トカトントン 2.1

トカトントン 2.1

2006/05/14
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カテゴリ: 映画
kamehaya

■はやらない温水洋一の店で永久パーマをあてられた彼女の髪はまるで昔のカルロス・サンタナのように見えた。ラテンの血なんか流れていないくせにそんな髪型にしてもなんか風景にとけ込んじゃうように見えるのは彼女の普通さ具合とロケ地として使われた三浦半島の畑あり港ありの無国籍風の風景のせいかもしれない。

■どんな映画かと訊かれればオダジョーと麻生久美子のいない「時効警察」だと思って間違いない。脚本と監督は三木聡。上野をリクルートする先輩スパイ夫婦に岩松了とふせえり。意外に出ずっぱりのこのふたりの登場する全てのシチュエーションに例のユルーい笑いがついてまわる。私はイギリス人ではないけれど、日曜の昼下がりにメガネをはずして見るには最適の映画かもしれない。

■スパイになるためにはごくごく平凡に生活しなければならないわけで、たとえファミレスに行ったとしてもウエイトレスに何を注文したのか、後で思い出させるような物を選択してはならない。だから劇中岩松夫婦が頼んだメニューをもう私は覚えていないし、初心者上野がラザニアを注文してしまった事はよく覚えている。ラーメン屋に化けたスパイ松重豊(いい役者です)もわざとほどほどの味のラーメンしか作らない。間違っても行列ができるような店になってはならないのだ。

■あらすじは上野樹里を最後まで見せるための方便に過ぎず、とりわけ言いたかったことや残したかったテーマがあるような作品ではない。だからどこから見ても笑えるわけだが、意外に途中から見ると、話がわからなくなるような展開性も持っていることに気づく。不思議な映画だな。

■上野の友人役は蒼井優。この人はコメディであろうがシリアスであろうが常にいつもの蒼井優のままだ。彼女が作品に合わすのではなく作品が彼女に合わす、もうすでにそんな風格を備えている。素晴らしい。

■父親役の岡本信人が良い。どうも「渡る世間」のイメージが強い人なんだけど、それとは全く関係ないこういう役柄をやると、すごく印象に残る。そういえば「ふぞろいの林檎たちパート2」で彼がやったいやらしい工場長も懐かしいな。

■亀は意外と速く泳ぐ、広辞苑にはそんな言い回しは登場しないが、要するに日常には見落としがちな軽い驚きや発見が溢れているのだと言うことですかね。ストローの先をライターで溶かしてアイスコーヒーを吸えば肝臓ができるとか、かりんとうを水に浸しておくと何やら不穏な物体になるとか、裏”科学と学習”みたいな小ネタの数々に吹き出しっぱなし。結局つまらないものというのはかなりおもしろいということなんだね。





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Last updated  2006/05/14 06:09:04 PM
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ミリオン@ Re:「北の国から」を友達にすすめてみる(01/02) こんばんは。 嬉しいです。頑張って下さい…
Dehe@ Re[1]:カルトQ 2005 北の国から(10/18) adventさんへ ご指摘の通りです。例によ…
advent@ Re:カルトQ 2005 北の国から(10/18) 五郎が読んだ大江健三郎> 開口健ではなく…
しょうゆ@ Re:家庭教師 / 岡村靖幸(09/09) …最後まで岡村靖幸はわからなかったのでは…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
Dehe @ Re[1]:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) Mr.Zokuさんへ 情報ありがとうございまし…

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