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ドタバタ!シーサイドストーリー 上巻
でぃあす様との合作、お楽しみください♪
<無断転載は厳禁します>
地球より遠く離れた星の一つに、「ガイアース」という、地球とよく似た気候を持つ惑星がある。ここには同じ形、同じ広さの二大陸が存在し、片方には「ヒューム」と呼ばれる人間が、もう片方には地球では空想の生き物とされる、獣人、竜人達が住んでいる。その獣人、竜人達がいる大陸のある所に、種族に関係なく色んな者が住まう、小さな村があった。人々はそこを、「竜の村」と呼んでいた…
うだるように暑い夏の昼下がり、一つの人影がハァハァ言いながら、足取り重くある家へ向かって歩いていた。紫色の体に後ろ向きに生えている四対の角、緑色の瞳を持つ彼は、でぃあすと呼ばれていた。
「おーい、マリンいるー?」
力ない声を出し、力なくノックすると、でぃあすは一歩戸から引いた。するとまもなく、向こうから足音がやってきたかと思うと、ガチャリと戸が開いた。現れたのは、水色の竜人である。
「はーい、誰ー? あっ、でぃあすじゃない。どうしたの?」
「いや、ちょっと話をと思ってね。入ってもいい?」
「いいわよ。こんなに暑いのに、帽子も何も被らないで来るなんて…」
マリンはそう言うと、でぃあすを家にいれた。でぃあすは家に入るとすぐ椅子を引き、ぐったりとその身を椅子に預けると、ふぅと長いため息をついた。マリンは氷の入った水差しから水をコップに入れ、でぃあすに差し出した。ディアスはコップを引き寄せると、ゴクゴクと飲み干した。
「はぁ~、生き返った~。ありがと」
「いいのよ。それより、どうしてまたこんな時に?」
「ああ。ここのところ、ずっと暑いだろ? だから、明日にでも皆で海に行くのはどうかなと思ってさ。どうだ?」
「いいわね! って明日?! 今からみんなにこのことを伝えて準備をするんだと、時間が足らないから明後日にしない?」
「まあ、それもそうだなぁ。じゃあどこから話し合うか…」
すると、ノックする音が聞こえてきたので、マリンは「はーい」と言いながら戸に近づき、戸を開けた。そこには、ついさっきのでぃあすと同じ状態のフレアと、日傘を差して立っているレモンがいた。
「ようマリン、入っていいか?」
「い、いいけど、どうしてまた…」
「お邪魔するわね」
ちょっとふらついているフレアの後に続いて、日傘を閉じつつレモンも入ると、マリンは戸を閉め、二人分の水を用意した。
「………ふう~う、助かったぜ。もしマリンがいなかったら、俺は帰り道で倒れていたぜ」
「それはいいけど、どうして来たの? レモンまで…」
「え? ああ、ただ家にいるだけだと普通に暑いだけだから、話をしに来たんだ」
「私も同じ意見ですわ」
「そりゃあ、こんな暑い日にゆっくり昼寝なんてできないしね。そこでさ、今マリンと話していたんだけどさ、みんなで海に行かない?」
「海かぁ…そうだな。これだけ暑いんだったら海もいいな」
「海…そう言えば、今年はまだ行っておりませんわね…」
「でしょ? だから俺、マリンに言いに来たんだ」
「それじゃあ、この話が終わったら、私も手伝うから、みんなに知らせてきてね」
「よっしゃ!」
「分かったぜ」
「了解しましたわ」
この後、マリンが広げた紙に各自が様々な意見を書いていき、荷物や時間・担当等を次々と決めていった。まあこの四人以外は、勝手に決められて迷惑かもしれないが。そして…
「よっし、出来たぁ! これで完璧だ!」
「後は本人達の了承次第だな…」
「きっと了承してくれると思いますわよ。こんなに暑いんですもの」
レモンはそう言いながら、手をパタパタさせて汗ばんだ顔を扇いだ。マリンはそれを聞くと、スッと立ち上がった。
「決まりね。それじゃ、皆に知らせに行きましょ」
「くれぐれも途中で熱中症で倒れないようにしないとね」
四人はこうして出て行った。ちなみに言い回っている最中、フレアが熱中症にかかって倒れ、ピンクに助けられたことは備考として記しておこう。
そして明後日の朝、四人の指示した持ち物と、それぞれの私物を背負った住人達が、村の出口に集合した。無事全員から了承が取れたのだ。
「みんないるかぁ? よぉ~し、そんじゃあ出発!」
でぃあすの言葉と共に、数名が「出発!」と返し、村を出た。海へ行くには三十分ほど林の中を歩いていく必要がある。一同はまだ朝の鳥がさえずり、日がほどほどに入り、爽やかな風がそよそよと吹いている林の中を、談笑をしながら歩いている。
「いや~、そういえば、皆で出かけるなんて、本当に久しぶりだよね」
でぃあすとマリン、ナイト、ピンクが先頭組で話している。
「そうね。ここのところ暑かったから、声をかけに外に出かけなかったもんね」
「最近ピンクの家から、音楽が聞こえてこなかったから、干からびていないか心配していたんだけど」
「いっくらなんでも、それはないって。ねぇナイト?」
「え? あ…ああ…」
ナイトと呼ばれた竜人はちらりとマリンに目をやった後、申し訳なさそうに言った。
「んも~、相変わらず無口なんだから」
ピンクはぷぅと頬を膨らませると、マリンの方を向いて話し始めた。
こちらは後方組。前の方では、ブラックとホワイトが話している。
「わ~、楽しみだなぁ、今年最初の海!」
ホワイトはスキップ気味に歩きながら、誰にでも分かるぐらい楽しそうな声でブラックに言った。
「あまりハメを外すんじゃないぞ。海は危険な所でもあるんだからな」
「もー、言われなくたって分かってるってばぁ」
「…しかし、この暑さが和らげる場所なんだからいいよな」
二人の後ろには、レモンとブラウンがいた。二人は他の仲間達よりも荷物が少なめだ。
「楽しみですわね、ブラウンさん」
「そうね。こう暑くちゃ機械いじりもやる気が起きないし。好きなことをすることが出来ないなんて、イライラするわよ」
「確かにそれは言えますわね。私も、ただお酒を飲んでいるのはつまらなかったですわ…」
「でも今回、マリンから聞いた計画の中で、最後の締めのイベントを私に任せられたから、けっこ~頑張ったのよぉ?」
「何ですの、それは?」
「ふふふ~ん、それは、その時が来てから…って、あっ!」
すると、この声に反応して、グレーが早足で後ろから近づいてきた。
「おっ、どうしたブラウン?」
「私、日焼け止め忘れてきちゃった。早く取ってこないと、もう海までの道のりの半分近く歩いちゃったし…」
ブラウンは、あたかもグレーがいないかのような話し方をしている。しかし、グレーはそれに構わず話している。
「よっしゃ! ここはこの俺、グレー様がダッシュで取ってきて…」
「じゃあ私、走って取ってくる。スチール、ちょっと荷物預かっててくれる?」
「エッ?! ア、ウン… 早クナー」
スチールと呼ばれた機械竜は、カシュン、と音を立てて荷物を両手で受け取った。ブラウンはそれを確認すると、名前と同じ茶色の長髪をなびかせながら、道を優雅に逆に走っていった。グレーはそれを見て、やれやれ、と言わんばかりに肩をすくめた。一番後を歩いていたパープルと呼ばれている藍色の獣人は、本から一旦目を上げて走り去るブラウンを見た後、すぐ目を再び本に落とした。そうこうするうち、徐々に木が少なくなってきて、辺りが明るくなってきた。それと同時に、林の香りに潮の香りが混じりだした。潮の香りが濃くなってくると、個人のテンションが上がってきたようで、ある者はソワソワしだし、ある者は鼻歌を歌いだし、またある者は喋るトーンが上がった。そしてとうとう…
「海だぁー!!」
先頭のでぃあすが、両手を横に広げて叫ぶと、何人かは「おぉー!」という歓喜の声を上げた。でぃあす達の正面には、まだ地球に人間がいなかったころにあった、絵に描いたような美しい海が広がっていた。すると、ホワイトがブラックの制止を振り切って海へ走り出した。ホワイトは海に入る直前、服をバッと脱ぎ捨てようとしたが、意外にもスルスルと脱げなくて、シャツがあごに引っかかってあたふたしていた。そこに、ようやく後から走ってきたブラックが追いつき、胸に手を回して、みんなのいる方へずるずると引っ張っていった。
「ホワイト、お前気が早えーよ」
フレアが半分笑いながらホワイトに言った。ホワイトはまだシャツが脱げないらしく、くぐもった声で「だってぇ」と返した。一向はそれを笑っていたが、ふとピンクが気がついて言った。
「…あ、今さら思ったんだけど、どこか休む家みたいなのはあるの?」
すると、でぃあすはえっへん!という仕草をして言った。
「こう見えても村長! そんなことも考えないで来やしないよっ。ほら、あれ」
でぃあすが指を指した方向を見てみると、こげ茶の家が、丁度浜と草地の中間の所に建っていた。
「昨日俺とでぃあす、それにグレーで必死に修理と掃除をしたんだからな。皆もうちょっと感謝してくれよ」
「それはご苦労様だったわね。じゃ、行こうか」
フレアが疲れたんだぜ? という仕草をすると、マリンは軽くそう言って、家の方にスタスタ歩いていった。フレアは「お、おい…」と多少こけながらも、マリンの後に続いて歩いていった。家に着くと、一行は重い荷物をドサッと置き、「はー」とか「やれやれ」という声を漏らした。家の畳は少し砂が入り込んでいるのか、幾分かザラザラしている。丁度線対称に家の両側にそれぞれ十二畳の畳が敷かれていた。真ん中には硬い土間が家の中を二分しており、奥にはかまどが置かれている。
「それじゃあ、お昼の準備をするよー!」
でぃあすがそう言うと、一行の半分が荷物を開き、次々に物を取り出した。食材、器具らが出されると、次は下ごしらえと組み立てに入った。でぃあすとピンクは食材の下ごしらえをし始めたが、何と肉を切るのにでぃあすは二回、ピンクは三回危うく自分の手を切りそうになった。ピンクに至っては、まな板の厚さの半分まで包丁で切ってしまったため、でぃあすは「やっぱり馬鹿力だなぁ」とボソッとつぶやいた。しかも偶然ピンクに聞かれてしまったため、周りの制止も聞かず、一分ほど包丁でバトルを繰り広げるハメになった。しかし、最終的には何とか終わり、でぃあすは二つの意味で胸をなでおろした。一方、器具の組み立てはホワイトとブラックの担当だったが、元々相性がいいので、たちどころにバーベキュー用のコンロセットが二つ組みあがった。二人はそれを家の外に出すと、ホワイトは今度こそあっという間に着替えた後、海へと突進して行った。あらかじめ下に水着を着込む気合の入れようである。ブラックは「全く、あいつは…」とかブツブツ言いながらも、パパッと着替えると軽く走ってホワイトの後を追った。レモンは日焼け止めが来るまでは外に出ないらしく、くくりつけられていたすだれを解いて垂らすと、蚊取り線香の使い方をパープルに聞いていた。グレーは自分の髪を濡らしたくないのか、縁側に座って櫛を丁寧にかけている。パープルは壁にもたれて本を読んでおり、レモンの問いかけに反応した時だけ顔を上げた。
「でぃあすー、そろそろ行こうよ!」
