2003年12月20日
カテゴリ： カテゴリ未分類
（１）欲望 ー 「汚名」
南アフリカの作家J.M.Coetzee の「汚名」（Disgrace）は良いです。ケープタウンの大学でロマン主義の詩を教えていた教授デビッド ルーリィが、学生に手を出して大学理事会で吊るし上げにあいます。教授は告発内容のすべてを認めて大学を首になり、東ケープに住む娘の農場に向かいます。
彼は農場に着いたころは「犬なんてやつは、飼い主に蹴っ飛ばされたりスリッパをかんだりするような生活にでも慣れてしまう。でも欲望を制御しなければならない生活を強いられるようになれば撃ち殺されたほうがましだ。欲望をもったことで罰されるなんて間違っている。」なんて言ってました。そして徐々に農場の生活のリズムに慣れ始めます。
しかし、ある日、娘の農場に3人の男が押し入り、彼は灯油をかけられ火をつけられ、娘はレイプされます。象徴的なことにペットの犬は強盗に撃ち殺されます。
生きる目的を失った男が、欲望に流され運命に翻弄されてながらも、生きていく様には共感しました。
私は13年前東京でサラリーマンをやっていたとき、英国人の女性に恋におちて会社の寮をでて池袋でアパートをかりて同棲しました。私の働いていた一部上場企業のオフィスは、OLにお茶くみをされるのがいやだから水筒を持ってきて自分で飲んでいたら、「銀の水筒さん」などとあだ名がつくような村社会で、外国人女性と同棲をし始めた新入社員の私に風当たりはかなり強いものがありました。「欲望に流された」新入社員というのはかなり面白いゴシップだったと思います。
閉塞的な家族環境で育ったため、自分がいやで、他人がいやで、日本がいやで、英国みたいな遠い国に永遠に行って帰ってこないののが良いと思いました。「生きる目的」など何もなかったから、その英国人との愛のために、家族や友人、仕事、安定、国などすべてを捨てることに非常に魅力を感じました。
もちろん、2万キロ離れた国に移住したところでハッピーエンドになるわけでもなく、離婚、失職などいろいろな運命に翻弄されました。また、「飼い主に蹴っ飛ばされたりスリッパをかんだりするような生活」からは自営業になった今でもなかなか逃れられません。
いい小説というのは、自分の人生が投影できる余白があるのではないかと思います。「汚名」は最高です。
カサリンMの性生活
フランス美術評論家が自分の70年代の奔放なセックスライフについて書いた「カサリンMの性生活」という本を読んでます。ヤッピーの80年代とエイズが爆発的に増え始めた90年代を経た今では、当時の彼女のやりまくり生活は「こんなのあり？」と思ってしまいます。
厳粛なカトリックの家に生まれたカサリンの小さい時、牧師さんに無邪気に聞いた質問は、「何人まで結婚していいの？」というものでした。最初の章名は「数」と簡素に名づけられていて、高校に入ってからすぐにしたグループセックスにはじまり、セックスをした人の数はどんどん増えていきます。文体は明晰で、センチメンタリズムのかけらもなく、さっぱりしていて後悔のかけらもありません。
田口ランディの「アンテナ」は確か霊感の強い主人公はセックスを通じてひととチャネリングをするシャーマンのようなものになったと思います。カサリンはなんとなくそれに似ていると思いました。
カサリンは一応ボーイフレンドはいたのですが、まったく彼女をしばらない。何でもあけすけに言えるからうそがはいる隙間がない。彼らはまた、セックスができれば誰でもいいという感じで見境がないです。
自由、博愛、平等といったことを本当に実践していたのではないかと想像しました。
南アフリカの作家J.M.Coetzee の「汚名」（Disgrace）は良いです。ケープタウンの大学でロマン主義の詩を教えていた教授デビッド ルーリィが、学生に手を出して大学理事会で吊るし上げにあいます。教授は告発内容のすべてを認めて大学を首になり、東ケープに住む娘の農場に向かいます。
