南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し

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∬9月―頭の痛い季節(1)月謝高騰


《9月―頭の痛い季節》 ~2003年9月の記録

 ∬第1話 月謝高騰

いつものように上の娘を音楽教室に送り、月謝の支払いを申し出ると、経理担当が「月謝が上がっているのはご存知ですか?」と私に聞いた。
寝耳に水とはこのこと。
にわかに混乱をきたした私の頭は、今聞いたばかりの数字が一瞬理解できず、高いのか順当なのか、それさえすぐには見当がつかなかった。

旧料金体系では、テオリー(音楽理論。現在クラスはソルフェージ(音階教育)中心に進行中)のグループ・レッスンが時間当たり15ミリオン、プラティック(ピアノの個人レッスン)が30ミリオン。
週1時間ずつ月に4週間、合計8時間受けると、月額は180ミリオン。5週間ある月には225ミリオンとなる。
それさえも、子供の習い事としては十分高いと感じていたのだが・・・。

それでは、校長からお話をどうぞ、と言われ、校長の部屋に通された。
新しい男性校長は、慇懃な微笑みを浮かべながら、私を招き入れた後、テキパキと新料金体系について説明しだした。
「ひと月の月謝はスタンダードとして300ミリオン。これは4週間を想定しています。5週目についてはもちろん、追加でいただくことになります」
「ということは、時間当たりいくらになるわけでしょう?」
「プラティックが50ミリオン、テオリーが25ミリオン。週に各1時間ずつで月に8時間、合計300ミリオンです。5週目については75ミリオン追加です」

頭の中で素早く計算すると、なんと70%近くも値上がりになっている。
「70%も上がるというのは、過ぎるんじゃありませんか?」
「いいえ。本来は6月にも値上げするところを、旧い料金でいただいていたのです。実は国民教育省(=文部省)からは、3ヶ月に一度、25%の値上げをしてもいいという通達が来ているのです」
「25%?最近トルコのインフレは落ち着いてきているはずでは・・?」
「25%ですよ。6月に本来はそれぞれ40ミリオンと20ミリオンに上げるはずでしたから、9月で50ミリオンと25ミリオンに上がるのは理屈に合いますよ」

校長の話はもっともらしく取り繕ってあったが、いかにも胡散くさい臭いがプンプンしていた。大体25%なんて、どこから出てきた数字なのか・・・。
この校長(=重役)がやってきて以来、経営を見直している様子は素人目にも伺えた。
つい先日も、アンタルヤの中心地区をはさみ、現在の教室とは反対側に当たる高級住宅地に第2教室を開設し、招待状をばら撒いて派手にオープニングを祝ったと聞いた。
さては、大幅な出費の穴を埋めるために、この暴挙に踏み切ったか・・・。

考え込む私を見て、尻込みしていると見たのか、校長の声には一層力がこもってきた。
「バレエも一緒に習えば、10%の割引がありますよ。バレエは160ミリオン。合わせて460ミリオンのところ、420ミリオンに致します」
「それに、9ヶ月の年間プログラムに申し込めば、割引のアドバンテージがありますよ。もし3ヵ月後にまた値上げをすることになっても、このプログラムでは月当たり300ミリオンのままです。また5週目のある月にも300ミリオンのままで計算してありますから、39週掛けることの・・・・」

アドバンテージを強調する校長の話は滑稽にさえ聞こえた。
頭には来たが、これ以上この教室に執着する理由は見つからなさそうだった。
「夫にまず相談してから、判断いたします」
それだけ言って、さっさと部屋を出た。
教室に迎えにやってきた夫に値上げの話をすると、夫は一も二もなく、「高すぎる。そんなところ、もう通わせない」と即断した。
夏休みの間もテオリーのレッスンだけはと、積極的に通い続けた娘には可哀想だが、他の教室や先生を探してやればいいだけのこと。

しかし、この教室を通りがかりに偶然見つけ、家から近いこともあって、比較検討もせずに娘を通わせ始めた私たちには、そこ以外にどんな学校や教室があるのか、その時点では皆目検討がついていなかった。

(*当時、10ミリオン=約800~850円)

 つづく

∬第2話 学校探し




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