INFINITE　SKY

第3話

～第3話～
「男の頼み」

今日は土曜日
入学して初めての、休日
赤奈は家で、髪を染めていた。

プルルルルルルルル

電話だ。
誰からは、もうわかっている
もう、今日で3回目だからだ。

ピピッ！ピピッ！

次はメールだ。
誰からは、むかつくほどわかっている。

プルルルルルル・・・・
ガチャ

「殺すぞチビィィィィィィ！！！」
赤奈が電話越しに叫んできたのを
照は前読みして、受話器を耳から
はなしていた。

「いつになったら、来るんだよっ！」
照も負けずと叫ぶ。

実は、金曜日の放課後
赤奈は照と遊ぶ約束をしていたのだ。
まぁ、一方的に照からの約束なのだが・・・

「今から行くよ！チビちゃん！」
赤奈は、そう言って電話を切った。
携帯と財布を持って赤奈は家を出た。

20分後・・・

照は、待ち合わせ場所の学校近くの広い公園の
ベンチで座って待っていた。

「おい！チビっ！」
聞き覚えのない声にびっくりする照。
後ろから呼ばれたので
反射的に振り向く。

見たことのない人だ・・・

赤奈と同じくらいの身長（１８３ｃｍ）
肩もガッチリしていて
明らかに、照より年上だ・・・

照が名前を尋ねようとする前に
男がしゃべり始めた。

「お前、昨日茶髪の男とキャッチボールしてた奴だな？」
太く低い声。
「えっ・・・はい。」
グラウンドに誰かがいたとは
思ってなかった。
入学して1週間は部活はないし、勝手にグラウンドを使ったのだ。

照が名前を尋ねようとしたが
またしても、男の声にさえぎられた。

「あの、茶髪はどうした？一緒じゃないのか？」
男は、ベンチに座り込んだ。

照は、男から離れて座りなおす。
「えっと・・・もうすぐ来ると思うんですけど・・・」

ちょうど言い終えたときに、公園の入り口のほうに
バイクが止まった。

赤奈だ・・・

しかし、照は誰か解らなかった。
照は、今日の朝に髪を染めていると電話で聞いたのだが
予想外だ・・・

「金髪・・・って・・・」
照は近くに歩いてくる赤奈を見て
初めて、赤奈と気づいたのだ。

赤奈は、茶髪と金髪が混ざったような髪をしていた。
目立ちすぎている。

「あいつか・・・？」
男が照に尋ねると、答えを聞くまでも
なく立ち上がり、赤奈のほうに歩いていった。

間違いなく喧嘩が始まる・・・

照の、第6感がはたらいた
しかし、遅かった。
照が止めようとしたときには
赤奈は、すでにつかかっていた。

「なんだ、おい？」
赤奈は、見知らぬはずの男を睨んでいる。

「お前、野球するのか？」

拍子抜けの言葉に、赤奈と照の緊張はほぐれた。
「はぁ？野球？」
赤奈も、緊張していたらしく
つぃ、顔がにやけてしまった。
「あんた、誰だよ？」
照が後ろから、男を見上げるようにして聞く。

「俺か？俺は、雲丘高校野球部でピッチャーしてる。」
自身あり気に、答えた。
顔には、満面の笑みが
「2年5組の香川だ！」

「先輩ってことか・・・」
赤奈は、先輩と自分で確かめた男を無視して
ベンチに座り込んだ。
「で、何の用っすか？」

このガキ・・・・・
喧嘩売ってるのか？

香川は、溢れてくる怒りを抑えて
頭を下げた。

「頼む！野球部に入ってくれ！」
低く太い声が、2人の耳に入ってくる。

「おいおい、おっさん！男が簡単に頭なんて下げんなよ」
笑いながら、赤奈も負けずに太い声を出した。

「やめろょ！赤奈ちゃん！」
照が、赤奈の声をさえぎった。

「ど、どういう事っすか・・・？」
照が怖がりながらも香川に聞く。
赤奈も、まだ頭を下げている香川を不安に思ってきた。

「頼む！野球部に入ってくれないと・・・」
香川は頭を上げた。
「野球部は今年で廃部になる。」

照は驚きのあまり、ベンチから立ち上がった。
その、照に驚いた赤奈も立ち上がる。

香川が2人に説明をはじめた・・・

「野球ってのは、最低でも9人いるだろ？」
照がうなずくが、赤奈は無反応だった。
「頼む！野球部を救ってくれ・・・」

「意味わかんね～よっ！」
赤奈が笑いだした。
「バカっ！俺は野球部はいるぞ！」
照が赤奈を睨みつけて言う。

「勝手にしろよ！」
赤奈は、もともと野球に興味はない。

「赤奈ちゃんも入るってさ！」
照が勝手に話を進めている。

「誰が入るかっ！」
赤奈が照の話を止めた。

「勝手にしろって言ったじゃないか！」
真剣な顔で赤奈を見る。

（意味が違うわ、アホ！）
そう、言おうと思ったが
赤奈がしゃべろうと思った瞬間に
赤奈の気持ちが変わる一言が、照の口から出た。

「甲子園に出たら、モテるよ・・・」
照は、小さな声で赤奈につぶやく。
もちろん、照は本心で言ったわけじゃない。
でも、この発言が今後の赤奈の高校生活を
大きく変えたことになった・・・

「本当だな・・・？」
赤奈が真剣な顔で、照に聞く。

「えっ、本当だよ！」
照は、笑ってしまいそうなのを
我慢して、負けずに真剣な顔で赤奈を見る。

「じゃあ、入る！」
赤奈が、香川の胸を軽くたたく。
「入部決定だ！」

「本当か？」
もう泣きそうな顔で、香川は2人を抱きしめようとしたが
照は、こんなに大きな物に抱きしめられると命が危ないので
即座に走って逃げた。

赤奈は、こんな奴に抱かれてたまるかっ！
と、言って照のあとを追うようにして走った！

「待てよ！」
それを、追うようにして香川が追いかける。

こうして、初めての休日は終わった。

ジャンル別一覧