Jun 6, 2007
カテゴリ： 日記・エッセイ
「何作ってるの？」
「ん？びんせん」
手を止めずに友達は答えた。
友達の左側を見ると、A5くらいの紙が山積になっている。
「もしかして・・・これ、全部びんせんにするの？」
「うん。もったいないから」
「もったいないって・・・」
「仕事先でね、クリアポケットの中の紙が大量に余っちゃってさ。メモ用紙は沢山あるし、捨てるのももったいないから、もらってきちゃった」
「ん～～、文通友達でも探そうと思う」
・・・あきれた。
ちょっと変わった子だとは思っていたけど。“何かに使う”から作るんじゃなくて、“細かい事がしたい”から作ってる。おかげで８畳１間のアパートは、友達の作品でいつも一杯だ。プレゼントとか、買わなくていいのは助かるけど。
夕飯の用意をしようと思い、ふと思い出した。
「今日さ、バスであったおばさんにブックカバーあげちゃった」
「え？どれ？」
「テッセンの花模様のヤツ。沢山あるからいいでしょ？」
「・・・喜んでた？おばさん」
「喜んでたよ」
友達は初めて私の方を見た。
「そう。良かった～～～！」
『私ね、人を幸せにしてあげたいんだよね。恐れ多いけど』
３年前、高校の校舎の屋上で友達は言った。
『今私が幸せなのは、周りの人が私を幸せにしてくれてるからじゃん？だから、これからは恩返しがしたいんだ』
『だからって・・・進路希望に“人を幸せにする仕事がしたい”って書くか、フツー。具体的に何がしたいのよ』
『ん～～、わかんない』
『やりたい事するしかないよねぇ』
友達は照れくさそうに笑っていた。
「人を幸せにする、かあ・・・」
ジャガイモの皮をむきながらつぶやいた。友達はスタンプに夢中だ。
考えれば、あのおばさん、あのブックカバーを手にして“幸せ”なのかな・・・。
そーいや、おばさん、うちのばーちゃんとそんなに歳変わんなかったな、若く見えたけど。
ばーちゃん、どーしてるんだろう・・・。
ぼーっととりとめなく考えながら、無意識に声を出していた。
「ねえ」
「なあに？」
「そのびんせん、何枚かくれる？久し振りに、ばーちゃんに手紙書くからあ」
「いいよお」
嬉しそうな友達の声が返って来た。
ばーちゃん、手紙喜んでくれるかな？それにしても、何て書こう？
考えてたら、指先を切ってしまった。
＊今回もLa FERICAさんのスタンプを使っています＊
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