蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「屋根裏の散歩者」







昨年だったか、TVで放送していたのでビデオに録画していた。
なかなか見る時間がなく、細切れに時間を区切って見た。

乱歩の原作は読んでいないが、映画の 「屋根裏の散歩者」 のほうはとてもよかった。
役者がそろっている。
三上博史、嶋田久作、宮崎ますみ、六平直政など、ひとクセもふたクセもある人たちが出演。

1920年代の東京。
東栄館には、さまざまな人間が住んでいた。
郷田三郎もそのうちの一人で、生きることに興味がなく、ただ退屈な毎日をやり過ごしていた。
ある日彼は、自分の部屋の天井板がはずれることを、偶然発見する。
そこから屋根裏に忍び込み、節穴から住人達の姿を覗き見る。
節穴から垣間見る、それぞれの住人の姿に、郷田は興味をそそられるが、それもつかの間のこと。
すぐに飽き、今度は眠っている歯科医・遠藤の口にモルヒネをたらし殺害することを計画する。
ある夜、郷田は遠藤の部屋の上に忍び込み・・・・。

1920年代の東京の、少しけだるい雰囲気がよくでている。
特に東栄館という名の遊民宿(下宿のような所か?)と、そこに“巣食う”退廃的な住人達。
多数の男と情事を重ねる奈々子、狂ったようにバイオリンを弾く清楚な煕子、女を縄でしばり、その姿を絵に描く弁護士・越塚など一人一人が東栄館の鬱々とした雰囲気を作り出しているようだ。

この東栄館の1Fに住む明智小五郎が、今回の事件の謎解きをするのだが、オチがよかった。
正義を振りかざすでもなく、ただ、自分の興味の赴くままに何事件を解決する。
淡々とした受け答えをする探偵と犯人。

節穴から射して来るぼんやりとした光のように、見る者を幻想の世界へと誘う作品。
かなり気に入った。




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