[蝶の標本]





標本箱に、繋ぎ止める為の、杭。
現世に、縛り付けられる、悔い。

壁にもたれ、足を投げ出して座る愛しい君に、僕は視線を移す。

『自分の罪の意識に、耐え切れないんだね?』

「救い」を見出した蝶は、濡れた瞳を僕に向ける。

静寂・・・

静かに、時が過ぎる。永遠なんてない。
絶対なんて、信じない。・・・でも。
この時間の存在だけは信じたい。

言葉が出ない。涙しか出ない。

~やっと、もう一度、会えた~

何かを得るコトは、喪失への恐怖をも駆り立ててしまう。
いつか僕は、その恐怖に気が触れるだろう。

だから・・・
せめて、今だけは、
その体温を感じていたい。


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