シャボン玉


密かに愛していた あの人の記憶とか

滲んで 消えた、

あぁ、シャボンのように。

綺麗だから 自分なりに守ってみたけど

石鹸の残香の中には もうあの人は見えない。



身体だけ。身体の記憶だけ

――鮮明。

だから

薬指の重なる日焼跡 、不特定多数の背中の爪痕 、赤く焦がされた吸跡

この肌に生かされ続けたアトが

様様な愛を思い出しては語り続けるけれど。



今日もあの少女はホームで誰かを待っているようで

頬を染めて立っていた。

そして

頬染めたあの少女のような恋を

私もまたしている。





© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: