも、ふと笑えて、いいなあと思いました。 80歳 になろうかという ばあさん が、結構、ガンバって 意地 張っておられるような気がします。
「先生 お元気ですか
我が家の姉もそろそろ色づいてまいりました」
他家の姉が色づいたとて知ったことか
手紙を受けとった教授は
柿の書き間違いと気づくまで何秒くらいかかったか
「次の会にはぜひお越し下さい
枯木も山の賑わいですから」
おっとっと それは老人の謙遜語で
若者が年上のひとを誘う言葉ではない
着飾った夫人たちの集うレストランの一角
ウエーターがうやうやしくデザートの説明
「洋梨のパパロワでございます」
「なに 洋梨のパパア?」
若い娘がだるそうに喋っていた
あたしねぇ ポエムをひとつ作って
彼に贈ったの 虫っていう題
「あたし 蚤かダニになりたいの
そうすれば二十四時間あなたにくっついていられる」
はちゃめちゃな幅の広さよ ポエムとは
言葉の脱臼 骨折 捻挫のさま
いとをかしくて
深夜 ひとり声たてて笑えば
われながら鬼気迫るものあり
ひやりともするのだが そんな時
もう一人の私が耳もとで囁く
「よろしい
お前にはまだ笑う能力が残っている
乏しい能力のひとつとして
いまわのきわまで保つように」
はィ 出来ますれば
山笑う
という日本語もいい
春の微笑を通りすぎ
山よ 新緑どよもして
大いに笑え!
気がつけば いつのまにか
我が膝までが笑うようになっていた
もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくはない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ
(「倚りかからず」ちくま文庫 所収)
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