蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「笑う蛙」



レンタルしたビデオの予告編で、この 「笑う蛙」 という映画のことを知った。
覗き穴から見る外の世界。屈折した感情が、絡まりあい・・・そんな場面があった。
「この映画見たい!」と思う。
レンタルビデオ店では、なかなか見つからなかったのだが、TVで放送するというのを発見し、録画する。

涼子は亡き父の別荘で一人、世間から隠れるようにして生活していた。
原因は夫の逸平にある。
逸平は銀行の支店長を“していた”
真面目だけがとりえだったのに、魔が差したのか、飲み屋の女と不倫関係になり、挙句の果てには銀行の金を横領して蒸発してしまったのだ。
涼子の父の三回忌に親戚を呼ぶことも出来ず、家族だけでつつましく済ませる。
別荘に戻ってきた涼子を待っていたのは、失踪中の夫逸平。
彼は涼子がココに住んでいるとは知らず、しばらく隠れていようとやってきたのだった。
かくまってくれと言う逸平に、涼子はある提案をした。
一週間かくまうかわりに離婚届に判を押してくれと言うのだ。
涼子には吉住という恋人がいた。

邦画は面白くないという先入観があった私。
ハリウッド作品もあまり好きではないのだが、あちらの方が資金が潤沢で楽しめる作品が多いと思っていた。
邦画は、「暗い」「地味」「わかりにくい」と思っていた。
それでも以前は 林海象監督 の作品が好きで、よく見ていた。
P・ルコント、J・アイボリー、侯孝賢などの監督達に心酔してからは、ほとんど邦画を見ることはなかった。

でもでもでも・・・。
この夏、是枝裕和監督の「誰も知らない」を見てから、彼の作品にほれ込み、とりあえず見ることができる彼の作品は全部見た。
それから、彼の門下生である西川美和監督の「蛇イチゴ」を見て、是枝作品同様に面白かったので、ますます邦画の魅力にとりつかれていった。

この「笑う蛙」は、ストーリーの面白さに加えて、俳優達の個性的な演技が最高だった。
長塚京三が中年男の悲哀を演じ、見ているものにある種の愛情を抱かせるし、妻役の大塚寧々もとらえどころのない涼子の雰囲気をよく表していた。
涼子が夫に、憎しみを抱いているのか、愛情を感じているのか、この部分をはっきりとわからせないところに、大塚寧々と平山秀幸監督の上手さがあると思った。
自分を裏切った夫を納戸にかくまい、引き戸の穴から自分と恋人の情事を覗き見させる、妻。
それを覗き、再び妻への欲情を抑えられなくなる夫。
なんとも不可思議な夫婦と言う生き物を、よく表現しているなと感心した。
長塚京三、大塚寧々のほか、國村隼、きたろう、雪村いづみ、ミッキー・カーチス、南果歩など個性派がずらり。
それぞれの立場を死守しようと頑張る姿が、滑稽でもあり哀しくもある。

エンディング曲は泉谷しげるの「春夏秋冬」、挿入歌は吉田兄弟の「津軽じょんから節掛け合い弾き」
吉田兄弟の曲はよかったが、エンディングはちょっとミスマッチだと感じた。
摩訶不思議なメロディだけの曲の方が良かったと思うのだが。

タイトルの「笑う蛙」
笑う蛙とは、一体なんぞや。(笑)




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