生活日記

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スポ―ツ選手の特性


“儀式“を自粛の高見盛


バットを体の前で一周させながら上体を少しのけぞらせ、と同時に袖の右肩の部分を左手たくし上げる。野球のイチロ―選手がバッターボックスに立った時に必ず見せる、一連の動作である。

松井秀喜選手は、腰や肩をピクピクッと動かした後、肩の上にあごをのせるようにしている。
ホ―ムベ―スの角を、バットの先でポンポンと叩いていく選手もいる。

人それぞれに特徴があって、その様子を見るだけでもなかなか面白いものだ。
ではなぜ彼らはいつも同じ行動をとっているのだろう。

実は私も現役時代、出番が近ずいてトレ―ニングウエア―からレオダ―になる時には、下のウェア―の右足から脱ぐというふうに、脱ぎ方からたたみからいつも一緒だった。またフロア―に入る時にも決まって右足から。
これはジンクスの類(たぐい)ではなく、いつも同じ行動をとることで、自分なりのリズムを作り出していたのである。
 短時間に力を発揮しなければならない時は、いかに精神を安定させ集中力を増すことができるかが“鍵”だ。
その点、自分のリズムで出番に向かうことができれば自(おの)ずと精神は安定していく。
 どんな環境であっても、一定の行動をとることにより、そこに自分の世界を作っていくという、選手たちにとっては大切な儀式なのである。

大相撲前頭筆頭の高見盛は、仕切りの時に顔や胸をバシバシッと何度も叩くことで有名である。そんなに叩いたらいたいのではないかと心配にもなるが、これもただのパフォ―マンスではなく、自分の力を発揮する為の、必要不可欠な準備行動、儀式だと言えよう。

だが、九月場所の最中に、彼はこの儀式を自粛せざる得なくなった。
厳粛なる大相撲にとってはあまり好ましくない行動ということで「度を越してはいけない」と注意を受けたのである。
その翌日には随分遠慮がちに顔と胸を叩いていたが、再び「顔を叩くのはいかがなものか」と注意され、高見盛の動作は除じょに小さくなっていった。

九勝六敗と勝ち越し敢闘賞を受けたのだから、行動自粛が結果に響いたとは思えない。
だが取り組み前なんとなく居心地の悪そうな姿が見て取れ、可哀想な気がした。
自分のリズムを作りだす為に何でもやっていいとは言えない。しかし自分なりのリズムを作る方法を見つけた人が、その行動を封印しなければならないのはなんともつらいものである。
また、高見盛の行動は見ているほうも楽しく、ファンの人気も高かった。
本人も気持ち良く取り組みに臨め、ファンも熱く応援できる。
こんな一石二鳥な動作は、少しくらい大目に見て欲しい。

高見盛

スポ―ツライタ― 山崎浩子


河川敷暮らし





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