空と海と私と

空と海のこと 誕生~

低い満月がビルの谷間に浮かぶ夜、産院はお産のラッシュだった。
双子ということで10日も前から入院しているが一向に産まれる気配がない。病棟で退屈していた私は、なるほど満月は出産が多いのだと自然の摂理に感銘を受けながら、早く産まれておいでとお腹に話しかけていた。

子宮口も4cm開いていたし、卵膜もはがしたのに、陣痛は来ない。
主治医も入院費もかかるし、そろそろ産むかと陣痛を誘発することに。
翌日、陣痛を感じてから3時間後、思い切り大声で産声をあげた空が誕生した。

ほっとしたのも、つかの間、主治医が私のお腹をぎゅうぎゅう押し始めた。
「うわっ!何する!?」
そう双子の弟がまだお腹の中だった。
約10分後の陣痛の波に乗って海が誕生した。
空に比べて静かな産声だった。

お腹の中にいた頃から、まるきり違うふたりだった。
空は良く動き、海は動かなかった。
CTで見ていた主治医も海の動かなさには驚いていた。
何しろ、同胞の空は真横で動き回っていたのだから…。


© Rakuten Group, Inc.
X

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: