蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「マイ・ブルーベリー・ナイツ」





大好きな映画監督の1人、ウォン・カーウァイの最新作 「マイ・ブルーベリー・ナイツ」 を見ました。
前作「2046」は、う~ん、まあまあかな~と思っていたのですが、今回の「マイ・ブルーベリー・ナイツ」は好きなタイプの作品でした。

ウォン・カーウァイ監督の作品は、
「いますぐ抱きしめたい」(1988)
「欲望の翼」(1990)
「恋する惑星」(1994)
「楽園の瑕」(1994)
「天使の涙」(1995)
「ブエノスアイレス」(1997)
「花様年華」(2000)
「2046」(2004)を見ました。
どれも好きな作品ですが、「どれを選ぶ?」と言われたら、「天使の涙」を選ぶかなぁ~?
う~ん、「2046」以外は甲乙つけがたいのですが。



ストーリー

エリザベスは恋人の心変わりで失恋した。NYの恋人の部屋の近くにあるカフェに毎晩寄っては、オーナーのジェレミーに、失恋の痛みを聞いてもらっていた。毎晩エリザベスのためにブルーベリーパイを取っておいてくれ、彼女の話を嫌な顔一つせずに聞いてくれるジェレミーの優しさに心が癒されようとしていたある日、エリザベスはNYから姿を消す。
失恋の痛みを乗り越えるため、旅に出たのだ。バーやカジノで働きながら、愛に傷ついた人々に出会うエリザベス。ジェレミーとの間をつなぐのは、ただ1つ。彼女が出す手紙だけ。ジェレミーはエリザベスを探そうと、手紙に書かれている町の店へと電話をするが、偽名を使って働いているエリザベスをつかまえることは出来ない。時間だけが過ぎていった。



久しぶりに「映画を見た!」という実感が持てました。100分という短い時間の中で、1年近くかかってゆっくりと次の恋を始めようとするエリザベスの心の成長が、見ている私にもよく理解でき、自分自身も彼女と一緒に失恋を乗り越えた気分。(笑)

翻って自分の今までの経験を思い起こし、彼女のように失恋をしっかりと受け止め、それをきちんと消化してきたかどうか、また失恋を自分の成長の糧にしてきたかどうか、検証しなおしてみました。・・・・自信ないなぁ。

エリザベスはとにかく逞しいです。しかもそれがイヤミではないんです。彼女が旅先で出会う人たちは、愛に傷ついた人ばかりなのですが、彼女は自分の価値観を押し付けず、黙って彼ら、彼女らに寄り添っています。きっとエリザベスもそれが最良の手段だと知っていたのでしょう。
束縛する夫から逃れようともがいていたスー・リンも、父親の庇護から飛び出したレスリーも、結局は失ってみてはじめて、自分が求めていたものを知るのです。彼女たちを見ていたエリザベスもきっと自分が求めていたものを理解したのでしょう。車を買うと、NYに戻ってきます。

旅に出る女。ひたすら待つ男。激しい求愛の言葉もなく、刺激的なシーンもありませんが、心にひたひたと寄せては返す、温かな波を感じる事が出来る映画です。そう、きっとまた新しい恋がしたくなるはず。

映像もスタイリッシュで、電車の映像が効果的に使われているし、1シーンが短めだったので、テンポがよく感じられました。映像のカットの仕方が独特で、ウォン・カーウァイらしいなと。

ただ1つ残念なのは、映画の広報で象徴的に使われているラストシーン。あのシーンは絶対に先に見ないほうがいい!空腹の時、食事の前に大盛りデザートを出された気分。甘酸っぱいブルーベリーパイは、作品を堪能した後でゆっくりといただきたいものです。



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