マリンは軒下に風鈴をつけた後、部屋の隅でナイトに手伝ってもらい、日焼け止めを塗り終わってでぃあすに言った。
「あ、うん。今準備するよ」
でぃあすは切り終わった食材らをまとめると、フレアと共に外に出た。すると、林の中からブラウンともう一人、緑色の竜人がこちらに小走りでやってきた。
「おっ、ブラウンだ。って、ラルド!? ま、またお前は…」
フレアはポリポリと顔をかいた。ラルドは食事の時以外は釣りと睡眠しかしてないせいか、この提案をでぃあすから聞いた時は、上の空だったのか生返事だった。
「お待たせして申し訳ありませんでした、皆さん。それと、ラルドさんがフラフラしておられましたので、連れてきましたわ」
「ラルド遅―い!」
「ごめんごめん、ブラウンに言われるまで、すっかり忘れてたよぉ」
「あ、あのなぁ…」
でぃあすはそう言ってラルドを見た。持ち物は釣竿にバケツ、そして今被っている麦藁帽子だけである。こうなる事を予測して、ラルドは自分の物だけ持ってくればいい、とでぃあすは言っておいたのだ。すると後ろから、「私を忘れないでよっ!」という声と共に、ピンクが走ってきた。橙色の濃淡グラデーションがかかったビキニを着ている。ここででぃあすは何か言おうと思ったが、言ったら先程のような状況になるかもしれないと思った瞬間に、寒気を感じて口を閉じた。その後、ラルドは波止場の方へムニャムニャ言いながら歩いていき、ブラウンは家の中へ入っていった。そして、でぃあす、マリン、フレア、ピンクの四名は、海の方へ歩いていった。でぃあすは少しずつ嬉しくなってきて、海辺に近づくにつれて小走りになっていった。表情もだんだんニコニコしてきた。そしてとうとう、でぃあすは少し高めの波が来た時に、走ってからピョンと飛んで海に入った。後からマリンとフレアも入り、波打ち際でパシャパシャ水をかけ合っていた。三人とも笑いながらかけ合っていると、でぃあすは一人足らないことに気付いた。ふと浜辺の方を見ると、ピンクが丁度ギリギリ波が来ないところで小さく震えていた。
「ちょっとー! ちゃんと準備運動しないとダメでしょー!」
「…ああそうか、ピンクは水がダメだったねぇ。ピンクが海に入ってきてくれたらするよー!」
「もう! 意地悪!」
ピンクは両腕を縦に持ってきて叫んでいるが、自身は一歩も前に進めないでいた。
「でも、私も何故か勢いで入っちゃったし、ちゃんと準備運動ぐらいはしないとね」
その後、海から三人が出ると、案の定でぃあすはピンクに「軽く」チョークスリーパーをかけられた。ピンク本人は「軽く」と言っていたが、でぃあすには「ほぼ全力」レベルに感じられ、三分ほど四つんばいになってハァハァ言うはめになった。フレアはそのでぃあすに「自業自得だぜ」と一声かけた。この間、三人は準備運動を済ませ、フレアとピンクは砂浜で砂山を作り出した。やっとでぃあすは回復すると、マリンが海でパシャパシャしたり軽く泳いでいる所に再び入っていった。冷たいのに暖かい。これがでぃあすの今年初めての海の感想である。ギラギラ燃える太陽が、柔らかく吹く風とマッチする海水を作り出す技術力に、でぃあすは心の底から感心した。こうして水をすくい上げたり、下手なバタ足で泳いでいると、向こうからすいすいとホワイトが泳いできた。
「でぃあすぅー、お腹減ってきたよーう」
「えっ?」
でぃあすはそう言って、手をかざして太陽を見上げた。すでに太陽はでぃあす達の真上に移動し、容赦なく光線を発している。無心で遊んでいるうちに、昼になってしまっていたようだ。
「あ~、もう昼の時間か…」
でぃあすはそう言って浜辺の方を見ると、すでにフレア、ピンク、そして海に入っていたはずのマリンもいなかった。
