☆さくらの日記☆

プチ家出事件


結婚してまだ2ヶ月も経たない頃、「プチ家出事件」が起こった。

今思い返せばあの時期の私は精神的におかしかった。
好きな人とはいえ初めて他人と暮らすというストレスとか、会社を辞めて生活が変わったことによるストレスとか抱えてたんじゃないだろうか?
だから、ちょっとした事でも気にかかりマイナスな方向に考えてしまう、そんな時期だったように思う。

結婚して約2ヶ月目。私は実家から持ってきた荷物を整理してた。
ひこさまが独身時代に購入して一人で暮らしてたマンションに私が入ったので、部屋中ひこさまのモノでいっぱい。それも片付けてた。
そしたら、おそらく昔の彼女のモノであろう化粧品やら小物が出てきた。
「フツーこういうモンは結婚する前に整理するなり捨てるでしょ?!それがルールなんじゃないの?!」
もともとは嫉妬深い私。
自分と付き合う前の過去の女のモノなんだから気にすることない、過去に嫉妬してもしょうがない。
なんだけど・・・その時精神的におかしかった私は「ブチっ!!」っときてしまった。
早速ひこさまに怒りのメールを送った。
「今夜は早く帰るからゆっくり話そう。」そう返事が来た。
だけど私はなぜだか結婚したことまでが嫌になり、逃げ出したくなってひこさまが帰ってくる前に荷物をまとめて家を出た。

「気晴らしに小旅行でもしよう。」と思ったけど、もう新幹線にも乗れない時間。
「仕方ないから今夜は車の中で寝て、明朝出発しよう。」そう決めた。
とりあえず今夜を過ごすために、コンビニで雑誌やら食料を買った。
でも行くトコもないので、マンションの近くの駐車場に車を止め、そこで一晩を過ごすことにした。

車を止めた頃、ひこさまからメールがきた。
「今帰ってきたんだけど、どこにいるの?」
「2,3日帰らない。帰りたくない。」
「・・・わかった。でも一人じゃ危ないから、必ずどこかのホテルで泊まるんだぞ。心配だから、どこに泊まるか決めたらまたメールしてこいよ。」
想像した以上にものわかりがいい人だ。
ホントは探し回って欲しいのに・・・。

怒りがおさまらないので、思いのたけをぶちまけるために夢中でひこさまへのメールを打っていた。
・・・ふと、前方に人の気配を感じた。
顔を上げると、少し離れた所に男が立っている。
顔はよく見えないけど、黒い帽子に黒いシャツ、
下は・・・穿いてないっっ?!
ズボンを穿いてない上に男の手が自分の下半身を触ってる!!
「変質者だ!!変態だ!!!どうしよう?!逃げなきゃっっ~~!!」
人間って極度に焦るとワケのわからない行動をとるようで、車を発進させようと思ってるのに、焦るあまりに右手側にある車のキーを左手で回そうとするし、左手側にあるレバーを右手で動かそうとしてしまい、思うように動けない!
泣きべそをかきながら焦りながらなんとか車を急発進させてその場から逃げた。

もう私は超パニック状態。
急いでひこさまに電話した。
ひこさまが出たけど、今度は大泣きして錯乱状態になり言葉がしゃべれない。ようやく発した言葉が「ハダカの人がぁぁ~~!!(大泣き)」だった。
やっと自分の居場所を話せるようになり、急いでひこさまが来てくれた。
ひこさまの顔を見てまた号泣。
興奮で体が震えるし泣きじゃくるし、で落ち着くまでに1時間近くかかった。

その後、車中でひこさまとじっくり話した。自分自身が納得できるまでじっくり話した。
結局その晩はひこさまと一緒にマンションに帰った。
「ほんまにアホやなぁ~。オレの帰りを待たずに家出したりするからこんな目にあうんやで。」
「・・・ハイ。」
もとはと言えば原因はひこさまにあったはずなのに、あまりの衝撃的な出来事にすっかりシュンとなった私は小さくそう答えるだけだった。

意気がって家を出たものの、家出後数時間で戻ってくることになり、しかもその数時間の間に変質者に遭遇するというオチをつけて、私の「プチ家出事件」は終わった。

この事件は今となっては笑い話だけど、変質者に遭遇したあの衝撃はまだ忘れられず、今でも夜一人で外に出るのは怖い。
どうしても一人で出ないと行けないときは、不審者がいないか周囲を見回し小走りあるいはダッシュしている。
そして年に数回発生する「今夜はひこさまの顔を見たくない!」って思う日も、絶対に外には出ず、家の中でひたすら耐えている。
比較的治安の良い日本でもやっぱり夜間の女性の一人行動は危険なんだね。

もう家出はコリゴリだ。


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