トカトントン 2.1

トカトントン 2.1

2007/07/01
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カテゴリ: テレビ番組
■NHK教育テレビ「トップランナー」を見る。今回のゲストは脚本家の渡辺あやさん。対談中、島根県という言葉が何回出てきただろうか。別にそこは田舎の代名詞でもないだろうに、本上さんも山本君もヒトが悪いんじゃないか。

■で、彼女はその島根県でお子さんをふたり育てながら、執筆活動をしているということ。最初は岩井俊二監督のHPでの脚本募集に出品し、プロデューサーに注目されたのがこの仕事に入ったきっかけらしい。

■単独脚本としては「ジョゼと虎と魚たち」「メゾン・ド・ヒミコ」、そして新作「天然コケッコー」の3本。新作はもちろん未見だが、「ジョゼ」と「ヒミコ」はどちらも近年の日本映画の秀作の誉れ高い作品。

■プロットよりも人物に重点を置くという書き方をすると仰っていたが、登場人物がひとりでに動き出す瞬間を捕らえるという手法はよく耳にするものの、私の頭の中で考えるA君なり、Bさんの行動や思考の流れも所詮わたしが考えだしたものに過ぎない、とわたしは考えるわけです。彼女のように私とわたしの細分化がきっちりと把握できる思考回路を持つにはどのような鍛錬が必要なのでしょうか。妄想癖という言葉を何回も使っていらしたが、幼少の頃から人間観察を研ぎ澄ませていなくては、なかなかすぐに体得できる技術ではないと思いますね。

■「ジョゼ」と「ヒミコ」の好きなシーンはという質問に答えて、前者では妻夫木君と池脇さんが川沿いの道を車椅子で疾走するシーン、後者では横浜のダンスホールの群舞シーンを挙げられていたが、どちらも脚本的にはセリフのないシークエンスに過ぎない。たしかに自分の考えた言葉が発せられる場面で脚本家は冷静にその作品を鑑賞する気分にならないという気持ちはわかる。ただ両者ともその人物像の明晰さなしでは成立しない重要なシークエンスとしてその場面は成り立っていたわけで、それは犬童監督という奇才の為せる業というだけでなく、脚本としてその人物が活き活きと描けていたということに他ならないと思う。

■一部紹介された「天然コケッコー」は彼女の住む島根で撮影がほとんど行われたと聞く。そこにある自然や子供たちの表情がこの作品の大きな部分を占める。監督は「リンダリンダリンダ」の山下敦弘。くるりの「言葉は△ 心は□」は名曲である。はたしてそれが流れるタイミングでわたしたちは「ジョゼ」の時と同じようにスクリーンの前で固まってしまうのか、それとも幸福な気持ちでいっぱいになってしまうのか、その仕上がりが楽しみである。

■彼女の目標はいつの日か自分の脚本を自分の演出で映画にしたいということだという。すでに撮り終えた短編「懲戒免職」のオダジョーの不良美術教師はひと目見ただけで持って行かれそうなオーラが溢れていた。彼女自身の脚本のストックはかなりの数あるらしい。それが実現するのもそんなに先のことではないだろう。西川美和といい、渡辺あやといい、女性クリエイターが邦画を引っぱっていると言っても過言ではないと思う。

関連日記  「ジョゼと虎と魚たち」 「メゾン・ド・ヒミコ」





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Last updated  2007/07/01 08:47:47 PM
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Dehe@ Re[1]:カルトQ 2005 北の国から(10/18) adventさんへ ご指摘の通りです。例によ…
advent@ Re:カルトQ 2005 北の国から(10/18) 五郎が読んだ大江健三郎> 開口健ではなく…
しょうゆ@ Re:家庭教師 / 岡村靖幸(09/09) …最後まで岡村靖幸はわからなかったのでは…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
Dehe @ Re[1]:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) Mr.Zokuさんへ 情報ありがとうございまし…
Mr.Zoku@ Re:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) 今年出た[Deluxe Edition]は聴かれました…

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