旅の途中、寄り道の日々

旅の途中、寄り道の日々

主人公



無断転記禁止です。

では『主人公』始まります。



虫の声も聞こえない冬

俺は暗い部屋で静かにドラマを見ている。

主人公はどこにでも居る男という設定だ。

どこにでも居る、そう、決してすごい能力を持つわけでもなく。

どこにでも居るような人間だ。

ある程度の大学を出て。そこそこの会社に就職し。そこそこの給料を貰う。

どこにでも居る男の代名詞のような男だ。

俺だってそのどこにでも居るような男の一人だ。

ある程度の大学を出て、そこそこの会社に就職し。そこそこの給料を貰って生きている。

彼女だっている。可愛いかといわれれば、まぁ、普通と答えるだろう。

俺だって目の前のブラウン管の中にいるありふれた男の一人なのだ。

俺みたいなありふれた奴等が何人も居る。

偶然、何も起こらないだけなのだ。

逆にブラウン管の向こうで演じられてる男は不幸か幸か主人公になってしまったのだ。

つまらない。実につまらない。

何も起こらない人生。

この先も会社に行き、働いて、結婚して、子供が出来て・・・

人並みに幸せになって、人並みに死んでいくのだろう。

これが幸せだというのなら俺は世界一の幸せ者なのだろう。

ただ、何か起こることを望む俺には非常につまらないのである。

毎日、ただ毎日を平和に過ごす。

それが出来ない人にとってはこの不幸はわからないだろう。

毎朝起きて、夜になって寝るまでに何も起きないという物足りなさ。

あの画面の中の男にはいろいろなことが起きているのに。

ベットの下に転がっている本の中の男にだっていろいろなことが起きているのに。

俺には何も起こらない、ただ、何の意味も無く生きている。

物語の主人公になりたい。

ただ、その思いだけを胸に抱いて生きている。

暗闇の中、一人で考え事をする。

俺はテレビを消して眠ることにする。

せめて夢の中では主人公であることを願って。


                 終




あとがき^^;

いつものようにオチが思いついて書いたのですが・・・

結局オチは使いませんでしたw

だからいつもよりかなり短めかな?

まぁ、短編だし。

本を読まない人にも読める親切設計ってことでw

ここまで読んでくれた人に感謝です(‐人‐)


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