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第163回【参】代表質問 浜四津敏子議員



○議長(扇千景君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 国務大臣の演説に対する質疑を続けます。浜四津敏子君。
   〔浜四津敏子君登壇、拍手〕

○浜四津敏子君 私は、ただいま議題になりました小泉総理の所信表明演説に対し、公明党を代表し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
       (略)
 次に、がん対策についてお尋ねします。
 現在、我が国では、国民の皆様の二人に一人はがんにかかり、三人に一人はがんで亡くなられています。がんによる死亡率、罹患率はともに上昇を続けています。これに対し、欧米諸国では死亡率、罹患率ともに減少に転じております。どこに違いがあり、日本では何が問題なのでしょうか。
 日本では、患者さんの置かれている厳しい状況をがん難民と呼ぶ方までいます。こうした状況を生む原因として、関係者が指摘する主な点だけでも次の八点に上ります。
 一、どこに住んでいるか、どの病院に掛かるかによって受けられるがん治療の内容、レベルに大きな差異があること。すなわち地域間、病院間格差です。その結果、多くの患者さんがごく標準的ながん治療すら受けられないまま亡くなっておられます。
 二、海外で承認されている治療薬や遺伝子治療、免疫治療などの先進治療が日本では受けられないこと。
 三、がん治療の専門医師が不足していること。
 四、欧米では、外科医、内科医、麻酔科医、精神科医、看護師などがチームを組んでがん治療に当たっています。このチーム医療も日本ではほとんど行われていないため、患者さんにとって最適の治療を受けられる体制になっていないこと。
 五、患者さんが安心して相談できる窓口が不十分なこと。
 六、がん治療には何よりも早期発見、早期治療が不可欠ですが、検診体制が不十分で、受診率が日本では一〇%から二〇%と極めて低いこと。ちなみに欧米では八〇%、九〇%にも達しております。
 七、日本ではがん登録制度がないため、日本全体のがん罹患率、五年生存率などの正確なデータがありません。国として的確ながん対策に取り組むためには、がんに関する詳細なデータを整備する必要があります。
 八、終末期医療及び緩和ケアがいまだ十分でないこと。これには医学教育の在り方の見直しも必要です。
 アメリカでは約三十年前より国を挙げてがん対策に取り組み、現在では既にがん制圧に成功を収めていると言われています。我が国でも、まずはがん対策法(仮称)を制定し、予算を増額し、今挙げた八つの原因の解決に当たるなど、国を挙げて総合的ながん対策に早急に取り組むべきです。そして、だれもが、仮にがんになったとしても、いつでもどこでも的確で安心の治療が受けられる、がん治療先進国に日本をしていこうではありませんか。総理の御見解を伺います。
 次に、アスベスト問題について質問をいたします。
 アスベストは、火に強く、電気を絶縁し、摩耗に耐え、柔軟性、防音性などに優れ、長持ちするという特性があります。そのため、日本でも長年、理想的な建築材として、多くの住宅、ビル、工場を始め、学校、駅、体育施設などの公共施設においても、天井、壁、屋根などあらゆるところに広く使われてきています。また、電化製品を始めとする多くの家庭用品や車両にこれまで使われてきており、現在も使われているものが少なくありません。
 ところが、その後、アスベストは強い毒性があることが判明しました。アスベストを吸い込むと、二十年から四十年と言われる長い潜伏期間を経て、中皮腫と呼ばれるがんやアスベスト肺がんなどを発症すると言われています。今から三十年以上前の一九七二年にILO、国際労働機関及びWHO、世界保健機関がそれを指摘しました。しかし、その指摘にもかかわらず、我が国ではアスベストの深刻な毒性についての問題意識が非常に希薄でした。そのため、国の対策は余りに遅く、また不十分なものでした。その結果、アスベストは使われ続け、知らぬ間にアスベストを吸い込んだ方々が中皮腫や肺がんを発症する例が増え続けています。
 公明党は、この深刻な事態に真正面から取り組むため、本年七月にアスベスト対策本部を設置し、以来、メーカーからの聞き取り調査や全国各地の学校の調査、患者さんや御家族の方々からの被害状況の調査などを精力的に実施してきました。そして、その調査によって浮かび上がった問題点を取りまとめ、七月二十五日、総理並びに関係省庁に対し早急の対策を要請いたしました。
 政府は、この公明党の要請にこたえる形で、八月の関係閣僚会議で新法を制定する方針を決定しました。その内容として、現行の労災保険による補償の対象外となるアスベスト被害者やその遺族の救済を図るとされていますが、法案の主な内容と法案の提出時期について伺います。
 また、公明党は、政府新法の内容である被害者、遺族の救済に加え、建物を解体するときや増改築、災害のときにアスベストが飛散することを防止するための対策の徹底や、アスベストの使用全面禁止時期を前倒しすること、実態調査と国民の皆様への情報提供、アスベスト除去及び封じ込め対策、中皮腫やアスベスト肺がんの診断及び治療法の開発並びに健康被害の相談窓口の充実を始め、アスベストから国民の皆様の生命と健康を守る施策を盛り込んだ総合的な対策法の制定へ向けた作業を現在党内で行っています。
 今後、政府としてどのような対策を取られるのか、また、国民の皆様の不安の声をしっかりと受け止め、被害の拡大防止及び救済のためにどのような対策を取られるのか、総理にお尋ねします。
           (略)
 今後の総理の政治に懸ける姿勢、御決意を最後に伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 浜四津議員にお答えいたします。
         (略)
  がん対策については、我が国の死亡原因の第一位をがんが占めておりまして、国民の健康にとって重大な脅威となっております。がんの罹患率と死亡率の激減を目指していくことが極めて重要であると考えております。
 このため、関係省庁の連携の下に、一昨年七月に策定いたしました第三次対がん十か年総合戦略に基づき、全国どこでも質の高いがん医療を受けることができるよう、地域における拠点病院の整備や専門医の育成等に取り組むとともに、有効ながん検診の普及等のがんの早期発見、革新的な治療法の開発等の医療技術の開発振興など、患者・国民の視点に立った総合的ながん対策に取り組んでまいります。
 がん対策法の制定につきましては、将来的な検討課題と考えております。
 アスベスト問題につきましては、公明党の要請も踏まえ、既存の法律で救済できない被害者を救済するため、新法を次期通常国会に提出することとしております。
 この法案においては、アスベストによる健康被害者やその遺族のうち、労災補償を受けずに死亡した者や家族、周辺住民等既存の制度の対象にならない者を対象に、医療費や遺族一時金等を給付することなどの救済措置を講ずることを検討しております。
 政府のアスベスト問題への対策、今後の対策でございますが、関係閣僚会議を開催いたしまして、政府としては、関係省庁の緊密な連携の下に対応を進めていかなきゃならぬと思っております。
 救済のための新たな法的措置に加え、御指摘の建築物の解体時等の対策、早期のアスベスト全面禁止、使用実態についての調査や国民への情報提供、アスベスト除去、健康被害の相談窓口の充実等はいずれも重要な課題であると考えておりまして、関係省庁の緊密な連携の下に対応していかなきゃならぬと思っております。
 今後の私の姿勢、決意についてでございますが、この国民の大きな支持、信任を厳粛に受け止めまして、郵政民営化法案を始め、構造改革の実現に更に任期一杯精一杯の努力をしていきたいと思いますので、今後ともよろしく御協力、御支援のほどお願い申し上げます。(拍手)


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