蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「博士の愛した数式」

書名:博士の愛した数式
著者名:小川洋子
出版社:新潮社

昨年、第55回 読売文学賞 小説賞を、今年、第1回 本屋大賞を受賞した作品。
小川洋子さんに出会ってから、彼女の作品を読み始めたのだが、どの作品もふわふわとした透明感を感じた。
今回の「博士の愛した数式」は、事故の後遺症により80分間しか記憶が残らない博士と、若い家政婦、そして彼女の息子、この3人による物語。
博士は古びた背広のあちこちに、忘れてはいけないことを書いたメモをクリップでとめている。
新しい家政婦としてやってきた主人公と、その息子の似顔絵を描いて背広にとめる博士。
80分間で記憶が更新するたびに、見知らぬ人となる家政婦の顔を確認しなければならないからだ。
そんな博士を理解しようとし、慈しむ家政婦とその息子。
3人のそんな日常が、淡々とそして少し哀しく過ぎていく。
博士は家政婦に、数式の美しさを話して聞かせる。
彼の話す数式の物語は、まるでレエス編みのように精巧に出現する。
離れに住んでいる博士と、母屋に住んでいる未亡人の義姉にも、何か秘密が存在するようである。

淡々と進む話は、阪神タイガースの試合を見に行った夜やルート(家政婦の息子)の誕生祝いの夜以外、盛り上がりを見せない。
それはそれでいいのだが、世間の評判の良さを聞いて、かなり期待をして読んでいただけに、ちょっとガッカリ。
ラストまでサクサクと読めた。かなり読みやすい。
読み終えて感動を得られなかった。
期待しすぎだったのか?


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