野の花・野の豚の自己研究に根ざす、社会的な共生の道を探求する発言・2015年7月1日から

野の花・野の豚の自己研究に根ざす、社会的な共生の道を探求する発言・2015年7月1日から

親しい訪問者(92.9/23作」 




夏のあいだじゅう
私が働いている工場の 
鉄格子の窓の外から
弧を描きながら私をめがけて
便所蜂何度も飛んできた
野獣のように臭いと囚友が言う
私の腋臭が彼を呼び寄せていたのか
うるさく私の周りを飛び回る彼を

私はそのたびに
おぞましいものでもあるように
手を、ほうきを振り振り追い払っていた

9月も半ば過ぎ、彼岸も近いある日
涼しくなった風に乗ってやってきた彼を
なぜかふとやさしい気持ちで迎えた私は
飛びまわる彼を払いもせずにいた
するとそのうちに彼は私の二の腕に止まった
彼は便所蜂というより黒い虻だった
わたしの腕にじっと止まって息づいている彼を
静かに見ていると
友達のような気がしてきた
嫌悪すべき虫ではなくなっていた
彼が私への親しい訪問者であることに
はやっと気がついたのだ


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