彼は農場に着いたころは「犬なんてやつは、飼い主に蹴っ飛ばされたりスリッパをかんだりするような生活にでも慣れてしまう。でも欲望を制御しなければならない生活を強いられるようになれば撃ち殺されたほうがましだ。欲望をもったことで罰されるなんて間違っている。」なんて言ってました。そして徐々に農場の生活のリズムに慣れ始めます。
しかし、ある日、娘の農場に3人の男が押し入り、彼は灯油をかけられ火をつけられ、娘はレイプされます。象徴的なことにペットの犬は強盗に撃ち殺されます。
生きる目的を失った男が、欲望に流され運命に翻弄されてながらも、生きていく様には共感しました。
私は13年前東京でサラリーマンをやっていたとき、英国人の女性に恋におちて会社の寮をでて池袋でアパートをかりて同棲しました。私の働いていた一部上場企業のオフィスは、OLにお茶くみをされるのがいやだから水筒を持ってきて自分で飲んでいたら、「銀の水筒さん」などとあだ名がつくような村社会で、外国人女性と同棲をし始めた新入社員の私に風当たりはかなり強いものがありました。「欲望に流された」新入社員というのはかなり面白いゴシップだったと思います。
閉塞的な家族環境で育ったため、自分がいやで、他人がいやで、日本がいやで、英国みたいな遠い国に永遠に行って帰ってこないののが良いと思いました。「生きる目的」など何もなかったから、その英国人との愛のために、家族や友人、仕事、安定、国などすべてを捨てることに非常に魅力を感じました。
もちろん、2万キロ離れた国に移住したところでハッピーエンドになるわけでもなく、離婚、失職などいろいろな運命に翻弄されました。また、「飼い主に蹴っ飛ばされたりスリッパをかんだりするような生活」からは自営業になった今でもなかなか逃れられません。
いい小説というのは、自分の人生が投影できる余白があるのではないかと思います。「汚名」は最高です。
カサリンMの性生活
フランス美術評論家が自分の70年代の奔放なセックスライフについて書いた「カサリンMの性生活」という本を読んでます。ヤッピーの80年代とエイズが爆発的に増え始めた90年代を経た今では、当時の彼女のやりまくり生活は「こんなのあり？」と思ってしまいます。
厳粛なカトリックの家に生まれたカサリンの小さい時、牧師さんに無邪気に聞いた質問は、「何人まで結婚していいの？」というものでした。最初の章名は「数」と簡素に名づけられていて、高校に入ってからすぐにしたグループセックスにはじまり、セックスをした人の数はどんどん増えていきます。文体は明晰で、センチメンタリズムのかけらもなく、さっぱりしていて後悔のかけらもありません。
田口ランディの「アンテナ」は確か霊感の強い主人公はセックスを通じてひととチャネリングをするシャーマンのようなものになったと思います。カサリンはなんとなくそれに似ていると思いました。
カサリンは一応ボーイフレンドはいたのですが、まったく彼女をしばらない。何でもあけすけに言えるからうそがはいる隙間がない。彼らはまた、セックスができれば誰でもいいという感じで見境がないです。
自由、博愛、平等といったことを本当に実践していたのではないかと想像しました。
お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう
Re:愛とセックス La Vie Sexuel(12/20)
郡山ハルジ
さん
HP開設するなりいきなり「セックス」ネタで来たか(笑)。<br>日本にも「カサリンM」に負けないセックスの求道者のような女性作家がいます。...いえ、内田春菊ではありません。<br>斉藤綾子の自叙伝『愛より速く』は、今読んでも「やり過ぎだろ、ソレは...(笑)」と思うが、1980年代初頭に出版された当時は読んだ人たちがみんなショックを受けたと思います。<br>日本に帰ったら探してみて下さい、この本。<br>http://www.asahi-net.or.jp/~wf3r-sg/ntsaito.html
(2003年12月20日 05時30分58秒)
【毎日開催】
15記事にいいね！で1ポイント
PR
キーワードサーチ
▼キーワード検索
鰻坂ヒカル
文化的生活にあこがれるロンドン在住1２年の30代男の世迷いごと
コメント新着
© Rakuten Group, Inc.