「あれ? マリンは… ま、まさかっ?!」
でぃあすは一瞬背筋に寒気が走るのを感じつつ、水をかき分けかき分け海から出た。海から出ると、でぃあすは一目散に海へ向かって走り出した。しかし、すでに家の前ではバーベキューが終わりかけで、何と今はマリンがコンロセットの前に立っている。マズイ!!でぃあすがそう思ったのは、でぃあすがもうコンロセットとあと5mも離れていない時であった。
「マリーン!! ストォーーップ!」
「え!?」
マリンがでぃあすの方を向いた瞬間、コンロセットの覆いの陰から黒い煙が立ち上り始めた。
「マリンっ! どいたっ!」
「あっ、うん…」
マリンは軽く後ろに飛び退いた所に、でぃあすがザッと入り込み、串を網から持ち上げた。空中に現れたのは、色とりどりの野菜でも、いい色の肉でもなく、黒い炭だった。
「あぁ~… 遅かった…」
「あ、あら、そんなに焦げていたのね…」
マリンは肩をすくめて苦笑いをした。
「ご、ごめんでぃあす。でぃあすの帰りが遅いから、先に焼いておいてあげようと思ったら…」
「あ、ああ、そう…」
「…あ、あと、言いづらいんだけど、それ、昼用の最後の肉なのよ…」
「「なにぃーーーーっ!?」」
でぃあすと同時に、たった今帰ってきたホワイトも叫んだ。
「ぼ、ボクのお肉があぁ~~…」
ホワイトは顔に「野菜だけはイヤだ~」という字を浮かべて、バタバタと地団駄を踏んだ。すると、向こうから眠そうな顔をしたラルドが、バケツを提げて戻ってきた。
「ただいまぁ~」
「あら、ラルドお帰り。お昼ごはん食べにきたの?」
「うん。あと、これ」
ラルドはそう言って、地面にバケツをトンと置いた。でぃあす達が中を覗き込んでみると、たくさんの魚、おそらく十匹ぐらいだろうか、中でピチピチ跳ねていた。
「なんか今日は寝る暇もなく引くから、こんなんになっちゃったよ… この魚、食べられる?」
ということで、本の虫になってたパープルに聞いたところ、全部食べれる魚のようだ。
「わーい、たすかったー!」
ホワイトはピョンと一回跳ねた。でぃあすも野菜だけ、というのは嫌だったので、「よかった…」と言って胸をなでおろした。でぃあすとマリンは魚に串を刺していき、焼くのはホワイトと、つい今しがた帰ってきたブラックに任せられた。たちまち十匹ほどの魚と野菜が焼きあがり、でぃあす達は早速焼き魚にかじりついた。
「うん、うまい!」
「おいしいね、でぃあす!」
ホワイトは魚をかじり、はしゃいでいる。ラルドは口をムグムグさせながら、うんうんとうなずいた。自分がこんな所で貢献できたのが幾分か嬉しかったらしい。ブラックといえば、無表情で野菜をガツガツ食べている。でぃあすはふと思い出し、魚の尾に近い部分をかじりつつ、振り返って家を見た。ピンクがグレーに何か言ってかき氷を作らせている。大方、何か変なことを言って反感を買われたのだろう。レモンはブラウンと縁側に座り、ゆっくり団扇を扇ぎながら、談笑している。ブラウンがビキニを着ているあたり、この後二人は海に入るのらしい。パープルは相変わらず本を読んでいるが、時折目がとろんとしてはパッと開いたり、を繰り返している。そんなに眠いなら普通に寝ればいいのに…とでぃあすは思った。丁度その時、フレアが家から出てきた。
「でぃあす、先に行ってるぜ」
「あ、うん。ちょっと休憩したら行く~」
それから二十分後、ようやく全ての串を空にすると(ホワイトにも何とか一本野菜の串を空にさせた)、でぃあすたちは家に上がった。すると、波の余韻と共に眠気が襲ってきた。おそらくは食後ということもあるのだろうか、ホワイトも目をしぱしぱさせていたり、こすっている。でぃあすは隅に置いてあった荷物群の中から、手ごろな高さと硬さを持つ荷物を引っ張り込むと、それを枕に眠りだした。家の中に潮風がそよいでき、でぃあすはまるで今も波の上にいるような感覚の中でまどろんでいた。日は天頂にあったのだが、誰かが打ち水をしてくれたこともあり、さほど暑くなく、快適だった。
「ちょ、それ私のリュックじゃないの!」
唐突に眠りからまどろみに引き戻す声がしたかと思うと、でぃあすの側頭部に衝撃が走った。まどろみから完全に起こされたでぃあすが起き上がってみると、ピンクが自分のリュックを荷物群の中に、戻しているところであった。どうやらピンクの荷物を枕にしていたようで、それを引き抜かれたらしい。隣を見ると、ホワイトが腕枕をして寝ている。さらに反対側の座敷では、案の定パープルは壁にもたれかかったまま寝てしまっている。風に吹かれて、本の頁が進んだり戻ったりしている。さらにパープルの足元には、壁側を向いてナイトが寝ている。やっぱり今の時間は眠くなるんだなぁと、でぃあすは思いつつ、完全に起こされてしまったので、もう一度寝る気もなくなった。縁側にいたレモンとブラウンの姿がないところを見ると、二人は海に行ったのだろう。でぃあすもフレアとの約束を思い出し、「しゃーない、行くか…」と小さくつぶやくと、真ん中の土間にスタッと降り立ち、海へ向かって歩いていった。家の中は日が当たっておらず、涼しかったせいか、外に出ると日差しが肌を刺し、気温が二倍になったような気がしたので、でぃあすは目を細めて歩速を早めた。浜辺にはピンクとブラウンがおり、大きなパラソルの下で時折話しながら、シートの上に寝転がっている。すると、でぃあすが近づいたのに気付いたピンクが、でぃあすの方を向いた。
「あれ~? でぃあす、もう寝ないの?」
「あんな形で起こされたらもう寝れねぇだろ? それより、レモンとフレアとマリンは?」
「レモンちゃん達なら、ほら、あそこ」
ブラウンが指差した方向には、浮き輪にレモンとマリンが乗り、紐をつけてフレアに泳がせて引かせている姿があった。でぃあすは少しあきれた顔になりながらも、フレア一人では大変だと思い直し、すぐ海に入っていった。
一方こちらは海上。
「遅ーい、フレア!もっと速く~」
「遅いですわよ~」
「お前ら自分でこげよ! 引いてもらっているだけ、ありがたいと思えよ!」
「なーに? 何か言った?」
「だから自分でこげとっモゴモゴモゴ…わぷっ!」
フレアが、マリンの言葉に押された瞬間、不意を突いて波が顔にかかり、フレアは動揺した。丁度その時、
「フーレアー! 来たぜぇー!」
「う、うわぁっ!?」
フレアは思わず上ずった声で驚いたが、その声の主がでぃあすなのが分かると、三人から目を背けて元々赤い顔をさらに赤くした。
「どうしたの? フレア」
「い、いやいや、何でもねえよ…」
「おっ、でぃあす、いいところに来たわね!私達を引っ張る名誉を与えるわよー!」
「ええーっ、んなの名誉もくそもある… わ、分かった分かったー!」
でぃあすは思い切り反論しようと思ったが、一瞬マリンが恐ろしい眼光を向けたので、一気に言葉をせき止めて飲み込んだ。そして、マリンがでぃあすに一本紐を投げ、でぃあすはそれを左手で持ちながら、フレアと共に泳いだ。海水は焼けるような日に温められ、泳いでいて非常に気持ちよかった。泳ぎながらマリンは「遅いよー」とはやしたてながら、二人に水をパシャパシャかけた。しばらくゆっくり泳いでいたその時…
「あら、ちょっとマリンさん、陸が…」
「えっ? あっ!」
マリンの声ででぃあすとフレアは陸の方を見た。何と、陸が遠くなり、波止場を過ぎて、家が米粒の大きさになってしまっている。
「げっ! 俺達沖に流されてるぞ?! 戻らないと!」
「たっ、大変だ!」
でぃあすとフレアは今まで以上に早く泳ごうとしたが、いかんせん左手で紐を持ち、マリンとレモンを引いているので、早くなったといってもたかが知れていた。ただでさえこんな状況だというのに、泣きっ面に蜂で、次第に波が高くなってきた。
「じっ、冗談じゃねえよ! これじゃあ戻れないぞ!」
「大変ですわ…何とかしないと…でも、私は何も出来ないし…」
その時、心配しながらキョロキョロしていたマリンが絶句した。
「マ、マリンさん、どうしたんですの?」
「あっ…ああ…あれ!」
マリンが指差した方向には、海面を割くようにこちらに向かってくる、濃藍のひれが数個見えた。
「ちいいっ…」
フレアは歯軋りしながら舌打ちしたが、何をする事もできないでいた。
少し時を戻して、浜辺では…
「はあ…波の音が静かですわね…」
「そうね…」
ピンクとブラウンは完全にリラックスし、時折起き上がってはお茶を楽しんでいた。
「それにしても…あの四人は随分沖に行っちゃったわね…」
「流されすぎてないとよいのですが…」
そこに、家にいたナイトが来た。
「隣…いいか?」
「あっ、ナイトじゃないの。珍しいわね、ここに来るなんて」
「…マリンがいなくなったから…」
ナイトはそう言うと、パラソルが作り出した影の端に座ると、海の方を眺め始めた。その時…
「大変大変大変だああぁぁ~!!」
普段はのんびりしている声が、珍しく大声を上げて慌てている。三人が声のする方を見ると、ラルドが何度かこけそうになりながら、こちらに走ってきている。ピンクはラルドを迎えるように、起き上がって走って行った。
「どうしたのよ? そんなに慌てて…」
「はあっ…はあっ…あのさ…鮫が…釣れたんだよ!」
「鮫が…?」
「そう…だよ…ち…ちょっと待って」
ラルドは大きく何回か深呼吸して息を整えると、急いで話しだした。
「鮫が連れたって事はさ、近くに群れが来てるって事だよ!」
「!」
ピンクはそれを聞いて、両手を口に当て、目を丸くした。すると、後ろでバタバタッという音がしたので見てみると、ナイトが船着場に向かって走っていく所だった。
「じゃあ僕、家にいるみんなに知らせてくるよ!」
ラルドはそう言いながら、家へと走って行った。ピンクとブラウンは、急いでナイトの後を追いかけた。ナイトは先に桟橋を渡り、一隻だけある小型と中型の間の大きさの魔動力船にヒョイと乗り込み、操舵室に駆け込んだ。操舵の輪を握った時、ナイトはハッとした。彼女は船の起動方法も、操舵方法も知らないのに気がついたのだ。早く助けに行きたい思いが、何も知らないという循環装置で空回りしてしまい、しばらく彼女は操舵の輪の前で立ち尽くした。
「待たせたわね、ナイト!」
そこに、ブラウンが操舵室に飛び込んできた。
「後は私がやるから、ナイトは外でマリン達を捜してきて!」
ブラウンはそう言うと、ダイヤルのような物をグッと回した。すると、ドルルンッというエンジン音が一瞬高らかに響き、ドラムのような重低音がリズムよく叩かれだした。ナイトはそれを確認すると、バッと外に出た。丁度ブラックが船に飛び乗ったところだった。ナイトが船の舳先に向かうと、エンジンがフル回転しだして船はゆっくり動き出した。船が波止場を越えて沖に出ると、すでに船は爽やかな風が十二分に感じられるほどの速度を出していた。ナイトは一番へ先に立ち、沖を一心不乱に見つめていた。
後半へ続く
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