自分探しの心の旅

　合、「目立たないごく普通の人で、あんなことをするなんて...」
　とか、中には「親切でやさしい人でしたから、今でも信じられま
　せん」などという声さえ聞こえてくることがあります。

　彼を凶行に及ばせた原因を、普段は表に現れないことから"心の
　闇"と表現したりします。


　先日古書店で、ふと目に止まった帯のキャッチフレーズがありま
　した。


顔をモザイクで隠されていれば、私は裸になれるのか？
ここには、あなたのことが書かれているのかもしれない。


　迷った挙句、買ってしまいました。

　平野啓一郎著『 顔のない裸体たち 』



　この小説は、目立たないことが特徴のような30歳の女性が主人公
　です。

　コンプレックスこそあれ、自尊心を持てるようなものなどない少
　女期を過ごし、なりゆきで行った大学で教職免許を取り、中学校
　の社会科教師になります。

　そんな彼女が、問題となった子供たちにキケンな出会い系サイト
　について調べてみようと、自らそれに登録したのがキッカケで事件
　に巻き込まれるという話です。

　読んだ後、「これはありうるな」という感想をもちました。

　性描写がドギツイので、その手のものに耐えられない人にはお勧
　めできません。もちろん18禁かＲ指定に属するのではないか？と
　思われます。


　この小説は、ネットの世界の匿名性から、ごく普通の人が自らの
　闇の部分をさらけ出し、とんでもないことをしてしまう可能性がある
　ことをリアルに描いています。


　ふと、自分の幼い頃のことを思い出しました。

　当時、私の家の周辺は農地が住宅や工場などに変りつつあったの
　で、そこらじゅうに大きな穴があったりして、子供たちにとって
　はかっこうの遊び場でした。

　恐らく小学校へ上がるか上がらないかぐらいの私は、見知らぬお
　兄さんたちと遊んでいたのですが、彼等が穴の中に潜んでいるこ
　とを知りながら、泥の塊を次から次へと投げ込んだのです。

　相手が見えないと、こんな悪さも平気でできるものです。

　何故、こんな昔の他愛ないことを覚えているのかというと、泥の
　爆弾を受けたお兄さんたちの一人が「コラーッ！」と上がってき
　て私を追い掛け回し、恐怖と罪悪感から家へ逃げ帰って大泣きし
　たからです。


　確かに、誰にも分からないと思っていれば、何でもやってしまう
　可能性が、人間にはありますね。スリルは快感ですからね。

　そして、小さなハードルを越えると、更に大きなハードルを越え
　られてしまうのは、不道徳なことでも同じなのでしょう。


　しかし、それほどのパワーが、それこそごく普通の人にもあるこ
　とを、犯罪は、ある意味証明しているのではないでしょうか？


　一昨日の、ドラマ『 夢をかなえるゾウ 』では、まさにこの心の闇が
　テーマでした。

　そんな心の闇が自分にもあることを認めた上で、それをも成功の
　パワーにしてしまえとガネーシャは言っています。


　私について言えば、嫉妬、妬み、怒りなどのネガティブな感情や、
　下世話な欲望も、当たり前のように持ち合わせています。

　でも同様に、ポジティブな感情や、向上心も持っているわけです。


　要は、どちらを選ぶかの問題なのです。



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