妖精のいたずら

妖精のいたずら

つれづれ草・・・第一章・・・


             「出会い」


 「ふーっ」 大きなため息を吐き出してみた。
特に意味はない。 いや 意味はある。 それはあの日が始まりだったような気がする。 
そう、友人から誘われていきつけのスナックへ出かけた時だった。
友人の名は辻本薫 (取引会社のまた下請けの小さな会社の一応社長様だ。 年は離れているがなぜか気が合うのでこうして時々飲みに行く。)
カウンターに越しかけ私の知らない誰かと親しそうに話しこんでいる。   「また、ちょっかい出しているのか? 懲りない奴だ」そんな言葉を飲み込みながら友人の隣にかける。
 ふと、彼女と目が合った。 何だろう?寂しげな目ではない。かといって、困っている目でもない。

 視線にきずいたのか辻本が振り返り体に似合わない太い声で(女の子ですといっても通るくらい華奢なんだが)「おー来たか!遅い・遅い」こいつのいつもの癖「遅い・遅い」が出た。
 この言葉が出るときはよほど機嫌のいいときに限られる。見るとかなりご機嫌になっているようだ。 
「さあ飲め!まずは乾杯といこう!」
よほど機嫌がいいのかさっさとグラスにビールを注ぎだす。
「よし、乾杯・乾杯!」勝手にグラスうを当ててさっさと飲んでしまう。
苦笑いしながら私も飲み出していく。
「いやー今日はいい日になったぞ片岡!」
意味もわからず見つめていると堂本が「彼女『小野幸子さん』さっチャンだ!今度俺たちと一緒に働いてくれることになった。 よろしくな!」
「小野幸子ですよろしくお願いします」はっきりした声で挨拶が来た。
「俺、片岡秀之ですよろしく」グラスを持ち上げて俺はそう答えた。
そのまま俺は堂本に向かって「景気がいいじゃないかまた人を入れるなんて、よほど儲かっているのか?」 「ばかいうな。おまえんとこから仕事をもらわなきゃやっていけない事位判っているくせに!  この人は俺の友人の 奥さんだった人だ。 事情があって働いてもらうことになったんだ」
こいつにしては珍しく難しい顔をしてつぶやいた。
 「すいません。ご迷惑をおかけします。」横から彼女が頭を下げている。
 「すまん・すまん 気にしないでください。 悪いのはあんたじゃないですから、みんなあいつのせいなんだから」そう言って俺にらみながら、グラスを空にした。
 何か込み入った事情があるのだろう。 気にはなったがあえて聞かないことにして酒を飲むことにした。
 堂本も、そんな俺だから今夜合わせてもよいと判断して誘ってくれたのだろう。
 少し重い空気になりかけたときカウンターからママの声がかかった。
「秀ちゃんおひさ~! 随分来なかったじゃない? また別の店の女の子と遊んでたんでしょ? この遊び人!」  
「やっぱりそうか!最近誘っても来ないからおかしいと思っていたんだ」 堂本が同調して真っ赤な顔を俺におし付けてきた。
「違う・違う仕事で飛びまわっていたんだから 薫 お前だって知ってるくせに・・・」
「知らん。 俺のところに仕事が回ってこないから・・。」 
「なに? あんなに回したのにまだ不満か?」
「少ない! もっとよこせ!」
「なんだ~~? まだ少ないだと?」
「そうだ、ママと温泉行く約束をしている。その金がまだ貯まらんもっと仕事よこせ!」
「温泉? いつ約束したんだお前」
「カオちゃんだめよ! 内緒でしょ!」なぜか顔を赤くしてママが口を挟んできた。
 「はは~~ん そういうことか。最近やたらと仕事・仕事と騒いでいるは」二人の顔を見比べながらニヤニヤしてやった。
 年甲斐もなく二人とも照れていやがる。
「ふふふふ・・」突然彼女が笑い出してみんながびっくりしたように彼女を見た。
きずいた彼女はあわてて「ごめんなさい」ペロッと舌を出して頭を下げてる。

 空気が和んだ・・・・

それからはもうお決まりのように「カラオケするぞ!」「酒がないぞ!」
「遅い・遅い!」「へたくそ!」「仕事よこせ!」「おんせんだーー!」

 いい気持ちになって家に帰った時には彼女のことは忘れていた。


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: