こんな国に生まれて…日本狼…純粋バカ一代…山崎友二

こんな国に生まれて…日本狼…純粋バカ一代…山崎友二

「110番」


その会社は、50歳代の「お局様」が牛耳ってるようにも感じられた。よくあることだけど。
まるで、家庭で妻が夫をコントロールしてるように会社でも振舞っていたりする。
聞いたところでは、そのお局様は、子供が二人いて、離婚しているのだそうだ。子供は旦那さんが引き取っているらしい。
お局様の給料だが偉いさんと交渉して部長待遇らしい。
うらやましいとかねたましいと思う前に、憎たらしい。できれば潰したほうが会社のためになるような気がしていた。
ある日、お局様と安全部長が話していて、現場に配置する人の話のようだったが、
「あの人はだめよ。顔が悪いんだから」
とお局様は、でかい声で言っていた。
顔で決めるのか。しかも、お局様だが、総務の平社員が、なぜ社員の配置まで口を出して、動かそうとしているのか。

【2】
俺は遠くから「バーカ」と言ってやった。
「今言ったのは誰?」と蛇のような眼をして言った。
「俺だけど、それがどうしたの?」
「人のことをバカって言ったわね」
「ああ、言ったよ。馬鹿をバーカってね」
「人のことをバカなんて言っていいと思ってるの?」
「思ってるよ。間違ったことをしてないもん」
「ただで済むと思ってるんじゃないでしょうね」
「後からねちねちされるのはいやだから、今やりなよ」
「警察に訴えてやる」
「警察?警察入れるの」
「警察呼ぶわよ」
「それが、脅しで言ってるんじゃないんなら、俺が110番してやるよ」
机の上の電話で110番した。

【3】
お局様は慌てていた。
「ほんとに電話してるの?やめなさい」
「警察沙汰にしたかったんだろ?」
電話からは
「はい、警察です。どうしました?」
と聞こえている。
「どうしました?って聞いてるけど」
「電話を切りなさい!」
「切りなさい…か。命令口調なんだな」
と言いながらも、俺は受話器を置いた。
お局様は、はーはー言いながら
「ほんとに電話すると思わなかった」
「まだ、過去形じゃないよ」
「え?」
「110番して電話切っても、警察は逆探知して電話してくるよ。なにがあったんですか?ってね」
「…」
「警察に、ばかな人員配置見てもらおうか?」

【4】
電話が鳴った。
「きっと警察からだよ。俺が取ってもいいかな」
「待って!私がでる」
お局様は、慌てて受話器をとった。
「はい、〇〇建設です…ええ、ちょっと社内でいざこざがありまして…いえ、口論になっただけなんですけど…すみません、慌てて110番してしまって…はい、二度とこのようなことがないようにいたします。…すみませんでした」
受話器をおいて、おおきなため息をついた。
「対応がうまいね。さすが古株のお局様だね」
「二度とこんなことがないようにしましょうね。お互いにね」
「そうだね、お互いにね」
(終)


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