トカトントン 2.1

トカトントン 2.1

2005/11/15
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カテゴリ: 読書
yoshioka

俳優・吉岡秀隆、映画出演50本記念特集
吉岡秀隆 ロングインタビュー

<俳優・吉岡秀隆を語る>
山田洋次、杉田成道、野上照代、小泉堯史、佐々部清、永瀬正敏、中江功、山崎貴
<対談>倍賞千恵子×吉岡秀隆/吉岡秀隆の魅力/映画・テレビ・音楽 作品データ

■表紙の吉岡君の佇まいに、なんか心惹かれてつい手に取ってしまった。映画出演50本。そうか、そんなに出ていたんだ。巻頭を飾る彼の何枚かの写真を見て、素敵な顔になったな、なんて感慨ひとしお。

■「北の国から」で彼を最初に見たのは81年、今から24年前のことだ。こまっしゃくれた、ひ弱な東京っ子が電気も水道もない北海道の過疎の村に連れてこられて、半べそをかいていた。その舌っ足らずなナレーションが今でも頭の中にある。思うに、全国の視聴者が黒板さんちの純君の事をまるで親戚の誰かの息子であるかのように、2002年までずっと見ていたんだろうな、なんて思う。

■たとえば、皇室の誰かさんのように、この国の国民はみんな、吉岡君のことを黒板純君として知っている。しかし、あの物語の彼はちっとも聖人君子なんかではなくて、女の子を妊娠させるは、借金を踏み倒すは、ちょっと主人公としてどうかと思うくらい、無器用でなさけない。それでもみんな彼を見放さないし、きっとどこかで私も同じ目にあったという気分を共有している。



■そして「秘密」「時代」「遺言」あたりでの、宮沢りえや内田有紀とのエピソードは彼の純役者としての完成形を感じさせる演技だったように思う。結局最後まで優しい顔だった、でも内面はかなり屈折していたはずだし、打ちのめされていたはずだ。それが窺い知れるという意味で素晴らしかったと思う。

■思うに吉岡君は純であることの窮屈さとずっと戦っていたんだろうな。いくらプライベートで非・純をそして不純を晒してみたところで、彼について回る純のイメージにとらわれ続けていたんだろうな。でも後年はそんな一切合切を引き受けてしまえるくらい成長した役者としての彼が見てとれる。絶対にそれはかけがえのないものだから。

■ひとつの生き方のサンプルとして、この吉岡君と正反対の道を辿ったのが正吉君役の中澤佳仁君だ。純の幼なじみで、田舎の暴れん坊。自衛隊をでて、また純のそばで生活を始め、捨てられた男の子が腹の中にいることを承知で蛍にプロポーズした好青年だ。私は「時代」のあの正吉君のシーンにはいつも泣いてしまう。その中澤君はサラリーマンとして職を持ち、役者業は二の次だ。締めくくりの「遺言」にさえ、出演しない。そんな生き方もある。

■さて、吉岡君であるが、この人巨匠から随分と重用されている。倉本組から始まって、山田洋次、あの黒澤明、みんな吉岡君が好きだ。彼のどこにそんな魅力があるんだろう。この雑誌の特集にあるように映画出演は50本を超えたという。そういえば、ここのところの露出率のなんと高いことか。「半落ち」「隠し剣、鬼の爪」「四日間の奇跡」「3丁目の夕日」そして「博士の愛した数式」。

■とりわけ、 「博士の愛した数式」 でルート先生を演じる彼の表情がものすごく良い。初々しさはそのままで、それでも何か秘めているような顔がとても素敵だ。まず小川洋子の原作を読まなくちゃな。で、この映画で子役を演じる斉藤隆成君のプロフィールと写真を見て、どこかで見たことがある顔だと思ったら81年の吉岡君そのものだった。時の流れは速い、時間が止まっているような部屋でそんなことを考えた。





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Last updated  2005/11/15 08:39:10 PM
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Comments

ミリオン@ Re:「北の国から」を友達にすすめてみる(01/02) こんばんは。 嬉しいです。頑張って下さい…
Dehe@ Re[1]:カルトQ 2005 北の国から(10/18) adventさんへ ご指摘の通りです。例によ…
advent@ Re:カルトQ 2005 北の国から(10/18) 五郎が読んだ大江健三郎> 開口健ではなく…
しょうゆ@ Re:家庭教師 / 岡村靖幸(09/09) …最後まで岡村靖幸はわからなかったのでは…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
Dehe @ Re[1]:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) Mr.Zokuさんへ 情報ありがとうございまし…

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