トカトントン 2.1

トカトントン 2.1

2006/08/12
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カテゴリ: 映画
kutyuteien

■空中庭園というと突然上空に現れた庭のことを思い浮かべる。イメージとしては綺麗なんだけれど、現実味がなくてひどく人工的な感じがする。花は咲いているんだけど、肥料の匂いはしない。水なんかあげたら途端に崩れていってしまいそう、だってそれはただの書き割りに過ぎないのだから。

■小泉今日子が描いたそんな理想の家族は何の秘密ももたず、笑顔の絶えない団欒を義務づけられる。食事時の雑談においてもタブーはなく、鈴木杏は自分が野猿(のざる)という名のラブホで生を受けた事を聞き出し、はしゃぎながらも、実はショックをうけている。

少しくらい秘密にしてもらいたいことだってあると思うよ。

■夫も長女も長男も家庭では与えられた役割をそつなくこなしているのだが、実際は家族に内緒でたくさんの裏切りをしている。「岸辺のアルバム」で家族ひとりひとりの秘密を暴露して一回家族を粉々に崩壊させ、再生してみせた国広富之はこの映画には出てこない。

■人は泣きながら血まみれになって産まれてくる。何やら象徴的な言葉だが、そこで泣いている赤ん坊は悲しいとか悔しいという感情を持っているわけではなく、血まみれで産まれる事は哺乳類の宿命である。終盤小泉が血の雨の降る中で咆哮するシーンは彼女自身のカタルシスに過ぎず、見るものにとっては、目を背けたくなるような気持ちも強い。

そうだよ、何でも見せてくれればいいってものでもないと思うよ。

■彼女が自分の庭で脱皮していた同じ時間に、夫と長女と長男は偶然同じバスに乗り合わせる。それぞれがそれぞれの秘め事をし終えた後でね。そして示し合わせたわけでもないのに3人とも同じ目的のために買ってきたものがある。そんなバラバラの3人は同じ家をめざす。その日は母親の誕生日だった。「おかえり」、産まれたばかりの小泉今日子はドアを開けた。

■「青い春」がものすごく刺激的だったのでこの監督の作品ということで期待していた。ここでも独特の映像美は健在でますます好きな監督となった。らしい映像は数々あるが、それがドラッグのせいであるとは思わない。もしそうなら、P・グリーナウェイも寺山修司も常習者に違いないということになってしまうじゃないか。ともあれ、復帰後の活躍を期待したい。



■ラブホのカラオケに中村一義があるとは知らなかった。それとも野猿にしかないのかなぁ。





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Last updated  2006/08/12 09:30:55 PM
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Dehe@ Re[1]:カルトQ 2005 北の国から(10/18) adventさんへ ご指摘の通りです。例によ…
advent@ Re:カルトQ 2005 北の国から(10/18) 五郎が読んだ大江健三郎> 開口健ではなく…
しょうゆ@ Re:家庭教師 / 岡村靖幸(09/09) …最後まで岡村靖幸はわからなかったのでは…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
Dehe @ Re[1]:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) Mr.Zokuさんへ 情報ありがとうございまし…
Mr.Zoku@ Re:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) 今年出た[Deluxe Edition]は聴かれました…

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