『硫黄島からの手紙』


1944年6月。
アメリカ留学の経験を持ち、
米軍の軍事力も知り尽くしている陸軍中将・栗林が
硫黄島に降り立ちました。
指揮官に着任した彼は、
本土防衛の最期の砦である硫黄島を死守すべく
島中にトンネルを張り巡らせ、地下要塞を築き上げます。
そんな栗林に、日々に嫌気がさしていた西郷ら部下達は
希望を見出だすのですが・・
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硫黄島二部作の第二弾。
舞台は同じく日本の最南端にほど近い
東京都(なんですねぇ)小笠原村硫黄島。
この島は山手線一周ほどもないそうです。
そんな小さな島で、あんな激戦が
繰り広げられていたなんて・・
しかも36日間。
最期は水も食料も弾も尽き果て、本当に悲惨です。

日本側からの視点で描かれていますが
栗林中将や元オリンピック選手のバロン西など
アメリカ人に親しみを持っている人物も登場します。
米兵を殺しながら、一方では助け傷の手当てをする。
この矛盾さ。
戦争の虚しさというのがひしひしと伝わってきました。

そしておいらの隣りに座ってた見知らぬ女子高校正が
始終目を覆っていた“玉砕”シーン。
衝撃でした。
いわゆる自決(自殺)ですが、
当時の『捕虜になるくらいなら、あるいは
持ち場を守り切れなかった責任から
自ら潔く死を選ぶ』という
美学?がまかり通ってた時代。
でもあんな手榴弾を自ら胸に抱えて破裂する姿を見て
誰が美しいと思う?
『自殺の強要』という理不尽さに甘んずるほかなかったのか。
上司の勝手な考えから自決に追い込まれた兵士達は
無駄死以外の何者でもありません。
目に涙をいっぱい浮かべながら震えながら
自決した兵士の顔が脳裏から離れません。

そんな中、この作品の中で
最後まで生きる事に執着した西郷がいることで
救われた気がしました。
すべての兵士の命を尊重しようとした栗林司令官も
我々から見れば、数少ない“まとも”な人間です。

ともすれば忘れてしまいそうになりますが、
これはアメリカ映画なのです。
でも日本人の視点でした。
日本兵の内輪の争いもアメリカ兵の残忍さも
ちゃんと描かれています。

作り物の映画にはわんわん泣かされるおいらですが、
第一弾の『父親たちの星条旗』に続き
こちらも全く泣きませんでした。
それだけリアルだったのだと思います。

二部作に共通して感じるのは
“愛する人や家族のいる同じ人間”
だということです。

そんな彼らのささやかな日常を奪った戦争。
戦争は無意味。

語り手が少ない分『父親たちの・・』と比べ
その後の話などがなくこちらはほとんどが戦場シーンで
血なまぐさい感じかもしれません。

でも彼らの犠牲の上に今の我々の平和がある
と強く感じることが出来ました。

嫌な事だけど、そうすると無意味ではなかったのかなぁ・・。

戦争に関する可否の答えは
いつまでも誰にも出せないものだと思います。

辛いシーンもありますが観る価値のある作品だと思いました。






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