チョウジくん、お誕生日おめでとうo(*^▽^*)o~♪
チョウジのにっこり笑顔がかわいくて好きですw
本日またまた久しぶりに、NARUTO-ナルト小話です。
チョウジお誕生日企画(2007年)
第一部設定。
『ボクが誕生日にもらったもの』(チョウジ主役・十班・シリアス)
「――チョウジ。おいチョウジ」
シカマルの声に、ハッとして顔をあげた。ひんやりとした深い森に、ボクたちは立っている。シカマルといのが、ボクの顔をのぞき込んでいた。
「準備できたぜ」
シカマルは木を見上げ、いのはその位置へ跳んで枝に立った。
「いっくわよー!」
いのはニッと笑うと、足場の枝を思い切り蹴り、跳んだ。数十メートル先の、布を結んだ枝に見事に着地する。
「楽勝ねー! 次はシカマルよー!」
「ったくメンドクセーな」
今度はシカマルが枝に立つ。
昨日第十班になったばかりのボクたち。だけどそれは、まだ本当の意味でじゃなかった。今、何をしているのかというと、明日の演習に向けての練習だ。それに合格しなかった人は、アカデミーに戻されるらしい。アスマ先生が出した課題は、深い谷を挟んだ崖を跳ぶこと。それも、助走無しで。
シカマルも、簡単に目印の枝まで跳んだ。次はボクの番だ。気が重い。のろのろと、枝に登った。布が結ばれた枝。二人にはなんでもない距離なんだろうけど、ボクにはとても遠い。ボクには無理だ……。
「チョウジー! ファイトよー!!」
いのの声援に、ますます気が重くなる。だって、カッコよく答えることが出来ないから。
仕方なく、ボクは跳ぶ。だけど、目標の枝はまだ遠いまま、ボクの体は落ちていった。
ストン、と着地すると同時に、いのがため息をつく。
「ねー、私思うんだけどさー」
いのは人差し指を立てて、内緒話をするようにボクとシカマルに顔を寄せる。
「昨日サクラに聞いたんだけどー、第七班が受けたサバイバル演習の合否って、実はチームワークだったんだって。だからさぁ、私たちも術でチョウジを跳ばしちゃえばいいんじゃないかなー」
「いや、それはねぇな。カカシせんせーと違ってアスマは単純だ」
シカマルはきっぱりと言い切った。期待していたボクはがっかりした。
「もういいよ。ボクはアカデミーに戻るから。二人は下忍になって頑張って」
せっかくシカマルと同じ班になれると思ったのに。いのも、思っていたよりいいコなのに。でもボクは、落ちこぼれだから……。
「待てチョウジ」
背中を向けて歩き出したボクに、声をかけたのはシカマルだった。振り向くと、シカマルは丸薬を差し出す。
「誰にも内緒だぜ? これは奈良家秘伝の特製丸薬だ。一粒食べりゃあ、副作用無しで何倍もの力を発揮する」
「ホントっ!?」
ボクは早速食べてみた。ん? なんか甘くておいしいな。ガリガリ噛んで呑み込むと、急に力がわいてきたような気がした。勢いのまま枝に登り、ボクは跳ぶ。軽々と目印の枝に着地出来た! いのも驚いている。
「すごい丸薬があるのねー!」
「いや、実はただの菓子」
あっさり答えたシカマルに、ボクは枝からずり落ちそうになった。シカマルはボクを見上げて、ニッと笑う。
「分かっただろチョウジ。お前はやれば出来るんだ。自信持て」
「ん……」
だけど、お菓子と聞いて、今のはまぐれだった気がしてきた。
「ちょっとシカマルー! どうせなら明日の演習までチョウジに思いこませとけばよかったじゃないー!」
「いや……。本番はアレだからなぁ……」
シカマルは腕を組む。
アレって、なんだろう……。
ボクの前に、ドーンと深い谷が広がる。のぞきこめば、めまいがして落ちてしまいそうだ。本番を目の前にして、ボクはシカマルが言っていたアレの意味が分かった。「恐怖」だ。丸薬でパワーアップしたと思いこんでも、恐怖からは逃れられない。今だって、崖っぷちに立っているだけで、足がすくんで動けない。怖い。すごく怖い。
二人は、よく跳んだな……。シカマルもいのも、難なくクリアして、めでたく下忍となった。よかった、ホント……。でもボクは……。
「どうしたチョウジ君。これくらい跳べないと、とても任務はこなせないぞ」
アスマ先生は、言葉とは裏腹に励ますように、ボクの肩をポンと叩く。
「でも……ボク怖くて……」
情けなくて、ボクはうつむく。
「だいじょうぶ。平地だと思えばいいんだ。下を見ずに、向こう岸だけを見て跳ぶんだ」
ボクは力無く顔を上げ、向こう岸を見る。シカマルがいる。いのがいる。二人のところへ行きたいけれど、あまりにも遠い。落ちこぼれのボクは、あの二人とはこれくらいの距離があるのかな。だってやっぱり、向こう岸までボクは行けない。
「いざとなったら、オレが助けてやるから」
頼もしい、アスマ先生。でも……やっぱり怖いものは怖いよ。だって、平地だと思いこんだって、本当は深い谷だもの。ボクには、どうしても、無理だもの……。
「ボク、跳ぶの、やめ――」
言いかけたその時、向こう岸の二人が手を振っているのが見えた。
「チョウジー!」
シカマルが何か叫んでる。ボクはその声を聞こうと、思わず身を乗り出す。
「落ちたらっ……オレが影真似の術で止めてやるっ!」
ハァハァと肩で息しながら、シカマルは叫んでる。
「影がつかまんなかったらーっ、私が心転身の術で代わりに落ちてあげるーっ」
いのも、めいっぱい声を張り上げてる。
「オレも一緒にっ、落ちてやるっ」
シカマルは必死で、ボクの方を見る。
「だから、跳べチョウジーっ!」
「跳んでよチョウジーっ!」
二人が同時に叫んだ言葉は、ボクの胸に真っ直ぐ届く。真っ直ぐすぎて、胸が熱い。なんで? なんで? なんでなの? ボクじゃなくたっていいじゃないか。ボクなんかより、他のヤツが十班に入ればいいんだ。ボクが入ったら足手まといじゃないか。シカマルがあんなにバカだとは思わなかった。いのもすごくバカだ。バカ…。バカ! バカッ!!
