07年大学祭報告(2)

七月、イラブーを喰らう



 以前沖縄料理を紹介するテレビで「イラブー」なるウミヘビ料理を目にしました。さっそく旅の会のミーティングでその話を出してみると、「食べたことない」。これはもう、旅の会が動くしかない。かくして「旅の会、イラブーを喰らう」が動き始めたのです。

 そもそもイラブーって何だ?そこから調べてみました。和名はエラブウミヘビ、爬虫綱有鱗目ヘビ亜目コブラ科エラブウミヘビ属の生物です。ハブの数十倍の猛毒を持っていますが、性質がおとなしく、しかも口が小さいのでほとんど咬まれた記録はありません。卵は陸上に産みます。沖縄では久高島が産卵場所となっていて、「ニライカナイからの贈り物」とされているらしいです。捕獲する時期や人が決まっているそうです。イラブー料理は滋養強壮などに効きます。王国時代には、宮廷料理として珍重されていたみたいです。
 さっそく当日の報告をします。
 七月一日、二時集合。車、バイク、原付がそれぞれ好き勝手にコースを選んで目的地へ。約三十分後に再集合したのが「ローソン津花波店」(西原町)。えっ?旅の会が沖大から三十分そこそこの所で満足して良いのかって?「遠ければ旅だ」というのは違うねぇ、君。身近なところで再発見するというのも旅の醍醐味なのでありまーす。

 そこから、いよいよ夢にまで見たイラブーと対面するために食堂へ。今回は「琉球薬草本舗」にお世話になりました。ちなみにお店は西原中央公民館の近くです。
 さっそくメニューを注文。

「いらぶー汁2つ!」そう、今日は「イラブーを喰らう」なのだ。
つづいて「ダチョウ焼き肉定食!」まぁ珍しいからそれもアリか。
「そーめんちゃんぷるー!」?
つづいて「ソーキそば」!
「白身魚定食」・・・まぁ好きなもの食べたらいいんじゃないですか・・・

 結局、「いらぶー汁」(千百円)三つ、「いらぶー定食」(二千百円)一つが注文されました。かくして四人の勇者がイラブーと対決することとなったのです。

 待つこと二十分。「そーめんちゃんぷるー」と「ソーキそば」がはじめにやってきました。味の感想、省略します。そしてそれらが食べ終わった頃に、やっときました「イラブー」。いよいよ、本日のメーンイベントです。

 にこやかに女主人が次々と料理を運んできます。これがいらぶー定食、これはいらぶー定食?、これもいらぶー定食・・・。なぜか、四つともいらぶー定食でした。かくして勇者四人は、目の前に現れた「いらぶー定食」と立ち向かうはめになったのです。にこやかな女主人、注文受けが適当でした。恐るべし!

 せっかくですから「琉球薬草本舗」の調査結果を報告します。「だちょうのたまご」がドーンと置いてあったり、「いらぶーのとぐろ」なる怪しげな品物が売っていたり、「やしガニあります」みたいな紙が張ってあったり。なかなか突っ込みどころ満載でした。

 定食の中で一際目立って鎮座するイラブー。厳しい戦いが予想されます。まずスープを一口。おぉぉ、カツオの風味がめちゃ濃い。メチャメチャ濃いんだ、これが。でも脂っぽいわけでもないので飲みやすいかな。あのグロい黒い皮さえ目に入らなければ。もちろん下調べの段階で「黒い皮」については知っていたので、心の準備はできていました。ただ、スープが進むにつれて、下のほうにも、そのまた下の方にも、あの「黒い皮」が存分に入っていることが分かると、それなりに自分自身の「折れかかる心」に出会います。

 いらぶー以外にソーキも入っています。その脂身の部分が「俺は脂身。文句あっか」という感じのいかにもという見た目なので、いらぶーよりもなによりもそれに昇天してしまう向きもあるかもしれません。野菜も入っています。なぜかレタス。スープにレタスってちょっと珍しい気がします。でもなぜか合っていたような・・・。「この野菜が一番うまい」と言ってるメンバーもいました。

 女主人曰く、「小骨が多いので注意してください」とのことでしたが、「小骨」といっても、サンマの中骨みたいな可愛いものを想像してはいけません。飲み込めば、しっかり喉に突き刺さって苦しむことうけあいの、バリ・ハードな小骨です。カルシウムのかたまりです。小骨以外にも、ヘビの身体の中央を通っているせき髄と思われる骨もあるし、アゴの骨みたいなものも、しっかり入っていました。

 とにかく全部硬いので、はっきりいって食べずらいです。それでも四人の勇者は「折れかかる心」とじっと向き合いながら、「黒い皮」をペロっと食べては、小骨を吐き出し、ついに完食したのでした。

 かくして旅の会は、「イラブー」を制覇しました。


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