~通過点~   

~通過点~   

動揺 そして決意




壁に向かって何かを話している。
あたかも、そこに誰かがいるかのように。
そして真顔で「その人が・・・」と私たちに説明するのだ。

夜中になると「火事だ」と慌てて逃げようとする。

故郷の話をする。
でもそれは「今」のことではなく、父の中ではまだ自分は結婚をしてなくて
子供もいないと言う。

・・・
そんなこんなのつじつまの合わない会話の連続。
どう考えても「普通」ではない。

母は動揺した。
もちろん、私たち姉妹だって。

でも現実を受け止めなくては。
動揺してもどうにもならない。
近くにいる母や姉よりも少し離れている私が冷静にならなくては。
そう思った。

なんで早く気づかなかったんだろう。
どうして?なんで?
つい考えてしまう。
でも後ろに振り返ってばかりいられない。
「今」
「これから」を考えなければ。

私にできることはなんだろう。
「介護」って何?
「介護保険」って?
わからないことばかりだ。

母や姉にできないこと。
私に出来ることを考えよう。

そう思ってヘルパーの実習を受けることにした私なのです。


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