ボクは、震えるくちびるをギュッとかんだ。怖いからじゃない。こみ上げてきた熱いものを必死で抑えこんだんだ。大丈夫。もう怖くない。だってボクの「怖い」を、シカマルといのは一緒に背負うって言ってくれたから。だから、怖くない。ボクは、足に力を込めた。
アスマ先生が、またボクの肩をバシンと叩く。
「みんなで一緒に、十班になろうぜ」
「……うん!」
にっこり笑う、大きくてあたたかいアスマ先生と。本当はとっても優しいいのと。そして親友のシカマルと。同じ班になりたい。絶対に同じ班になりたい!
ボクは向こう岸をにらむ。だいじょうぶ。跳べる。だって昨日は跳べたもの!
一つ息をして。心臓が張り裂けるほどドキドキしてるけど。足がガクガクしてるけど。だけどボクは行くんだ。シカマルといのがいるあの場所へ!
ボクは、渾身の力を込めて、大地を蹴った。
ボクはショックのあまり、地面に突っ伏していた。シカマルといのがそばで慰めてくれてるけど、ボクは立ち直れない。
落ちてしまった。届かなかった。気負いすぎて、バランスを崩しちゃったんだ。シカマルもいのも本当に一緒に落ちてくれて、結局アスマ先生が全員を抱えて助けてくれた。けど……ボクは下忍にはなれないんだ。第十班には、入れないんだ……。
「なんだチョウジ。合格したのに何落ち込んでるんだ」
「はあっ!?」
ボクが驚くより先に、シカマルといのが声を上げた。
「だっ、だって向こう岸まで跳べなきゃ不合格なんだろ?」
「誰がそんなこと言った? オレは「崖を跳んだら」合格だって言ったんだ。向こう岸にたどり着こうが落ちようがそんなこと今はどうでもいい。ただ、下忍になるための度胸と心構えを見たかっただけさ」
ボクが顔を上げると、シカマルといのは何だそれ? って顔をしてて、アスマ先生は愉快そうに笑ってた。だけどその後、シカマルといのは、急にうれしそうに笑った。
「よかったねーチョウジー!」
いのが、心から喜んでくれてる。ボクは胸がぎゅっとなる。
「ホント、よかったぜ……」
つぶやくように小さく言ったシカマルが、ほんの一瞬、泣きそうな顔をした。ボクはつられて……。シカマルはすぐに元にもどったのに……。ずるいよシカマル……。
我慢出来なくて大声で泣くしかなかったボクを、大きな胸で抱きしめてくれたのは、アスマ先生。ああ……このあたたかい先生のもとで、ボクたちは、忍になるんだ。みんなで、第十班になるんだ――
実は今日はボクの誕生日で。それを知ったアスマ先生は、焼肉屋さんへ連れて行ってくれた。
先生、いいのに。だってボクは、もうプレゼントたくさんもらったよ。自信とか、勇気とか……「第十班」っていう仲間を……! ありがとう先生。ありがとう、いの。ありがとうシカマル。ボク、みんなと一緒に頑張るよ!
うれしくて、うれしくて、焼き肉をいっぱい頬張ったら――帰りにアスマ先生がお店の人に土下座してたけど……。お財布忘れちゃったのかな?
☆あとがき☆
チョウジお誕生日企画小話です。チョウジは自分に自信がなくて……。そういうコって現実たくさんいると思うんです。だからチョウジって、読者が共感出来るキャラなのかも、と思います。今回は、チョウジがみんなに支えられて自信を持っていく過程を書いてみました。それからチョウジって、自分が人からバカにされたりして心の痛みを知っているせいか、とっても優しいんですよね。作中、それについてはほとんど出せませんでしたが、そういうチョウジも機会があったら書いてみたいです!
一番は、仲間に大切に思われているチョウジが書きたかったんです。落ちこぼれだと言われていても、チョウジの良さを分かってくれる人がいて……それが第十班なのだとも思います。
この話を書いていて、改めてチョウジっていいコだなぁと思いました。チョウジくん、お誕生日おめでとう!
※小さい読者さまや、オチが分からなかった方へ。アスマ先生は、おさいふを忘れたわけではありません。チョウジが焼き肉を食べすぎて、お金が足りなくなってしまったんです。
チョウジ『ボクと十班のお話を読んでくれてありがとう!』
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