ホット・コーナー



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 ちょっとだけ、イベントに足を運んだ。
 ただこっそりと見ていただけだったのだが、それで良かった。我がチームの『ホット・コーナー』は十二分に機能していたのだから。

 危惧していたのは一点。人様からアイテムを預かるということ。その点に際してどれだけ慎重になれるかということ。
 一言内緒を入れたが、返ってきたのは「拒否しています」とのメッセージ。だがそれでいい。やるからには、真剣に。ドライになって「頑張って」の小さい囁きの言葉をさえぎってでも、きちんと預かるべきを預かり、報告すべきを報告する…それでいい。
 私では怖くて出来ないであろうことを、見事にやってのけていたことに見とれていた。
 周囲を楽しませる…という言い方は傲慢に過ぎるし、あくまでもそれは努力目標にしか過ぎない。本来の目的は「普段と違う価値観」を見出すこと。狩りやレベルやよりよい装備…当然あれば嬉しいし、イベントなんかに参加するよりも、狩りをすればその時間は多く手に入る。
 そうではない「何か」をお互いに求めるからこそ「企画して遊ぶ」「参加して遊ぶ」というイベントに需要が求められるのだろう。その価値を十二分に知り、それを企画し「共に」分かち合う仲間とモチベーションを高めあうことの出来るプレイヤー。
 旗の上の「三角」こそ、彼の「ホット・コーナー」であろう。

 それぞれのプレイヤーには、そのプレイヤーが最も輝く「コーナー」がある。そして、そのコーナーにそれぞれのプレイヤーを配することが、ささやかでそして密かな「ギルドマスター」の楽しみでもある。
 知人友人を見渡して「ドリームギルド」を作ったと考えてみるといい。あくまでも空想内の遊びだが、誰をマスターにして、その補佐役を誰にして…そして、ご意見番や突っ込み担当、冷静に事務を担当し、仲間のレベルの底上げを考える…。
 そう考えると、私は数々の知人の能力に比べ、引けを取ることが多々ある。一兵卒でも足並みを乱すだろうなぁ…と、思うことばかり。最重要な地位である「ギルドマスター」こそは、そのチームの要ともなるべき「ホット・コーナー」である。そこに誰を据えるかで、どういう雰囲気になるか…は想像がつくだろう。

 私は、イベントの流れを追いかけながら、安堵する。
 徐々に「ホット・コーナー」へ誘導し、そしてその「ホット・コーナー」へのコンバートを進めていたことに、間違いが無かったことに安心をする。

 中村俊介はトップ下にいなくてはいけないし、長嶋茂雄はサードでなくてはいけない。
 これらの場所に様々な異論はあれども、これらのプレイヤーはその「ホット・コーナー」にいることで、その存在感を鮮やかに自ら演出することが出来るのだから。

 入団した当時の彼はひ弱で危うい印象があった。迂闊であったと思われる部分や、軽いなと思う部分をたしなめたりしたこともあった。
 だが、バザーでの動きと…その後の第一回とりぬごでの動き。
 これを見た時点で「ホット・コーナー」は彼だと私は思い定めていた。あとは、急なコンバートを敢行せずに、周囲に「ホット・コーナー」を守るべき素質があることを周知するだけが私の仕事でもあったわけだ。

 結局、その二点は今後の原点となって、今も規則や規約としてではなく、意識として「なんとなく」残っている。

「ホット・コーナー」は誰にでも務まるものではない。そして、それを補佐するものも、誰でも良いというわけではない。

『いや、冗談で引き受けたんだけどね』
 と軽口を叩くことで、周囲を和らげつつも、真剣になるときは口調を改める。あえて、「ホット・コーナー」を守るべくどっしり構えること。それらしく振舞えばそれが冗談のようにも思え、周囲の空気を和らげることも知っている。
 いずれにせよ「なんとなく」を作り得ること。それができる稀有なプレイヤーであること自体も「ホット・コーナー」にいるにふさわしい。

 『ホット・コーナー』を背負うものは、ほかにもいくつかの条件がある。
 レベルの高さは必ずしも必要ではない。それよりも、様々なものに対する変化を怖がってはいけないこと。レベルが上がることによる変化や、武器防具の変革に柔軟についていけるセンス。
 派閥内のボスでなければいけない。
 イエスマンであってはいけない。
 優男でいい人であるよりも、むしろ特徴的で変な奴であったほうがいい。
 シールドマスタリーに振ってはいけない。
 エンジョイ・スピリッツを密かに内に秘めるのではなく、常に外に放射しなくてはいけない。
 装備の着こなしは、キザではなくても気を配ってなくてはいけない。例えば、修理に行くのはいいが、こまめに修理に行くようではダメだ。
 マークが出た時点で金額を見ないでカンカンと叩いて平然とするくらいでちょうどいい。
 背中を預けられると思わせなくてはダメだ。そして、誰かに背中を預けることが出来なくてはダメだ。
 例えば、シャスタの下で死にそうな際には、必ずヒールが飛んでくるようで初めて一人前だろう。

「自分が楽しいから両手剣も振り回すし、杖だって振り回す」

 そう、実力は華麗とは言いかねる。
 動きは大きくダイナミックだが、正確ではない。しかし、そんなことは重要じゃない。彼が彼の信じるプレイをしていること。本人が自己陶酔して流れるように氷からシャスタへつなげること。
 一つ、二つ…しんどい集団を相手にして倒してみたとしよう。ちょっと面倒なイベントを片付けたとしてみようじゃないか。
 実に嬉しそうな笑顔を見せることだろう。
 途端に元気になることだろう。
 とんでもないお調子者だ。

 だけど、そういうプレイヤーが「大バーゲン」の「ホット・コーナー」を守っていること。そうでなくてはいけないし、彼がめきめき調子を上げてきて今回成功した理由も、そこにあるのではないかと私は思っているのである。

 『ホット・コーナー=ギルドマスター』に彼がいる。それを見るだけで充分。

 お疲れ様。
 そして、成功おめでとう。

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某山際氏の文章は絶対に真似できないと痛感。
パクリというか、そのまんま盗用になってしまいましたよママン。

まぁ、持ち上げすぎだろうけど、下げるよりよかべぇ。
そして、ホット・コーナーを守るだけではチームは成立しないこと。
その他のメンバー各位、協力してくださった各位があってこそ…。

「ホット・コーナー」はその位置を保ちえる。
そのことにも改めて考えさせられたと同時に、やっぱすごいですよ、みなさん。


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