でたし~! の はっぴー・マラソン・パラダイス                        旧『わたしのマラソンブログ』

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アスリートにおけるプロテイン摂取の重要性



「プロテイン(タンパク質)」という言葉は、ギリシャ語で「第 1の」「もっとも重要なもの」などを意味する「プロテイオス(proteios)」という言葉が語源です。この語源はふさわしいといえます。というのも主要栄養素をバランスよく摂るには、まずタンパク質の摂取量を決めることから始めるからです。

スポーツの歴史の中で、タンパク質の扱いは時代によって大きく変遷してきました。ギリシャ・ローマ時代の競技者は、動物が持つ筋力、スピード、持久力を手に入れるには、その肉を食べればよいと信じていました。ですから、ライオンの肉は特に人気がありました。1800年代でも、タンパク質は運動に最適なエネルギー源と見なされ、アスリートは並外れた量の肉を摂取しました。20世紀前半、脂質と糖質が体を動かすためのエネルギーの大半を作り出すことが科学によって明らかになりました。1960年代にはこの新たな知識を反映し、アスリートの食事も変わり始めました。1970年代、80年代においても、タンパク質はスポーツの世界であまり注目を浴びませんでした。しかし 20世紀末になって、この忘れ去られた栄養素であるタンパク質についての研究が増えたことで、また風潮が変わり始めました。

■メダリストとそれ以外の人の食事の差、「タンパク質の摂取量」

タンパク質は、私たちの健康と、アスリートのパフォーマンスの面で、重要な役割を果たします。タンパク質は、損傷した筋肉を回復させ、免疫系を維持し、ホルモンや酵素を生成し、筋肉に酸素を運ぶ赤血球を交換するために不可欠です。さらに、タンパク質は長時間または高強度の練習やレースに必要なエネルギーのうち、最大 10%を生み出します。脂肪をエネルギーとして効率よく消費するのに役立つホルモン、「グルカゴン」の分泌も促します。

タンパク質はアスリートにとって重要な栄養素であり、レース結果を左右することもあります。ネブラスカ州オマハの国際スポーツ栄養センター(International Center for Sports Nutrition)が実施した、オリンピック選手を対象にした研究では、メダルを獲得した人と獲得しなかった人の食事の内容に有意な差が 1つ見つかりました。メダルを獲得した人は、獲得しなかった人よりもタンパク質の摂取量が多かったのです。

パフォーマンスが食事性のタンパク質に左右されるのは、体に必要なタンパク質を、すべて体内で作り出せないからです。また、糖質や脂質と違い、タンパク質は体内の燃料貯蔵庫に蓄えることができないので、後で使うためにとっておくことができません。摂取したタンパク質はすぐに消費され、摂り過ぎた分は糖質や脂質に変換されて蓄積されます。

■「必須」アミノ酸を摂取する必要性:ツール・ド・フランス出場チームの事例

食事性タンパク質は 20種類のアミノ酸で構成されます。これらのアミノ酸は、損傷した細胞を交換する際の基礎的な成分として使われます。これらのアミノ酸の大半は、必要になると体内ですぐに生成されますが、体内で生成できないアミノ酸が 9つあります。タンパク質が関連する体の機能を正常に保つには、これら「必須」アミノ酸を食事から摂るしかありません。タンパク質が不足した食事だと、必要なアミノ酸をもっとも必要とする場所に届けるために、筋肉組織内のアミノ酸が使われ、結果として筋肉量が減少します。これを実証したのが、1988年、ツール・ド・フランスに出場したセブンイレブン・サイクリングチームを対象にした研究です。3週間の大会期間中、選手のふともも周りが細くなったことがわかりました。チーム・ドクターは選手の食事を調べ、タンパク質不足が原因だと指摘しました。

■持久系スポーツのアスリートにこそ、タンパク質は重要

タンパク質は、アメリカン・フットボール、野球、バスケットボールのようなパワー系のスポーツよりも、持久系スポーツのアスリートにとって重要な栄養素といえます。約 1時間、高い強度で運動をするクリテリウムでは、最大30gのタンパク質が失われます。これは 3オンス(約 84g)のツナ缶に含まれるタンパク質の量とほぼ同じです。体力の回復と体力の向上のためには、この損失分を補うことが欠かせません。補充しなければ、自分の筋肉のタンパク質を使わなければならなくなります。

■タンパク質の推奨摂取量は?

残念ながら、持久系のアスリートに推奨されるタンパク質の摂取量は、栄養学で見解が一致していません。米国の 1日あたりのタンパク質推奨摂取量(RDA)は、体重 1ポンドにつき 0.013オンス(体重 1kgにつき約0.8g)ですが、アスリートには少な過ぎると思われます。タンパク質の研究で有名な、ケント州立大学のピーター・レモンは、アスリートであれば、毎日 1ポンドあたり 0.020~ 0.022オンス(体重 1kgにつき約 1.2~1.4g)のタンパク質を摂取すべきと提唱しています。レモンは、12章で紹介した最大筋力期(MS)で行うような厳しいウェイト・トレーニング期間では、1ポンドあたり最大 0.028オンス(体重 1kgにつき約 1.8g)を推奨しています。米国栄養士会では、毎日 1ポンドあたり 0.032オンス(体重 1kgにつき約 2.0g)もの多量のタンパク質を摂取するようすすめています。世界中のスポーツ科学者を対象にした調査によれば、持久系のアスリートに推奨される 1日のタンパク質摂取量は 1ポンドあたり 0.020~ 0.040オンス(体重 1kgにつき約 1.2~2.5g)と、かなり広範囲であることがわかりました。これらの推奨摂取量を150ポンド(約 68kg)のアスリートに当てはめてみると、米国の RDAを除き、その範囲は 1日 3~ 6オンス(約 84~168g)になります。

タンパク質には植物性と動物性がありますが、どちらから摂取するにしても、食事の内容に気を配らなければ、必要量を摂取するのは簡単ではありません。植物性の食物からタンパク質を 127g摂取するには、スパゲッティ 17カップ(1カップは約 237ml=大さじ 12杯)、ヨーグルト 14カップ、またはベーグル 21個を食べなければなりません。同じ 127gのタンパク質は、鶏肉か脂肪分の少ない肉 15オンス(約 420g)もしくは 17オンス(約 470g)のツナから摂取できます。どちらもかなりの量ですが、動物性タンパク質の方には植物性にないメリットがあります。必要なアミノ酸が適切な割合で含まれているうえに、鉄、亜鉛、カルシウム、ビタミン B12が吸収しやすい形で存在し、また植物性に比べ繊維質が少ないので吸収しやすいのです。

■タンパクが不足するとどうなるのか?

では、ハードなトレーニングをしている期間にタンパク質の摂取が不十分だと、どうなるのでしょうか?たまにタンパク質が不足する程度であればパフォーマンスに大きく影響することはありませんが、質の高いタンパク質を欠く状態が続いたまま高強度の練習をしていると、トレーニングやレースに深刻な影響を及ぼしかねません。タンパク質は、激しい運動時のエネルギー源の一部であると同時に、筋肉を作り、基礎代謝率を調整するホルモンを生成し、病気を予防する役割も果たしている、重要な栄養素なのです。

長時間、高強度の運動をしていると、体は体内のタンパク質を消費し始め、その結果として筋肉が減少します。1992年に実施された、16名のハイカーを対象とした実験では、アンデス山脈を 1日 5時間、平均 2,500フィート(約762m)上るのを 21日間続けたところ、被験者の筋肉量が劇的に減少しました。これは、持久系のアスリートが、タンパク質不足のままで数週間の厳しいトレーニングを行うと、やつれたように見える理由を説明しています。

肉を十分に摂らないと、鉄分が不足するリスクも高まります。ある研究では、ランナーの鉄分不足と怪我との関連が示されました。この研究では、十分に鉄分を摂取している人に比べ、鉄分不足の人が怪我をする割合は 2倍であることがわかりました。赤身の肉は、タンパク質の他にも、吸収率の高い鉄分を多く含んでいます。

■タンパク質不足のサイン

あなたは、タンパク質を十分に摂っているでしょうか。体と心の状態を観察することも、タンパク質の摂取量の確認方法になります。タンパク質不足のサインには、次のようなものがあります。
•頻繁に風邪を引く、喉が痛くなる。
•練習後の回復に時間がかかる。
•イライラしがちである。
•トレーニング効果が出ない(調子が上がるのに時間がかかる)。
•つめの伸びが遅く、割れやすい。
•髪の毛が細くなる、普段より抜ける量が多い。
•常に疲れを感じる。
•集中力が続かない。
•無性に甘いものが欲しくなる。
•顔色が悪い。
•月経が止まる。

ただし、これらのサインの原因には様々なものが考えられるため、必ずしもタンパク質不足であるとは限りません。不安を感じたら、正規の栄養士に依頼したり、Diet Balancerなどのソフトを使って食事の内容を分析したりしてみましょう。タンパク質を普段より多く摂り、心身の変化を観察してもよいでしょう。タンパク質を摂り過ぎることはめったにありません。いくつかの食事法で推奨されている、1日のカロリーの 30%をタンパク質で摂取しても、摂り過ぎた分が悪影響を及ぼすことはまずありません。摂り過ぎたタンパク質は、グリコーゲンや脂質に変換されて体内に蓄積されるだけです。毎日水を十分に摂って窒素の排出を促している限り、健康な人がタンパク質を多めに摂取することで健康リスクが高まることを示唆する研究はありません。<了>■
•記事出典:ジョー・フリール著・児島修訳・『サイクリスト・トレーニング・バイブル』(OVERLANDER株式会社)・P346~353の抜粋



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