早朝、
携帯の電波が外なら通ったので
JJに電話してみる。
国際電話なら、もしかして。
何度も何度も電話をする。
つながれ、
つながれ、
つながった。
「もしもし?もしもし?ヨーコ大丈夫なの?」
彼は本当に心配して、こっちに来る準備をしていた。
登山用のサバイバルキットを用意して、
日本人の友達と連絡を取って。
「怪我したんじゃないの?俺、行くからね!福島から行くからね!」
福島原発がとっても気になるので、お願いだから来ないでと言う。
「俺いろいろ準備したから、欲しいものは?何が欲しいの?
俺、赤十字にもアプライしたからね。愛してるよ。サランヘ。
サバイブしてね。本当にサランヘ。」
私は何もいらないよ。ホワイトデーのプレゼントが欲しいな。
「俺、本当は準備したんだよ。あるんだよ。」
プレゼント待ってるから。大丈夫。私は大丈夫だよ。
声から、彼の心配が伝わる。どんな映像が韓国には流れているのだろうか。
かろうじて倒れていない自動販売機から、缶コーヒーをかって
手術室に戻ると看護師から言われた。
「電気が通ったか見てきて欲しい。ベッドが足りないの。通っていたら帰ってほしい。」
必要な物品もあるし、看護師に任せて家に帰った。
・・・やっぱり通っていない。足りない医療物資を持ち帰る。
幼馴染ヘルパーの実家では自家発電でお風呂を近所にふるまっていた。
幼馴染ヘルパーちゃんは、お父さんの会社まで朝の5時から水を汲んでいるそうだ。
「ヨーコちゃんも入って行きなさい!」と言われたけれど
アパートに行って着替えたかったから、遠慮すると
袋におにぎり、サンドイッチ、バナナ、リンゴを入れて持たせてくれた。
ありがとう。
アパートまでの道のりはつい昨日までとなんだか違った。
車が、なんだか怖い。
譲ってくれる人もいるけれど、
飛び出してくる。割り込んでくる。
自転車が歩道をはみ出して、道路を走っている。(これが正しいんだけど)
銀行、ドラッグストア、ガソリンスタンドと給水所の学校。
駅までのすごい行列。
みんな、ストレスなのだろうか。
近所のカレー屋のインド人が並んで買った袋を持って歩いていた。
「Are you Okey?」と聞くと
「Okey!Thank you!ダイジョウブー!!」と言われた。
うちの職場の中国人留学生はどうしたかな。
リビア人留学生は、逃げるところはあるのだろうか。
彼は日本語が分からず、赤ちゃんは先月生まれたばかり。
心配だ。
病院に戻るときのこが母と話してくれていた。
看護師さんからはすぐにどうだった?と聞かれた。
電気も水もガスも、まだです。
ママは「浣腸したいから、下剤を薬と一緒に入れてほしい」と言う。
でもやってくれるかどうかわからない。
ちょっと図々しくならなきゃ駄目だよね。
ナースコールがないので、ICUにいる看護師さんに声をかけないといけない。
でもちょっと図々しくなって看護師さんに申し送りしてもらった。
幼馴染ヘルパーちゃんと連絡を取り、家に帰った後の話をした。
部屋を仕切って、エアコンにすれば電気が回復したら大丈夫かも・・
ベッドキャスターないけど。
明日掃除をしてくれるそう。彼女はすごい。本当にすごいわ。
夜にまた、面会が1人までで10分と書かれているにも関わらず
夜勤を辞めちゃった学生がYくんと大将、卒業予定の学生がYちゃん来てくれた。
騒ぎすぎて隣に怒られてしまった・・・(笑
Yくんと大将はバイト中に地震がきて、Yちゃんは11階にいたそうだ。
Yちゃんだけ髪の毛が分裂していなかったので聞いてみると、
Yちゃんとこは水が出て、みそぎして髪を洗ったらしい。
母も笑顔が戻る。
みんながおにぎりと水とソイジョイをくれた。
そして、リポビタンDと新グロモントも。
・・・みんな私が何で起動されてると思ってるんだ。
今日の担当看護師からはお湯はもらえなかった。
ゆっくりにして、母が体調を崩さないように。
お隣の話だと、給水所で水がもらえず喧嘩が起きているらしい。
ガソリン、灯油でも喧嘩。
こんなことで医療物資は大丈夫なのだろうか。
ママの清拭したいな・・
ラジオのニュースは原発ばかりで、怖くなってきた。
待合室でちらっと見たテレビは日本の報道ではないようだった。
ましてや、自分の家の近くで起きていることとは思えなかった。
今日は母の顔を見ながら椅子に寝る。
空調が入って、寒くてお腹を壊した。
トイレも流すことができなかった。
神様ごめん。ウォシュレットを使わせてください。
何度も起きた。でも、カナダ行きの飛行機よりまし。
ここは暖かく避難所よりは、はるかにいい生活をさせてもらえている。
きっと試されているんだ。
これから、どれだけ他人に優しくできるかを。

うちから持ってきた物品と、今日の寝どこ。