[Suicide Syndrome:1]




 2004年3月19日の深夜。  
 桜井 依月は、例の大型掲示板に、書き込みをした。


 彼女は、その日、生理中だった。


 初めは、「ナプキンが張り付いて気持ち悪い」。
 その程度の、理由だった。 ただの苛立ち紛れ。
 彼女が、まだ、普通の女子高生だった頃。 

 まだ、運命の歯車が、希望によって停止されていた、2ヶ月前。


 健全に精神科に通い、健全にリスカして、健全にクスリを飲んで。

 眠れなくて、パソコンに張り付いて。

 人を信じられなくて、友達も出来なくて。

 失うのが怖くて、好きな人すら遠ざけて。

 血の匂いが染み付いた部屋で、歪み続けて。

 裏切りに耐え切れず、新たな自己を形成して。



 終わらないと思っていた、日常が、壊れ始める。



 [みんなで、世界を変えてみない?]


 1 名前:三日月 依存   :04/03/19 03:14    ID:GPjY7p9z


 ジサツ症候群。


 あいつらは、僕等を見て、そう切り捨てた。

 『死にたがるなぞ、贅沢以外の何物でも無い。』

 ・・・はっ。 理解されるわけも、無い。
 されたくもない。 貴様らなんぞに。


 首吊り。 リストカット。 オーバードーズ。

 世界は、死の手段で溢れている。
 自己啓発の為のジサツ、なんて、ねぇ?
 そのうち誰かが書いたりするかもよ。

 死のビジョンは、電車の中吊広告にさえ、見え隠れしてるでしょ? 

 テレビに、ゲームに、小説に・・・。
 みんな魅かれてるんだよ。 死が与えてくれる終わりに。


 今年の、春の終わりに、僕達は、一斉にジサツする。

 賛同者は、レスよろしくね。

 この残酷な世界に、さよならを!





この後、お定まりの、2GETやらコピペやらが12レス目まで、書かれた。

そこで、終わるはずだった。 本来ならば。




 13 名前:芹沢 遺識    :04/03/19 04:07    ID:xLs62q1y


 ふぅん。
 ジサツ症候群か。
 面白そうだね。

 メールしてみるから、見てみてよ。





桜井 依月と、芹沢 遺識は、こうして出会った。

けれど、このスレッドを見ていた、何人かの人間は気付いた。

「こいつ、メールアドレス、何処にも乗せてないよな・・・?」




  [Suicide Syndrome:1]  桜井 依月  END 

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