何をしているんだろう

お母さんシリーズ1


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 とても田舎に住むお母さんたち。
 毎日の家事・育児はたまた「家業」や「稼業」に精を出す彼女たち。
 昼間は普通にお母さん。そして毎晩、夜更けに始まるのは、今様IT井
 戸端会議。十数名で構成しているMLを使い、いつも「何をしようか」
 と夢を語り合う。今夜もきっと賑わうだろう。

 ● 劇に字幕をつける。難聴児のお母さん奮闘記。

 2002年春、このとても田舎に住むお母さんたちのグループで、ある企
 画が持ち上がった。地人会という劇団の台本朗読劇「この子たちの夏」
 を自分たちで演じたい、というものだ。言い出したのは、絵本の読み
 聞かせをライフワークにしているお母さんTさん。

 メンバーの一人Hさんは、難聴児で6年生の息子さんがいる。彼女は
 「視点はいつも、我が子のためのバリアフリーに置くの」と豪語する。
 「でもねそのために、主たるものが損なわれてはいけないの」を付け
 加えるのも忘れない。字幕つきのポケモンの映画を観に行き、周りの
 健聴児にとって、字幕で見えない部分ができることに、申し訳ないと、
 思うのだそうだ。

 この朗読劇に、かの息子さんが出演することとなり、彼女の思いは沸
 き立つ。朗読劇に字幕をつけたい。元入力オペレーターだった彼女は、
 2時間の台本を1日で入力し、公開方法を試みた。OHPや、学芸会よろ
 しく台詞を書いた大きな紙をめくっていく・・・でも、どれも舞台演
 出、特に照明の邪魔になる。そこで探したプロジェクターでの投影。
 黒い画面に白抜きの文字。これなら、落とした照明の時も目立たない。
 しかし、パソコンとプロジェクターの相性から、動作不具合のまま本
 番を迎えることとなった。

 なんと彼女は、MLで自分の思いをとうとうと語り、メンバーの友人・
 知人も総動員し「PC・VIDEO OVERLAY」というパソコン+TV&ビデオ
 の合成ができる機械を発見。これは、GENLOCK(ゲンロック)回路と
 呼ばれる、NTSC信号とRGB信号の同期を取る回路を使う。聞けば、TV
 局なみの技術がコンパクトに数万円で買える機械なのだ。レントゲン
 写真に患者情報などを載せ、同時に現像させるソフトを開発中のSEか
 ら借り受けたという。「私ね、字幕が付けたいって言っただけなの」
 聞いたSEの想像力か?

 かくして、バームクーヘン状の360度平舞台。わが息子の立ち位置か
 ら、一番よく見える場所に、スクリーン(シーツを縫ったもの)を設
 置。傍に「耳の不自由な方の優先席」を設けたのは言うまでも無い。

 今、Hさんは「仮面ライダー龍騎」に字幕をつける作業に没頭してい
 る。ビデオを流しながら、その音声の速度に合わせブラインドタッチ
 でカナ入力できる彼女は、専業農家のお嫁さんでもある。「今、ブロ
 ッコリの苗付け時期で、ちっとも進まないの」。
 ・・・・・・ここは田舎である。



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